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不確実性が高いからこそ考えたい。DX時代の人事の役割とは。# 採用帰れま10 vol.07 イベントレポート

30年以上にわたって一貫して人事業務を担当してきた元SONY人事統括部長の北島久嗣さんが、2021年4月エクサウィザーズの一員となりました。現在は社長室でさまざまな業務を推進しています。

7月7日に「不確実性が高いからこそ考えたい。DX時代の人事の役割とは。# 採用帰れま10 vol.07」と題し、北島さんと一緒にDX時代に求められる人事の役割についてトークを行いました。

この記事では、同日のイベントレポートをお届けます。

2021_07_07(水)不確実性が高いからこそ考えたい。DX時代の人事の役割とは。

(忙しい人向け、10のまとめ)

■ プロフィール

北島 久嗣

大学で計量経済学を専攻し卒業後、1989(平成元)年ソニー株式会社に入社。労務・採用などのCOE, HRBPを中心に一貫して人事業務を担当。
現場人事としては、FFSを導入して職場活性化を推進。
本社人事では社内募集などリソースマネジメント施策を推進した。
2021年にエクサウィザーズに入社。社長直下で、さまざまな業務推進に携わっている。

人より風土。30年間の人事経験から見えた、相性の良い組織の条件

半田:今回は北島さんにSONYでの経験を振り返ってもらいつつ、DX時代に求められる人事の役割について一緒に考えていきたいと思います。本日のトピックは、

・長年の人事キャリアの中で感じた人事の本質
・DX時代に求められる人事の役割とは
・経営者の伴走者たる人事であるために求められる役割とは

の三つです。

30年にわたる人事経験を経て、北島さん視点での「キャリア論」についてぜひ意見を聞いてみたいです。

北島さん:キャリア論と言えるほど のものではありませんが、経験値はおかげさまで積んできた気になっています。例えば、キャリア相談でよく相談されるのが、人的環境とキャリア形成です。同じ環境やチームにいる人との相性も、もちろん大事な要素ですが、それを主軸にキャリアを考えるのは少し危ないよ、と若い仲間には言ってきました。「嫌な人がいるから早くこの部署を出よう」「この人にずっとついていこう」と、考えるのが典型ですが、そう長くない時間の経過とともに自分も成長するし、相手も必ず変化します。

その前提に立つならば、自分はこの会社に合っているだろうか、と考えるときに「周りの人との相性」ではない要素、特に「会社の風土との相性」を考慮することが重要です。

もし「この会社は自分と合う」という感覚が持てるなら、それは大事にしたほうがいいと思います。

半田:北島さんがSONYで長年働いていたのは、「会社の風土」が合うと感じていたからなのですね?

北島さん:そうですね。私は社会や組織の環境変化に合わせて新しいチャレンジをすることが好きで、SONYにはそれを是認してくれる風土がありました。

特にそれを感じたのが、「自己申告制度」という制度運用を担当していたときのこと。これは、個々人が自分の年間の業務課題やレビューを、決められたフォーマットに記入し、それをもとに上司と部下で話し合う制度です。今のエンゲージメントサーベイにあたるでしょうか。年度ごとに自分の業務の状況を記述するのですが、当時私は会社の位置づけや重点が変われば上司が部下に聞きたいことも当然変わると思い、自己申告で記入してもらう項目を毎年いろいろ変更していたんです。

ところが、ある他社交流会に参加したときのこと。他社人事の方に、自己申告担当としての自分の仕事内容について話すと、「一回決めたことを毎年変えるのは、非効率じゃないですか?」と指摘されたんです。もちろん、そうした考えも一つの視点として正しいと思います。

ただ、自分たちとは違う考えの会社があると知った出来事がきっかけで、SONYの変化を受容する組織カルチャーに触れ、相性が良いのかもしれないと思うようになりましたね。

半田:創意工夫が歓迎されるのか、それとも効率性が重視されるのか。同じ人事でも、所属する会社のカルチャーによって正解とされるアクションが変わるのは面白いですね。

北島さん:私は今でも、制度が状況に即した内容や運用になっているかは常にチェックしなければならないと思っています。ルールをつくる側の対応が遅れると、そのルールの上で仕事をしている社員に不利益が生じますからね。制度を導入してほっと一息つくのではなく、導入したその瞬間こそが「いつ変えるべきか」をウォッチするのがスタート地点だと、SONYでは周囲によく話していました。

時代の変化に耐えるのは、「価値観」でつながった組織

半田:参加者からの質問です。「SONYは時代の変化とともにさまざまな事業を展開してきましたが、どの時代もプロフェッショナルがイキイキと働いているイメージがあります。事業が変遷しても会社の求心力が下がらないのはなぜでしょうか。人事として取り組んだことはありますか?」とのことです。

北島さん:SONYには「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパス(存在意義)があります。おそらく、その元になっているのは、創業時から受け継がれてきた「人のやらないことをやる」というスタンスです。その姿勢が常に事業展開で活かされ社内に浸透していたからこそ、結果的に時代とともにニーズや求められる商品サービスが変わっても、「人のやらないことをやる」という姿勢は不変で、その価値観に共感する人が集まって活躍したのだと思います。

半田:今の話を聞いて、SONYは事業以上に価値観でつながっている集団なのかもしれないと思いました。「人のやらないことをやる」文化は、人事や経営陣が意図して浸透させたのでしょうか?

