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イノベーションを加速させる法務・知財

この記事は、エクサウィザーズアドベントカレンダー17日目の記事です。

はじめに

こんにちは、エクサウィザーズの法務部部長の二瓶です。
私は2000年に新卒で入社したITベンチャーで法務に配属されて以来一貫してIT事業会社の法務に従事してきました。

エクサウィザーズには2018年8月にジョインしました。

今までの法務の経験を活かし、「急成長する会社のコーポレートを牽引するような仕事をしてみたい」と思っていたところ、春田さん率いるスタートアップの初期段階から関与できるチャンスをいただき、これを逃す手はないと飛び込んでみました。

一人法務担当のときより、「イノベーションを加速させる法務・知財」というミッションのもと、①事業戦略を深く理解し、適切な法務・知財ソリューションを提供することによりビジネスを牽引する、②IPOを見据えたコーポレートガバナンスの確立・内部管理体制を構築し、攻めの経営を支える組織をつくる、という目標を掲げ、これに共感してくれるメンバーを募りました。現在では6名(うち弁護士2名、弁理士2名)の法務・知財部門となっており、専門性・機動性の点で非常に頼もしい組織になっています。

法務部のメンバーたち

上場を迎えるにあたってそんなエクサウィザーズの法務・知財のこれまでとこれからを紹介できればと思います。

エクサウィザーズの法務・知財

資力の乏しいスタートアップにおいて法務・知財分野への投資は後回し、というイメージを持たれている方も多いのではないかと思います。しかし、エクサウィザーズの経営陣は、知的財産が競争力の源泉であり、これを積み上げ、磨き上げ、活用することの重要性を認識し、いち早くそのための投資を行ってきました

設立当初より、当社の事業戦略である「企業のAI活用をプラットフォーム型で支援しながら、他社にも共通する課題を洗い出しサービス化することで、社会課題解決につなげるというモデル」12月2日大植さんnoteよりを実現するための法務・知財体制を構築せよ、というメッセージは一貫して明確でした。

この点は、エクサウィザーズの法務・知財を担当する者として誇らしく、またやりがいを最も感じるポイントでもあります。

事業戦略の根幹をなす契約戦略

事業戦略の実現に向け、まず着手したのが契約です。

契約法務における知的財産の確保としてはやるべきことは単純(=知的財産権をエクサウィザーズに帰属とする)ですが、特にAIプラットフォーム事業の契約相手方である企業には従来型の受託開発案件と同様に「成果物の知的財産権は委託料を支払う発注者に帰属」との考えが根強かったため、知的財産を確保するためには法務が契約書レビュー時に注意するだけではなく、事業部門を巻き込んで交渉の初期段階からエクサウィザーズのビジネスに対する考え方を説明して相手方の理解を得ることが必要でした。

そこで取り組んだのがエクサウィザーズにおける契約基本方針の確立です。
最初は、知的財産権の帰属と競業避止義務に関する2点のみを整理し、当社の事業戦略を阻害しかねない契約条件を受け入れる時は経営会議で判断する、というごくシンプルなルールから運用開始しました。

契約基本方針を確立することで知的財産の確保など事業戦略の実現に資する契約のあり方について全社員の意識を揃えることと、事業戦略を阻害しかねない契約条件の受入れ可否を全社員が参加可能な経営会議で議論することで、契約基本方針の趣旨、重要性、その判断基準を社内ノウハウとして積み上げることを意図したものです。

現在、エクサウィザーズの契約基本方針は、社外取締役の新貝さんによるアドバイスや、実際に契約交渉の場で生じたトラブル事案を踏まえ「エクサウィザーズにおける契約の心得」として、全6つの基本方針が文字化され運用されています。

「対等な立場で契約する」といったごく当たり前と思われるような原則もありますが、当社の事業戦略・知財戦略を支える根幹ともいえる、とても奥深いものだと考えています。

事業戦略を実現するための知財戦略

次に取り組んだのが知財活動の強化です。

現在の知財チームリーダーである弁理士 梶さんの入社を機に、知財活動をスタートさせたのですが、入社間もない梶さんが、エンジニアの浅谷さんとミーティングするや、「天才が裸で歩いている・・・」とつぶやいたのを今でも鮮明に覚えています。

それくらい知財に対して無防備な状態からのスタートでした。

契約できちんと手当てをしても、現場で自社の知財に関する意識が低ければ知財・ノウハウは流出し、権利化はおろか、知らないうちに他社の知財として取り込まれている、ということにもなりかねません。

素晴らしいエンジニアを抱えるエクサウィザーズがその真価を適正に評価されるために知財保護・利活用体制の構築は急務であると改めて認識した時でした。

まさにゼロからスタートでしたが、今では、初期的なビジネス構想の段階から知財チームに相談がされ、アイデアを知財チームに話すだけで特許を取得できるといえるほど仕組み化されています。

