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イベントレポート「ヘルステック企業でのテックリードの役割とキャリアパス ~事業課題解決のためのエンジニアリングとは~」(前編)

2024年9月18日(水)、株式会社エクサウィザーズと株式会社iCAREの共催で、テックリードをテーマにした、イベントを開催。今後のキャリアの選択肢として、テックリードをお考えの方を対象に、ヘルステック領域ならではのエンジニアのチャレンジについて、それぞれの講演とディスカッション形式で話してもらいました。

登壇者紹介

株式会社iCARE 
CTO/Development部 部長
工藤 大弥 氏
日本電子専門学校を卒業後、受託開発事業を中心としたベンチャー企業にてWebエンジニアの道を歩み始める。0→1の新規Webサービス開発を得意とし、シード期のスタートアップのリードエンジニアや、CTOを経験。過労により休職をした経験から、自身や組織の健康づくりに対して関心が高く、2020年11月より業務委託としてiCAREにジョイン。2022年1月より正社員となり、2023年8月よりCTOに就任。

株式会社エクサウィザーズ
CareWiz事業部 CareWiz部
エンジニアリンググループ グループリーダー
佐藤 知哉 氏

2017年3月電気通信大学大学院、情報理工学研究科情報・通信工学専攻修了。2017年4月エキサイト株式会社入社。2020年5月株式会社エクサウィザーズにソフトウェアエンジニアとして入社し、企業へのAI導入案件や、AIプロダクトの開発に従事。現在はCareWiz トルトのテクニカルリード及びCareWiz プロダクト全体の技術統括を担当。

モデレーター
株式会社エクサウィザーズ 採用グループ リクルーター
高松 藍 氏

新卒でインターネット広告代理店に営業担当として入社し、その後社内制度を利用して採用部に異動した後、2019年にメディアを運営する事業会社へ採用担当として転職。2022年9月にエクサウィザーズにジョインし、採用をメインに採用広報などを担当。


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介護SaaS×AI スタートアップで活躍するテックリードの話

高松:本日は「ヘルステック企業でのテックリードの役割とキャリアパス」というテーマでエクサウィザーズの佐藤と、iCAREの工藤様にお話しいただきます。まずは、佐藤さんからお願いいたします。
佐藤:株式会社エクサウィザーズ CareWiz事業部エンジニアリンググループ グループリーダーの佐藤と申します。前職はエキサイト株式会社で、toC系の事業の開発をしており、機械学習やブロックチェーンを使ったプロトタイプを多く作っていました。そこからtoB領域やヘルスケア領域に興味を持ち、エクサウィザーズに入社いたしました。

「AIで社会課題を解決する」というミッションを持つ、エクサウィザーズ


佐藤:当社は「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」というミッションのもと、様々な事業展開をしている会社です。エクサウィザーズグループとして多くのグループ会社があり、様々な領域でAIを使った社会課題解決を行っています。

事業軸としては、「AIプラットフォーム事業」というAIのコンサルティングと、今回お話しする「AIプロダクト事業」を展開し、2つの事業シナジーを活かしております。

私たちが担当している「CareWiz」についてご説明します。エクサウィザーズ全体としては様々な業界に対して多くのプロダクト提供やAI導入を支援していますが、CareWizはその中でも介護業界に特化したAIサービスを展開している事業部です。

介護業界の様々な課題をAIで解決するために、多くのプロダクトを展開しており、具体的には、「売上向上やコスト削減のための事務効率化」「災害対策」「求職者向けのサービス」など、幅広い領域でサービスを提供しています。

本日は、この多くのマルチプロダクトを展開している「CareWizの開発」において、 介護業界を牽引するテックリードポジションに関する話、そしてエクサウィザーズでテックリードやエンジニアとしてどんなキャリアの選択肢があるのかという話の2つをお話させていただきたいと思っております。

介護業界×AI SaaSを牽引するテックリードとは

佐藤:まずは、「業界介護×AIサービスに挑むテックリード」についてお話します。そもそも介護業界のサービス開発についてお話しさせてください。
私が、この業界の開発に携わってから感じた3つの特徴についてお話します。1つ目は業界の規模が大きいこと、2つ目は専門性が高いこと、3つ目はステークホルダーが多いことです。

まず、業界規模が大きいという点です。介護の領域には様々なものがありますが、例えば「デイサービス施設」や「老人ホーム施設」など、全ての施設を含めると、日本国内で25万もの施設があり、非常に大きな業界だということが分かります。

また、昨今、要介護認定者が増加傾向にあることや超高齢社会も進んでいるため、この分野のニーズもより大きくなっていくと予想されます。

次に、「この領域は専門性が高い」という点です。事業を展開していく上で、様々な理解が必要です。例えば、介護施設で実際に何をしているのかということや、介護の仕組みに関する社会保障制度の理解、高齢者の方がどのように介護を受けているのかなど、専門領域の話が多く、私自身も意外と知らないことが多かったです。

