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介護職は「生きるとは何か」を考える究極の仕事。現場に向き合い続けた介護福祉士が、エクサウィザーズを選んだ理由

「介護職ほど、人生の深みが増す仕事はありません。だから私は、介護職の価値を高めたいんです」

エクサウィザーズで活躍する“ウィザーズたち”を紹介するストーリー。今回は、AI×音声入力で介護スタッフの業務をサポートする介護記録AIアプリ「CareWiz 話すと記録」を担当するCareプロダクトグループの秋葉美央さんです。

ファーストキャリアから一貫して「福祉」と向き合い続けてきた秋葉さん。そんな彼女がなぜAIスタートアップにたどり着いたのか。その背景を伺いました。

■プロフィール

秋葉 美央(あきば・みお)

東洋英和女学院大学 人間科学部人間福祉学科専攻修了。特別養護老人ホームでの介護経験を経て、パナソニックエイジフリー(株)では、相談員、管理者、エリア担当課長を経て、品質管理部門に所属。多メニュー・複数事業所展開における品質の平準化に向けた適正な運用、拠点マネジメントから介護技術、レクアクに至る体系化された人財育成システムの立上を経験。

2019年、株式会社エクサウィザーズへチームで参画。CareTech部門にて、ユマニチュード研修事業、在宅介護者支援プロジェクト、介護現場革新に関わるケアイノベーションコンサルやプロダクトR&Dに従事。

「毎日、最高の介護ができているか?」 福祉施設で刻んだ覚悟

——秋葉さんのキャリアには一貫して「福祉」がありますよね。福祉に興味を持つようになったきっかけについて教えてください。

母親が看護師をしていたんです。なので、私も大人になったら同じように人と関わる仕事がしたいと思いました。大学では人間福祉学部を専攻し、社会福祉士について学んでいました。

社会福祉士は、福祉事務所や福祉施設にいる相談員です。ご利用者が施設で過ごすための計画書を一緒につくったり、そのご家族にヒアリングしたりしながら、どんな介護をすべきかを探ります。

——最初の就職先に福祉施設の方を選んだのはなぜですか?

福祉事務所は社会福祉サービスの相談機関であり、ご利用者に直接触れる機会がないんですね。最初は、福祉の世界でも超高齢化が進む介護の可能性を知った方がいいのではないかと思い、福祉施設の中の特別養護老人ホームで介護職として働くことにしました。

——働いてみて、どうでしたか?

私は祖父や祖母と暮らしたことがなかったため、毎日が新鮮でした。

ただ、そこは療養型だったこともあり、毎月一人は、入所しているご利用者が亡くなっていました。死に対してはある程度の覚悟がありました。ショックだったのは「ついさっきまで元気だったお年寄りが脳梗塞で倒れて動けなくなる」といった変化。私が長くケアさせてもらっていた方もそうなり、明日どうなるかわからない現実に想像以上にショックを受けました。

いつ誰がどうなるかわからない。だからこそ、不快や苦痛な思いなく、ご本人にとって快適な生活が送れるように、最高のケアを心がけよう。そう心に刻んで働いていました

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拠点の教育を通じ、介護職の素晴らしさを証明する

——その後、秋葉さんはパナソニックが介護領域での新規事業として立ち上げたパナソニックエイジフリーへ転職しています。なぜ、社会福祉士として福祉事務所での勤務を選ばなかったのでしょうか。

福祉施設で働いてみて感じたのが、「介護職の素晴らしさが世の中に伝わり切っていない」ということ。介護職は、介護が必要な人の生活を維持・向上させることが目的。私にとっては、人と深く関わり、小さな気づきを介護に活かす素晴らしい仕事でもあります

どうすれば介護職が素晴らしい仕事であると証明できるのか。その課題を解決できそうだと思ったのがパナソニックエイジフリーでした。

エイジフリーは多くの介護拠点を運営しており、本部で決めたことが各拠点にも適応されます。スキルアップや働きやすい環境づくりを通じ、介護職への印象を変えられると思い、転職を決めました。

デイサービスの相談員から始まり、デイサービスの所長を経て、エリアを何拠点か管理するエリア担当課長を務めながら、CS(カスタマーサポート)やスタッフ研修も担当するようになりました。複数の新規拠点の立ち上げを経て、本社部門へ異動し、新卒育成や帳票・ルール改定なども担当していました。

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——介護職の素晴らしさを伝えるために例えば、どんなことに取り組んだのでしょうか。

現場のリーダーを育成する研修を通じて、拠点全体の意識やスキルの底上げに取り組みました。

ほとんどの介護の現場では、介護技術を学んだり、研修する時間を確保できず、その場その場でのOJTに頼っています。そのため、与えられる情報に偏りがあり、人によってできることに差が生まれていました。一人できる人がいても、教育の仕組みが整っていないと、拠点自体は変わりません。