浅谷さんも今ではすっかりエクサウィザーズの発明王の一人です。

2021年9月末時点で、累計で特許出願数124件、特許登録件数55件と着実に積み上がっており、知財活動体制の基礎を作って、まずは特許件数を増やすという当初の目標は順調に達成したと言えます。

そこで知財チームはすでに次のステージを描いています。

事業戦略を実現するために(1)300件/年のプロジェクトの中から使えそうな技術を見極めて特許を押さえ、(2)知財部門がハブとなって部門間・グループ間での技術共有を促進することで、取得した特許技術をプロダクト化につなげるという取り組みをしています。

(1)は、具体的には以下のような方法で日常的に技術・発明を探索しています。

  • 毎週20人以上の事業部・エンジニアメンバーからヒアリングを行い発明を発掘

  • 事業会議・プロダクト開発会議から雑談まで、あらゆるチャネルから情報収集

これらの取組みにより、AIプラットフォーム事業で生まれた技術をエクサウィザーズの資産として蓄積し、新しいプロダクトの開発を促進するとともに、新しいプロダクトの特許ポートフォリオの構築を仕組み化し、将来のプロダクトの競争力を強化することを意図しています

成長を押し上げる戦略的提携・組織再編

事業戦略を支える基礎の部分をお話ししましたが、成長を押し上げるための様々なコーポレートアクションを迅速に実行するための知識と瞬発力も法務・知財には求められます。

実際に2021年1月からわずか半年間で、US法人の新設、買収による子会社化、組織再編による子会社設立、JV設立という4つのアクションを実行しました

当社では常に複数の多様なプロダクトが検討され、同時並行的に開発が進んでいるのですが、開発に必要なケイパビリティや販路で必要と考えられる提携先、狙うマーケットの状況や競合等を勘案し、成長に必要とあらば、各プロダクト・プロジェクトに最適なタイミングでアクションを起こすため、同時多発的に案件が組成されることになるのです。

ちなみに、この時はいずれも規模が小さいとはいえ、それぞれスキーム・スケジュールの検討・設計、DD、契約・法定書類の作成から登記までをタイトな時間軸の中でやり切るのはかなりハードでした。しかも、上場準備中ということもあり、グループとしての内部統制体制の基礎作りも急ピッチで進めなければならず、コーポレート一丸となり対応しました。

引き続き戦略的資本業務提携・組織再編・M&Aなどは積極的に検討・実施することが想定されるので、これら経験はしっかりと当社のノウハウとして積み上げ、次に備えたいと思います。

これからの知財法務

以上、法務・知財の業務の一部を紹介させて頂きましたが、改めて振り返ると、ようやく基礎ができたところで、まだまだこれからという感じですね。オペレーションを見直し、磨き上げていかねばなりません。

本日ご紹介した以外にも、リスク管理・コンプライアンスに関する活動や、コーポレート・ガバナンス関連、海外子会社関連などの業務があります。上場後は、より多くのステークホルダーに対して適切に責任を果たしていくことが求められることを踏まえより一層の強化が必要です。

特にプロダクト関連法務の強化は目下の課題です。
当社にとってプロダクト事業は、AIプラットフォーム事業で蓄積された知的財産を横断的に活用して幅広く社会課題解決に役立てるという、事業戦略の発展領域でありミッションの核心部分でもあります。

当社は事業ドメインが広く、今後次々に新しいプロダクトが生まれる見込みのため、同時並行で走る開発の進捗に応じ、関係法令の洗い出しと適法性のチェック、ユーザとの契約の作成のほか、表示・表現の適切性やデータの取扱いといったコンプライアンス的観点からのチェック、ロゴ・マーク・商標・特許・意匠登録の要否とクリアランス・・・・等々、プロダクトの誕生を強力に後押しできるような法務・知財体制が求められます。

プロダクト関連法務は守備範囲の広さと対応の迅速性が求められる難しい領域ですが、同時に毎回新規事業立ち上げのような感覚があり、今後の当社の法務・知財業務の一番の魅力はそこではないかと思っています。

私自身も、新しいプロダクトについて、このプロダクトの価値ってなんだろうと考えながら法令調査をするのが一番わくわくします。

さいごに

当社は、まだまだ生まれたばかりの会社です。そんな会社と一緒に新しい分野へ挑戦し、自分を成長させたい人にとってはとても興味深い会社だと思います。少しでも当社に関心を持っていただけたら幸いです。

明日は、市嶋さんに社長室のベテランメンバーについて書いていただく予定です。

(更新しました)

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