特に現場では、アナログな部分が多いという課題もあります。パソコンが事業所に1台しかない、職員全員がスマートフォンを持っていない、FAXでのコミュニケーション、手書きの引き継ぎノートなど、デジタル化があまり進んでいないこのような現場に対し、「我々がどのようにプロダクトを提供するか」という点において、現場のことをしっかり理解する必要があります。

また最後に、ステークホルダーが多いという点も特徴的です。高齢者の方がケアを受けているため、医療、介護、予防など様々な施設や関係者やご家族の方などがステークホルダーとしていらっしゃいます。それぞれの立場によって求められるものも違うため、それらを適宜我々が作っていく必要があります。

このような業界で、今回のイベントテーマでもあるテックリードとしては、「ステークホルダーが多数いること」「個人情報を大切にすること」「セキュリティの問題」など、開発でも複雑な問題を乗り越えていく必要があります。一方、事業の規模や戦略に関わるため、達成感や社会への影響力は非常に大きいです。

私も、前職までは介護領域とは関係のない仕事をしていましたが、エクサウィザーズでは、開発チームに介護業界出身のドメインエキスパートがおり、また提携パートナーの施設を見学しヒアリングをする機会が多くあるため、実際に業界に入り込んで情報に触れることで、キャッチアップすることができました。

テックリードには、「周りのビジネスメンバーを巻き込みながらの技術力」が必要なことはもちろん、要配慮個人情報を扱うための強固なセキュリティ対策や複雑なドメイン設計などの能力も必要です。

さらに、業界の専門性やビジネスコミュニケーション能力も介護領域のSaaSでは求められます。エクサウィザーズでは既にそういったエンジニアも多くいるため、一緒にテックリードとして業界を牽引できる方がいらっしゃると、とても嬉しいです。

エクサウィザーズで歩む、エンジニアのキャリア

佐藤:エクサウィザーズでのエンジニアのキャリアパスについてお話します。 エクサウィザーズのエンジニアは、新卒採用や中途採用でジュニアエンジニアや、シニアエンジニアとして入社し、その後、エンジニアリングマネージャーやスペシャリストとしてキャリアを歩む方が多いです。

これらのキャリアを伸ばしていく中で、自分の開発を推進したり、チーム全体の開発を進めたり、さらには戦略を考えていく、といったように徐々にハックしていく影響範囲が広範囲に変化していきます。

たとえば、マネージャーは「組織をハックしていく」というイメージです。大事なのは、組織のミッションをどのように達成するかを、常に考えることだと思っています。

一方、スペシャリストは技術をハックしていくイメージです。 たとえば、サービスの中長期の成長を見据えて「共通基盤にするのか」「マイクロサービス化するのか」など、技術面からミッションを達成する方法を考えます。

「マネージャーとスペシャリスト、どちらに進むべきか?」という話もありますが、私の個人的な考えでは、どちらかに進むべきということよりも、その時の自分が置かれている状況や望んでいることによって、「どちらのスキルを発揮するのか」を決めれば良いのだと思っています。

そして 大切な観点は、会社の使命や自分に与えられた使命を達成するために、どのようなスキルを発揮するのかということです。

フロントエンドやバックエンド、インフラなどの専門性も同じで、ミッション達成のための「魔法」の一つだと考えています。エクサウィザーズという社名には「魔法使いの集まり」という意味も含まれていますが、我々エンジニアも「いろんな魔法を使える魔法使いになること」を目指しています。

ヘルステックのエンジニアに興味があれば、是非、エクサウィザーズのことを知っていただければと思います。

高松:ありがとうございます!介護の領域は人員も非常に少なく、あまりSaaSやプロダクトが入っていない現状なので、今、本当にいろんなDXができる業界という意味では、チャンスでもありますね。

事業会社のCTOが考えるテックリードへの期待


高松:それでは、次は工藤さんお願いいたします。

工藤:よろしくお願いいたします。

まずは、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は、ずっとWebエンジニアとしてキャリアを積んできました。主に0→1フェーズのスタートアップや、新規プロダクト開発の経験が多く、技術的にはフロントエンド、サーバーサイド、インフラと幅広くやってきました。

2022年にiCAREに正社員として入社し、昨年8月からCTOとして開発組織全体のマネジメントを務めています。

先ほど佐藤さんの発表を聞き、CareWizが向き合っている介護業界の課題について詳しく知り、心から応援したいなと思いました。

実は、管理職として懸命に働いていた父が、過労で40代半ばで倒れてしまい、幸い一命は取り留めたものの重い障害が残ってしまいました。これまで様々な介護サービス・施設に父もお世話になっており、その中で垣間見える業界の課題感を感じていたので、すごく共感できる内容でした。

