2023年、社会課題解決のキーワードは「即」
雲を出でて我にともなふ冬の月
風や身にしむ雪や冷たき
上場して1年が経ちました。今この瞬間に思う歌をひとつあげるとするならば、明恵上人のこの歌を選びたいと思います。2022年は本当に様々な事件がありました。ウクライナでの戦争に始まり、安倍元総理の銃撃事件、そして、米国のインフレに伴う長期金利の上昇と資本市場の変化。コロナを乗り越えてようやく雲を出でたところ、さらなる風や雪の冷たさが身に沁みる1年だったと、皆様も感じられたのではないかと思います。
一方で、「月の歌人」である明恵上人のこの歌は、日本の伝統でもある「雪月花のとき、最も友を思う。」という気持ちを同時に湧き立たせてくれます。日本で初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成は、授賞式のスピーチで、明恵上人の歌を引用しました。「雪の美しいのをみるにつけ、月の美しいのを見るにつけ、四季折々の美に、自分が触れ目覚める時、美に巡り合う幸いを得た時には、親しい友が切に思われ、このよろこびを共にしたいと願う」と言っています。
暗いニュースも多い1年でしたが、多くの友である「ウィザード」※1たちの活躍によって救われた1年でもありました。エクサウィザーズの恒例の行事として、毎月、全社会で社長からのメッセージを届けておりますが、今年最後となる12月の全社会では” Thank you for your hard work”に始まり、” I appreciate how much you've covered for me. I hope to show my gratitude by getting you back one of these days! Let me know whenever you need it”という表現まで(エクサウィザーズは22カ国からメンバーが集まっているグローバルな組織です)、20パターンほどの英語の言い換えで、ひたすらこの1年社会課題の解決に向き合って真摯に頑張ってくれたウィザードのみんなへ、感謝の気持ちを伝えさせていただきました。
さて、2022年の締めくくりとして、明恵上人の歌が思い浮かんだ理由はもう1つあります。実は、明恵上人は2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ともゆかりのある人物でした。後鳥羽上皇(国体)と北条泰時(政体)を代表する両者と親しかった大変貴重なポジションに存在していた人物で、最終回に登場した「御成敗式目」については、泰時が策定するにあたって明恵上人のアドバイスをふんだんに盛り込んだと言われています。
「文学」と「法律」、さらに私たちの仕事と紐づけて抽象化すれば、「デザインシンキング」と「社会システム」の両面で、今日の日本をかたどった人物と言っても過言ではないでしょう。脚本を手がけた三谷幸喜さんは、泰時を演じる坂口健太郎さんに対して、泰時が「最後の希望」を象徴する存在として演じるよう依頼したそうです。関係者が不穏な死を遂げていく暗い物語の中で「最後の希望」であった泰時、そして、そのメンターとしての明恵上人。エクサウィザーズのウィザードたちは、本当にいつも多くの希望を感じさせてくれますが、その中で、私自身も明恵のように彼らを支えていきたいと強く思う1年でもありました。
さらに、もう一つ、明恵上人の歌を選んだ理由があります。明恵上人は和歌山県出身の華厳マスターであり、仁和寺で実尊や興然に真言密教を学んだ人物であります。一方で私はと言うと、過去に「Forbes JAPAN」の特集「AIによる社会課題解決に魅せられた現代の空海たち」や日経新聞の記事などで、「現代の空海」として取り上げてもらった経緯もあり、鎌倉時代における明恵上人の活躍を意識せざるを得ない立場にあります(笑)。
上場後、エクサウィザーズの複数の顧客の皆様からは、「本当に石山さんを現代の空海と思っています」と温かい言葉をかけてくださる方も増えており、明恵上人のように生き、空海を目指したいという気持ちは日に日に増していく1年でもありました。それでは、なぜ、明恵上人はこのような活躍をすることができたのでしょうか? やはり、そこには華厳経と真言密教のエッセンスが取り入れられていたのではないかと思います。スティーブ・ジョブズが禅からの影響を受けてiPhoneを開発したことは有名ですが、実は、華厳経や真言密教にインスパイアされている事例も世の中には多数存在します。
まず、1人目は、今年も大活躍だった大谷翔平さん。大谷さんは「マンダラート」という華厳経や真言密教でも中核になる概念の「両界曼荼羅」の金剛界曼荼羅をベースとしたデザインシンキングのフレームワークを用いて二刀流へと進化していきました。次に今年上映された映画『マトリックス レザレクションズ』のキアヌ・リーブスさんが演じる主人公のNeo。マトリックスは日本語で「胎蔵」を意味しており、この映画のタイトルが胎蔵界曼荼羅から強く影響を受けています。まさに、両界曼荼羅を活用して「即身成仏」を体現している二人と言えるでしょう。
もともと、仏教には顕教と密教があり、密教が普及した背景の一つには「即」、すなわち顕教よりも悟りのスピードが速いという魅力がありました。まさに、「即」とはベンチャー魂を体現した言葉であり、即身成仏は起業家精神の象徴とも言え、「最後の希望」を感じさせてくれるカッコ良さの源泉でもあるのです。2023年は、「どうする家康」も楽しみですが、ベンチャー企業には、毎日、大河のようなドラマが待っています。
2022年、世界は大きなトランスフォームへの胎動を始めました。トランスフォームには様々な筋肉痛も伴います。供給よりも需要サイドのDXが先に進めば需要過多でインフレーションも起こりやすくなりますし、資源を持っている国は価値がデジタル等へとトランスフォームするよりも前に一定の地政学的なアプローチを取らざるを得ない。そして、これらに付随する新たな社会課題も生まれ始めています。
そんな中でも「最後の希望」を感じさせてくれるヒーローになれるウィザードを、2023年も引き続き募集しております。ぜひ、エクサウィザーズで一緒に即身成仏しちゃいましょう笑。それでは最後に明恵上人のもう一つの有名な歌で〆させて頂ければと思います。
この歌について、川端康成は次のように解説しています。「月を友とする」よりも月に親しく、月を見る我が月になり、我に見られる月が我になり、自然に没入、自然と合一。この歌を読んでるうちに自然とエクサウィザーズに合一してくれることを願います、色即是空。
まずはカジュアル面談を申し込みたいという方はこちらから。