「できる」と「教える」には大きな溝があります。特に介護領域は人によって異なる介護技術のクセがあります。そのクセを見抜き、正しく介護できるようにするのは、難しくもやりがいのある仕事でした

AIスタートアップだからこそ活きる”現場の視点”

——次のキャリアではこれまでとは180度変わり、AIスタートアップであるエクサウィザーズを選んでいます。その背景について教えてください。

きっかけはフランス発祥のケア技法ユマニチュード(※注1)との出会いです。ユマニチュードを学んで一番衝撃だったのが、どうしたら相手を不快・苦痛にさせず介護ができるのかが、哲学と技術に基づいて説明されていたことです。

(※注1):ユマニチュードとは、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケア技法です。 

これまでは、うまい人も経験の中で培ってきたことを必ずしも説明できるわけではなく、感覚に頼りながら教えざるを得ない場面がありました。

でも、ユマニチュードの哲学と技術に照らし合わせれば、何がうまくいかなかったのか納得がいきます。

ユマニチュードを正しく学べば誰もが適切な介護ができるようになります。また、ご利用者の変化も明らかなので介護職への見方も変わると思いました。

ユマニチュードについて知見を深めるため、講演会に参加している中で出会ったのが、エクサウィザーズの取締役である坂根さんでした。彼は、エンジニアでありつつも日本で初めて介護職以外でユマニチュードのインストラクター認定試験に合格した方で、介護領域に対して深い理解がありました。

彼の話を聞く中で、エクサウィザーズが事業の一つとして「介護×AI」をやろうとしていること、その要素としてユマニチュードがあることを知りました。AIとユマニチュードを組み合わせることで、より多くの人にユマニチュードを届けることができるし、介護への認識を変えられるかもしれない。そう思い、転職を決意したんです。

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——入社後はどんなことを担当されてきたのでしょうか。

入社したころはまだプロダクトがなかったので、ユマニチュードを学びながら、研修事業のサポートをしていました。そして2020年夏ごろに「CareWiz 話すと記録」チームへ異動。ここでの役割は、プロダクトの着眼点からビジョンを考え、それを実現するためのプロダクト開発チームへ介護現場の声を伝えることです。コロナ禍ということもあり、オンラインで介護施設とコミュニケーションし、現場で求められている機能や課題をヒアリングしたり、その内容をチームへ持ち帰ったり、プロダクトへどう反映すべきか話し合っています。

UXデザイナーの宮田さんからユーザーヒアリングのやり方を教わってそれを実践するなど、プロダクトをつくるスタートアップらしい働き方をしているなと思います。

「CareWiz 話すと記録」チームは、開発担当メンバーが介護現場の意見を尊重して動いてくれます。私はAIを深く理解できているわけではありませんが、一方で開発担当メンバーたちは介護現場のプロフェッショナルではない。まったく違うバックグラウンドを持つメンバーが集まっているおかげで、補い合うように仕事ができています。

介護職は、「人とは何か」「生きるとは何か」を考えられる究極の仕事

——エクサウィザーズはこれまで働いてきた環境とはまったく異なると思いますが、秋葉さんから見てどんな会社でしょうか。

これまで働いてきた介護施設ともエイジフリーとも異なる世界へ飛び込んだと言うか......、住む世界が違う人ばかりと言うか......(笑)。ここで働くメンバーはみんな、それぞれの角度で社会課題を解決しようとしています。アプローチは違いますが、全員が同じ方向へ突き進む集合体というイメージがありますね。

——今後は「CareWiz 話すと記録」をより広めていくことになると思いますが、どんな人と一緒に働きたいですか?

誰でも専門性のある介護ができるようになる世界に本気で変えていきたいと思っている人ですね。介護職とは素晴らしい仕事だと思っている人は、全国にいると思っています。そういった人たちが手を挙げて参加してくれると、よりスピードが上がるはずです。

——最後に、秋葉さんが介護職は魅力的な仕事だと考えている理由を教えてください。

介護職は、人の終(つい)に立ち会う仕事でもあります。老いの中で、意思を伝えられなくなることもあります。けれども尊厳を保持し、不快なく、穏やかに終を迎えられるようケアを行う介護職は、「人とは何か」「生きるとは何か」を考える究極の仕事です。私にとって、これほど人生の深みが増す仕事はありません。その魅力を、もっと広めたいんです。

そのためにも、リリースしたばかりの「CareWiz 話すと記録」を多くの介護現場へ広めることが直近の目標です。「介護の記録アプリと言えば『CareWiz 話すと記録』だよね」と言われるようになり、介護そのものの質が向上し、働く人たちが「介護職はやりがいのある仕事なんだ」と感じられるプロダクトにしていきたいですね。

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文:福岡夏樹 編集/写真:稲生雅裕

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