そんな経験を持つ私は「働くことで体調を崩してしまうという社会課題を何とかできないか」と思っていたときにiCAREに出会い、自分のエンジニアリングスキルを社会課題解決に活かせたらと思って入社しました。

「働くひとの健康を世界中につくる」iCAREのミッション

まずは、弊社の事業について簡単に紹介させていただきます。我々は「働くひとの健康を世界中につくる」というパーパスを掲げています。実は、働くことで体調を崩したり怪我をするリスクというのは、意外と高いのです。WHO(世界保健機関)による調査で、労働関連死は世界中の死亡原因の第4位に相当するというデータもあります。

我々のアプローチとして、「カンパニーケア」という独自の概念を提唱しています。

一般的な健康づくりでは、いわゆる「セルフケア」と呼ばれる食事の見直しや運動習慣などの取り組みが重視されることが多いと思います。セルフケアも大切なことですが、我々が重視するアプローチは、「働く環境や仕組みをより良くすること」に焦点を当て、従業員が安全に、安心して働ける環境や仕組みづくりを推進しています。

サービスとしては二つの大きな軸があります。一つは、弊社の代表が産業医であり、社内に保健師のスタッフも在籍していることを活かし、様々な企業の健康課題の解決に対してコンサルティングを行っています。もう一つは、我々エンジニアが開発しているクラウドサービスで、健康情報の管理や分析・活用を提供しています。

我々が日々開発しているのは「Carely健康管理クラウド」という従業員の健康情報を管理できるプラットフォームです。例えば健康診断の管理でいうと、従業員からすると単に健康診断を受けるだけに見える世界が、実は裏側では多くの業務が発生しています。

それらは受診計画の立案、受診勧奨、結果に基づく就業判定、面談の実施など、多岐にわたります。我々はその業務を効率化したり、蓄積されたデータを活用してより「予防的なアプローチ」ができるようなサービスを提供しています。

サービスは年々成長を続けており、今年の3月で8周年を迎え、これまでに延べ600社以上の企業様にご活用いただいています。技術としては、Ruby on RailsのモノリシックなアプリケーションでフロントエンドにVue.jsを使用しています。

iCAREが考える、テックリードの役割

では本題に入らせていただきます。私もiCAREのCTOになって1年ほど経ちました。。現在は30名ほどの開発組織のマネジメントをしていますが、過去には立ち上げフェーズのスタートアップでCTOを務めていたこともあります。この経験・視点から、「私がどういうテックリードと働きたいか」というお話をさせていただきます。

まず、テックリードの役割ですが、事業や組織のフェーズ、状態によって変わっていくものだと認識しています。今回は「技術課題に向き合いながら、プロダクトの成長を最大化させることに責任を担う役割」として定義させていただきます。なお、iCAREでもまだテックリードという役職は設計中の段階です。

エンジニアリングマネジメントの4領域(プロジェクトマネジメント、プロダクトマネジメント、ピープルマネジメント、テクノロジーマネジメント)の中で、テックリードはテクノロジーマネジメントに最も比重を置く役割だと考えています。他の3領域にどのようにコミットするかは各社によって異なると思います。

テックリードに必要な「攻め」と「守り」のバランス

テックリードには「攻め」の部分と「守り」の部分があります。攻めの部分では、プロダクトの成長を目指してアウトカムを高めていきます。例えば、サービスのパフォーマンス改善を通してプロダクトの価値を向上させたり、CI/CDなどの技術的な改善で開発組織の生産性を高めたりします。

一方、守りの部分では、プロダクトの成長を妨げるリスクを回避または最小化します。例えば、サービスのスケールに合わせてリアーキテクトやリファクタリングの戦略を考えたり、セキュリティ対策で脅威に備えたりします。特に事業会社、特にBtoBサービスでは、プロダクトの成長とともにこの「守りの部分」の重要度が高まっていきます。

iCAREでは、要配慮個人情報である健康診断の情報を扱っているため、セキュリティには特に注意を払っています。サービスが大きくなればなるほど、何か問題が起きた時のリスクも大きくなるため、しっかりと取り組むことが重要です。

プロダクトや組織の成長に合わせて、守りの重要度が上がっていきますが、攻めの重要度が下がるわけではありません。この攻めと守りのバランスを、その時々の状況に応じてどう考えるかが非常に難しく、覚悟を持って取り組む必要があります。何らかのトレードオフは必ず生じてきます。そうした意思決定に共に向き合ってくれるテックリードと一緒に働きたいと思っており、現在募集中です。

後ほどのパネルディスカッションで開発組織の話も詳しくお話しできればと思います。気軽にカジュアル面談等をご検討いただければ幸いです。

高松:ありがとうございます。ご自身のペインポイントが仕事に結びついているのは素晴らしいですね。後編では、登壇者お二人のパネルディスカッションをさせて頂きます。


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