北島さん:現在はパーパスを浸透させる施策が行われています。しかし、それまでは、サブカルチャー的な形で、個性的な創業者のエピソードとともに、「口伝」のような人づてに、じわっとカルチャーが浸透していました

私は若いころ、SONY創業者の井深大さんのサポートをする仕事を一時期していました。それを通じて創業者の考え方だけではなく、価値観やクセのようなものも、会社の中にじわーっと浸透しているものだと実感しました。

「SONYは、人のやらないことをやる会社だ」という意識は、創業者の考えを源流に、人と人との会話を通じて組織文化として定着していったのではないかと思います。余談ですが、余り行儀作法に厳しくない、というのも創業者の感覚が伝播しているのではないかと思います。

“組織プロデューサー”として、人事がDXを推進するには

半田:では、二つ目のトピック「DX時代に求められる人事の役割」に移ります。ビジネスのあらゆるルールが変化しつつある中、人事にはどのような役割が求められているのでしょうか。

北島さん:「DXの推進役」としての役割ですね。最近、経営コンサルタントの冨山和彦さんは、DXの本質を「横につなぐこと」だと言っていました。組織の縦割り構造を壊し、横につなげていくことにDXの意義があるならば、あらゆる組織を横断的に見る役割を持つ人事が「横串を刺す視点」を意識して活かすことは、DXの推進局面でかなり重要になるはずです。

その際、実際にDXを推進していく旗振り役を「発掘」するのも人事の大切な役割です。旗振り役に適任なのは、必ずしもITに長けた人だけではありません。

半田:今の話に関連して質問が来ています。「DXを推進したい経営陣と現場に温度差がある場合、人事はどのように社内に働きかけていくべきでしょうか」。

北島さん:まず経営陣にDXを推進する意思があるのは筋が良いと見るべきですね。そして現場との間にギャップがあるならば、人事の見識で「この人がキーパーソンになる」という人を集めて組織横断的なプロジェクトチームを発足させてみてはいかがでしょうか。ゲリラ的な動きを通じてファクトを積み重ねていくと、ある時点で一気に会社の雰囲気、空気感が一変するのはよくあることです。最初に完璧なストーリーをつくり実現しようとしてもなかなかこういう「空気づくり」はうまくいきません

半田:組織の流れを生み出すのに決まった方程式はないですよね。ちょっとしたタイミングやコミュニケーションの取り方次第で、組織の方向性は大きく変わる。社内の「空気づくり」は、「制度づくり」とはまた違った人事の腕の見せ所と言えそうです

北島さん:その通りです。人事には一人ひとりの社員の良さや癖、苦手なことを把握することだけではなく、組織全体の空気を読む力、さらにはその空気を変えるシナリオライターの役割もときとして求められるのではないでしょうか。

半田:多くの日本企業は今、あと数年のうちにDXをどれだけ進められるかという瀬戸際に立たされています。そんな状況で「DX時代の組織プロデューサー」を担っているのが人事だと考えると、なんだかワクワクしてきますね。

人事は「経営者の伴走者」。社外の環境変化に目を向けて

半田:それでは本日最後のトピックです。「経営者の伴走者たる人事であるために求められる役割」について、北島さんの考えをお聞かせください。

北島さん:経営が目指す業績を達成するには一定の時間がかかりますし、人事の取り組む人材育成も一朝一夕で成果が出るものではありません。だからこそ、取り巻く事業環境についての認識、世界観を経営サイドと目線合わせできることが必要だと思います。人事は経営トップと同じか、気持ちの上ではそれ以上の長期的な視点を持ち、絶えず磨きをかけていることが大事だと痛感します。

そんな人事が経営者の伴走者としての役割を担うのなら、今まで以上に会社の外側の環境変化に目を向けなくてはなりません。

半田:変化が激しい時代だからこそ、人事は意識的に社外を見る必要がありますね。北島さんがエクサウィザーズに入社して約3ヶ月が経ちましたが、今どのような想いですか。

北島さん:この会社には「今の時代に何が求められているのか」「世の中はどこに向かっていくのか」を考える機会が豊富にあります。SONYでも同じようなことを考えてきたつもりでしたが、長年一つの組織の人事を務める内に、視点が固まってしまっていた部分もありました。エクサウィザーズの仕事を通じて、既存の大企業とスタートアップが同じ立ち位置で連携しあうダイナミックさも感じています。まるで幕藩体制から激変して多様な人脈でストーリー展開する幕末に居合わせたような感覚です。こういったなかで、これまで培ってきた知見を活かし、少しでも世の中を前進させるお手伝いをしたいですね。

半田:当社は世の中の変化を感じる機会が溢れていますよね。ゲームのルールが変わりつつある幕末のような時代において、人事が果たすべき役割の重要性を改めて認識できました。本日はありがとうございました。

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