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〝古くて新しい技術〟で社会課題の解決につなげる 数理最適化ギルドの仕事とは

エクサウィザーズの2022年アドベントカレンダーの22日目の記事です。

数理最適化ギルドのグループリーダーをしております今中健です。数理最適化ギルドでは、古くて新しい数理最適化の技術を用いて日々、顧客課題解決に注力しています。

〝古くて新しい〟数理最適化

数理最適化の技術はオペレーションズリサーチの分野で歴史は古く、第二次世界大戦中にイギリスが軍事研究として使ったのが始まりとされています。以降、数学的な手法により最適化を実現する数理計画法が開発されてきました。現在においても数理最適化は現実の社会課題に対して有効な使い道が多数存在します。OR学会(日本オペレーションズ・リサーチ学会)は、暮らしに溶け込むORの例をポスターで紹介しています。

現実の数理最適化の問題は多数の込み入った要件を持つことが多く、スクラッチから実装するとコードが膨大かつ複雑になりがちであり、現実的な計算時間で解を出力することそのものの難易度が高いこともあります。また計算に必要なデータが整備されている必要があります。そのため対応可能なプログラマの希少性やデータの未整備から実用化のハードルが高く、活用しきれていない企業は多く存在します。

ですが近年、計算機の性能向上に加え汎用ソルバーの発展により、以前に比べ手軽に数理最適化問題を解決できるケースが増えてきています。また、AI波及の追い風を受けてデータの整備が進み、機械学習の内部で使用されているという点でも注目を浴びています。数理最適化は古典的な技術ではありますが、今後さらなる応用化の伸びが期待されている技術でもあります。

ORを探せ!(出典:日本オペレーションズ・リサーチ学会)

数理最適化と機械学習の違い

よく「数理最適化はAIなの?」といった質問を受けますが、AIの代表である「機械学習であるか」といった意味では「違う」というのが答えになります。数理最適化は「因果関係や規則(ルール)がわかっていながら、解決策が導き出せない現実の問題に対し、最適解(もしくは近似解)を導き出す問題解決の手法」です。ルールがわからないためデータを用いてルールを導き出す機械学習とは明確に違いがあります。

ルールがわかっているのに解決策が出せないのは、扱う問題が計算量という点で算出が困難であったり、ルールを記述しきれないほど複雑であったりする場合です。通常の解き方では解を算出することが困難な問題に対して、数理計画法やアルゴリズムを用いて最適解、もしくは許容できる近似解を求めることに最適化技術を用いる目的があります。

数理最適化の活用イメージ

数理最適化と機械学習の相互補完関係

機械学習ではデータから経営に対して重要な示唆や知見が得られることは少なくありません。そこで得られた知見を計画に組み込み、最適なオペレーションを実現する上で数理最適化技術は力を発揮します。

数理最適化と機械学習と組み合わせて使う例を紹介いたします。

例えば「在庫管理」。需要予測をもとに毎日の出庫量を維持するとともに、段取り替えの費用を考慮しながら在庫量をコントロールするといったことが可能になります。ここでは「需要予測」に「機械学習」、「段取り替えの費用を考慮しながら、在庫量コントロール」に「数理最適化」が使用されます。

また、「小売店の棚割り」に関しても機械学習と数理最適化の組合せが応用できます。エクサウィザーズの事例ですが、「代替可能性分析」と「品揃えパターン生成」という二つの機能を実現しました。

「代替可能性分析」とは、対象商品の過去の購買傾向をAIが解析し、類似した商品を特定するとともに、ある商品に対して別の商品を購入する可能性を算出します。それによって、カットしても売上が減少しづらい商品構成を実現し、売れ行きが高い商品を増やすなど、売場効率を高める施策が実施できるようになります。

「品揃えパターン生成」とは、数理最適化技術を用いて、対象商品リストや売上情報などを元に、売上効率を上げる商品の組み合わせを自動で算出します。ドラッグストアをはじめ、小売店で取り扱う多種多様な商品カテゴリーに対応しており、小売業の実際の業務に即した考え方を反映させながら、売場生産性を向上させることができるようになります。

