会社の成長とエンジニアのやりがい・成長を両立できる組織を目指して
皆さま初めまして。AI Frontier部(以下、AIF部)部長の佐藤正規(さとうまさのり)と申します。エクサウィザーズでは「佐藤」姓が最も多く、簡単に区別して頂けるように社内では「サトマ」と呼んでもらっています。
私が所属するAIF部は50人弱の機械学習エンジニアやデータサイエンティストを擁しており、エクサウィザーズの機械学習技術を一手に引き受けている組織です。今回は、この組織を運営していくに当たり、私が普段どのようなことを考え、何を重視し、どのような組織を目指して行きたいと思っているか、その現在地についてお話しできればと考えています。どうぞよろしくお願い致します。
自己紹介
初めに、簡単に私の自己紹介をさせてください。
私は2017年7月にエクサインテリジェンス(当時)にジョインしました。前職ではキヤノンに15年ほど在職し、物理や数学、計算機科学を駆使した流体シミュレータの基幹アルゴリズムの研究開発や新事業開発などのR&D系業務に携わってきました。
エクサウィザーズジョイン後は、主に構造化データを用いた機械学習プロジェクトのエンジニアとして、時にはプロジェクトマネージャーとして、多くのプロジェクトに携わってきました。同時に、組織的には構造化データグループのグループリーダーを経て、2022年7月から現職を担当しています。
エクサウィザーズにおける機械学習組織の変遷
全ては混沌から始まった
まず初めに、AIF部の変遷について軽く述べます。私がエクサウィザーズにジョインした2017年7月は、まさに(エンジニアリング組織としての)東京オフィスが発足したタイミングであり、その時の正社員エンジニアは私を含めてたったの2名でした。数か月後にはエンジニアも10人程度には増えましたが、超のつく大企業である私の前職と比べると、せいぜい「課」くらいの規模です。このギャップは相当なものです。
仕事の進め方も、まさに手探り状態です。参考にできる前例もほとんどありません。時にはみんなで話し合い、時には間違いながら、とにかくどういう形でもいいから進んでいく。できることは何でもやってみる。そういう状態です。よく、このようなフェーズを「全員野球」などと表現したりしますが、そんな格好の良いものではありません。振り返れば、その状態はただの「混沌」でした。
もちろん、混沌には混沌の利点がありますので、それをいくつか挙げます。まず、前職とのあまりの落差によって精神がリセットされます(笑)。次に、様々な情報が整理されずに滝のように流れてくるので、単位時間当たりの経験値も増えます。そして、何か仕事を進めるときに人任せにせず、オーナーシップを持つようになります。というか、持たざるを得なくなります。何より、正解がない道を進んでいるので、現状をより良くするためにどうすべきか、考えるようになります。というか、考えざるを得なくなります。
一方、デメリットももちろんあります。まず、試行錯誤しながら進んでいるため、洗練された組織に比べるとどうしても作業効率は落ちます。成果物の品質が安定しにくいのも大きな問題です。そして私が考える最も大きな問題は、メンバーに継続的に高い負荷がかかることです。もちろん、このような高負荷・混沌状態を楽しめる人間が存在するのも事実ですが、おそらく多数派ではないでしょう。つまり、長期的な観点から組織の成長というものを考える場合、このような状態はそもそも持続可能性がないということです。
混沌から秩序へ
このような混沌状態がしばらく続くわけですが、エンジニア組織にも少しずつ変化の兆しが見えてきます。機械学習組織という観点からの大きな変化は、前部長の遠藤さんが手がけた「ギルド制の導入」でしょう。なお、この記事ではギルド制の詳細には言及しませんので、興味のある方はこちらの記事を是非ご覧ください。
この「ギルド制の導入」により、エクサウィザーズの機械学習組織は大きく構造化ギルド・画像ギルド・NLPギルド・数理最適化ギルドの4ギルドから成るという構造になりました。そしてこの4ギルドを統括する組織として、今のAIF部が始まることとなります。また、私自身も構造化ギルドのグループリーダーとして、組織の運営に携わっていくことになります。
今から振り返ると、このギルド制のメリットは大きかったと考えています。まず、取り扱う技術の観点で関連の強いエンジニアが同じギルドに集まることで、エンジニア同士の支援が容易になりました。次に、ギルド単位で実施したプロジェクトから知見を集めて蓄積&汎化し、次のプロジェクトに活かすということがやり易くなりました。このような活動により、成果物の品質も以前に比べて格段に上がりました。