「品揃えパターン生成」で昇格、降格商品を決める際に、「代替可能性分析」を行うことで、売り上げを維持します。

【品揃え最適化AIシステム概要】

・機能1:品揃えパターン生成
数理最適化技術を用いて、対象商品リストや売上情報などを元に、売上効率を上げる商品の組み合わせを自動で算出します。ドラッグストアをはじめ、小売店で取り扱う多種多様な商品カテゴリーに対応しており、小売業の実際の業務に即した考え方を反映させながら、売場生産性を向上させることができるようになります。

・機能2:代替可能性分析
対象商品の過去の購買傾向をAIが解析し、類似した商品を特定するとともに、ある商品に対して別の商品を購入する可能性を算出します。それによって、カットしても売上が減少しづらい商品構成を実現し、売れ行きが高い商品を増やすなど、売場効率を高める施策が実施できるようになります。

数理最適化と機械学習を組み合わせられる人材とスキル

機械学習と数理最適化は相互補完関係にあり、機械学習の結果をインプットとして、数理最適化を用いて適切な計画を作る例は他にも多数考えられます。一方で両技術を組み合わせて利活用する仕組みの構築には、機械学習と数理最適化両方の知見とスキルが必要です。エクサウィザーズでは構造化データギルドと数理最適化ギルドといったチームがあり、協力し合いながら1つのプロジェクトに取り組みます。

また、数理最適化ギルドのメンバーが機械学習のスキルを伸ばしたい場合、構造化データギルドの案件にアサインする、クロスアサインという制度があります。構造化データギルドからメンターを用意してもらい、OJTの形で機械学習についてプロジェクトを実施しながら学ぶことができます。最適化ギルドでは頻繁にクロスアサインを行っており、構造化データに詳しい最適化エンジニアが生まれています。両技術に精通した人材が増えることで、構造化データと数理最適化両方を用いた「構造化×最適化」といったマルチモーダルなソリューションの提案や実施が今後より増えていくことが想定されます。

数理最適化の今後

近年はデータの整備も進み、数理最適化の業務への適応が可能な企業が増えている傾向にあります。エクサウィザーズでは数理モデルをより身近に活用できる世界を目指しています。

複雑な計画作成を日々行い、自動化を望む事業の運用者にとって、数理最適化による業務の自動化は魅力的に映ると思います。しかし、具体的にどのようなインプットが必要でどのようなアウトプットが出てくるのか、資料や口頭での説明だけでは実感がわかないケースがあります。そうなると、初期投資を決断するには難しい実情が起こり得ます。

そこで最適化ギルドでは最適化問題に対する複数のデモを用意し、顧客の課題解決に近いデモを選択し、シンプルなインプットからアウトプット作成までをWEBアプリで実現できる仕組みを構築しました。これをミニマムアプリと呼んでいます。ミニマムアプリのラインナップは、引き合いとして多くあった数理モデルや、実際に実際にプロジェクトで作成し、横展開が期待できるアルゴリズムなど、有効性の観点から選択されたものになります。

多数の数理最適化モデルをデモとして保持しておくことで、ショールームでユーザーが自身の部屋のインテリアを想像するように、数理計画モデルの使用イメージが持てます。数理最適化モデルを作る時の要件定義において、熟練者の頭の中の作業イメージを正確に伝える作業は困難な作業です。ミニマムアプリでデモを用意し、たたき台にして議論することにより、「加えてこういう制約条件が必要だ」「こういう目的関数を追加したい」といった風に、要望をクリアするツールとしても活用できるのではないかと考えています。

ミニマムアプリ活用イメージ

最後に

数理最適化ギルドでは、様々な顧客課題に対して、数理計画法やアルゴリズムを用いて解決します。また、チーム内のR&D活動にも力を入れており、「強化学習×最適化」、「ブラックボックス最適化」、「最適化技術勉強会」など複数の取り組みを行っています。このような活動にご興味があり、志をともにできるメンバーを募集しています。是非、一緒に働きましょう!

まずはカジュアル面談を申し込みたいという方はこちらから。

23日目は技術統括部の佐藤正規さんです!

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