ちなみに、グループリーダー時代に私が最も力を入れたのも、この「成果物の品質」でした。その活動成果の一つが、プロジェクト運営のコツをまとめた「事例集」です。これは、過去我々がプロジェクト推進するに当たり経験した数々の躓きや反省、協業企業から受けたポジティブ・ネガティブ両方のフィードバックなどのパターンを整理し、その原因と対策をまとめたものです。
この「事例集」は、自分で言うのも何ですが、かなり役に立っていると思っています。エンジニアのみならずAIコンサルタントにも適用できるレベルまで整理しているので、エクサウィザーズに新しくジョインしたAIコンサルタントへの教育資料としても活用しています。
ちょっと話が逸れます。我々は、「AIを用いた社会課題解決の実現」を目指して、AIの社会実装に日々取り組んでいるわけですが、実はこの「AIの社会実装」というのはそれほど簡単に実現できるものではありません。顧客の真の要望に対して本当に意味のある価値を継続して提供し続けるためには、数多くの壁を乗り越える必要があります。
ですが、この「壁の乗り越え方」について社会的に広く認知された方法論が存在している訳ではありません。つまり、「正解」というものがないのです。このようなタイプの課題に取り組むためには、自ら考え、自ら手を動かして、泥臭くもがきながら少しづつ先に進んで行くしかないのです。そのような、本当の意味で「現実に立脚した」経験を積み重ねることが、将来の大きな価値に繋がっていくはずだと考えています。先ほど紹介した「事例集」は、そのような考えに基づいて作られています。
このような形でギルド制に立脚して仕事を進めていくことで、組織的には混沌から秩序が生まれてきました。私自身も、グループリーダー時代にずっと頭に思い描いていたのは「混沌から秩序へ」という言葉でした。全ての施策はそこに根差していたと言っても過言ではありません。エクサウィザーズの機械学習組織は、1つの大きな変化を遂げました。
新たな課題
この世の中には、完璧な組織というものは存在しません。先ほどはギルド制のメリットについて説明を行いましたが、もちろんギルド制にも課題は存在しています。
大きな課題の1つとして、「人材がギルドに固定化されやすい」というものがあります。ギルドは技術軸で分けられているので、例えば時期によってギルドごとに忙しさが大きく異なる場合、あるギルドから別のギルドへ応援人材を送り込もうとしても、エンジニアの技術的スキルの問題でスムーズに応援を出せない、みたいなことが起こるわけです。我々はそれほど規模が大きくない企業ですから、人的リソースをより有効に活用して利益を出していく必要があります。その「有効活用」という点で、課題を突きつけられた状態でした。
組織のさらなる進化のために
ミッションと行動指針の策定
このような状態で、私はAIF部部長のバトンを遠藤さんから手渡されました。
この時にまず考えたのが、AIF部に所属するエンジニア達をまとめ上げるために、改めて我々の立ち位置を明確化する必要性でした。つまり、「AIF部がエクサウィザーズに存在する意味」について、しっかり理解してもらうということです。同時に、「AIF部としてエンジニアにどのような働き方をして欲しいか、どのような行動をして欲しいか」という観点で、明確なメッセージを伝える必要があると考えました。
なぜならば、このような「働く上で根底となる部分≒アイデンティティ」をしっかりと固めることが、組織の未来のパフォーマンスに大きく効いてくるはずだと感じていたからです。我々は何者なのか。何のためにエクサウィザーズにいるのか。会社から何を期待されているのか。どのような存在でありたいのか・・・。そこが安定することで、エンジニアも安心して普段の業務に邁進できるものと考えています。
「我々の立ち位置」については「AIF部ミッション」として、「働き方」については「AIF部行動指針」として言語化し、私がエンジニア達に直接説明を行いました。
ただ、このような類の話には、エンジニア達の納得感が極めて重要です。納得感がない状態でトップダウン的に進めても、これらは単なるお題目や精神論で終わってしまい、その存在意義を失う恐れがあります。AIF部の主役はあくまで現場のエンジニア達であって、私ではありません。一旦は言語化したミッションと行動指針ですが、これからも丁寧にエンジニア達と意思疎通し、必要があれば柔軟に修正・改善を続けていくつもりです。
エクサウィザーズらしい組織構造とは
ギルド制の課題への対応も重要です。ただ、この課題の解決はそれほど簡単ではないと考えています。人材の固定化という問題は世の中でも良くある課題ですし、固定化の影響を軽減できると言われているいわゆる「マトリクス型組織」という形も、組織構造や指揮系統が複雑化するというデメリットがあります。さらに、我々には我々なりの個別事情もあります。それらをよく吟味せずに借り物の「形」だけを組織に導入しても、成果を上げるどころか現場を混乱させるだけです。
より良い組織構造を考える上では、「エクサウィザーズらしさ」についてあらためて考えることも重要です。別の見方をすると「文化」を作っていく活動とも言えます。文化を作るのは時間がかかりますし、日々の行動の積み重ねが重要です。その「積み重ね」の方向性を示す材料として、先ほどのミッションや行動指針が役立ってくれれば、と考えています。
私が実現したい組織の形というのは、おぼろげな形では存在しています。それは、「様々なタイプ・様々なスキルセットを持つエンジニアを許容できる組織、個人の能力は限られていても数人程度のチームを作ることでお互いの弱みを補い合ってMVP(Minimum Viable Product)をクイックに出していける組織、様々な強みを持つエンジニア同士が刺激し合って自らのレベルがどんどん高まって行く組織」です。具体的な形がまだ見えているわけではありませんが、「エクサウィザーズらしさ」を大事にしつつ、我々自身の手で少しずつ具体化して行きたいと思っています。
大事にしたいこと
この記事も終わりに近づいてきました。エクサウィザーズの機械学習組織の進化のため、私がやるべきことはまだまだあります。登山で例えるならば、せいぜい1合目あたりといったところでしょうか。
最後に、組織運営という観点で私が大事にしたいことをお話しします。
まず1つ目に、若手エンジニアがのびのびと活躍できる場にしたいと思っています。ご存じの通り機械学習領域の技術進化は非常に早く、キャッチアップしていくのも簡単ではありません。また、未来が見通せない不確実な世の中を乗り切っていくためには、固定観念に囚われない柔軟な発想が必要です。
こういう時こそ、若手のエネルギーを大いに活用すべきだと考えます。もちろん、年長者にも重要な役割があります。それは、若手の経験不足を自らの経験でサポートすることです。このように、若手と年長者がそれぞれの強みを活かして一体化できた時、組織として大きな力を発揮できるものと考えています。
2つ目に、試行錯誤を大事にできる場にしたいと思っています。キーワードは先ほども少し述べた「不確実性」です。この不確実性を下げるためには「情報」が必要です。そして、この「情報」は、実際に行動した結果得られるものです。頭の中で考えているだけでは、本当の意味での「情報」は得られません。つまり、なるべく短い時間で試行錯誤とその結果分析を繰り返すことが、不確実な世の中に対する有力な対処法だと考えます。
実際にAIF部では、若手エンジニアが率先して活動を始めるという事例がいくつか出て来ています。具体的には、社内ドキュメントの整備だったり、営業支援のための技術資料作成だったり、新メンバー育成のためのプラン検討だったりします。もちろん、若手だけでなく中堅エンジニアからの提案もいろいろあります。これらは、特に誰かが指示して始まったことではなく、彼らが自分の頭で考え、今の我々に必要だと考えて始めたことです。
このように、エンジニア達が自主的に試行錯誤して日々の業務にチャレンジしている姿を見ると、私は非常に頼もしく、かつ嬉しく思います。同時に、彼らの能力や頑張りをさらに活かすために、私自身もより成長し、今の組織を少しでもより良い方向に持って行かなければ、と気が引き締まる思いがします。
私は以前の記事で、「エクサウィザーズは自分にとっての実験場」と言いました。その気持ちは今でも全く変わっていません。エンジニア達の能力をいかにして引き出し、会社の成長に繋げるか。他の会社とは違う、エクサウィザーズの良さを活かしたエンジニア組織とはどのような姿なのか。その「正解のない問題」に対する自分なりの答えを得るために、これからも自分の頭で考え続け、試行錯誤を繰り返し、少しずつ確実に先に進んで行きたいと思っています。
エクサウィザーズには、多種多様なバックグラウンドを持ったエンジニアが集まっています。彼らはみな優秀で、「社会課題解決」という大きな目標に向かい、自分の持っている技術を活かしながら日々の業務に取り組んでいます。自分の力で世の中の課題を解決したい方、自分をもっとレベルアップさせたい方、この記事で少しでも我々に興味を抱いた方がいれば、まずは気軽にお話ししてみませんか?
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