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機械学習エンジニアの技術とキャリアの可能性を最大化する「ギルド制」という仕組みについて

こんにちは、エクサウィザーズでAIエンジニアリングフェローをつとめている遠藤です。

この記事では、エクサウィザーズにおける機械学習エンジニア(以下:MLE)のチームづくりについて紹介します。

■ プロフィール

遠藤太一郎

エクサウィザーズAI技術統括。会津大学コンピュータ理工学部博士前期課程修了(首席)。​
AIに関する実装、論文調査、システム設計、ビジネスコンサル、教育等幅広く手がけた後、株式会社エクサインテリジェンス(現 株式会社エクサウィザーズ)に参画。
​国立大学法人東京学芸大学 准教授、理化学研究所 革新知能統合研究センター (AIP) 客員研究員、国際コーチ連盟ACC。AI時代の活躍人材の育成を軸の一つとして、東京学芸大学を始め、産官学連携しながら推進している。2021年4月にAIエンジニアリングフェロー就任。

個々の技術の幅とキャリアの可能性を広げる「ギルド制」

エクサウィザーズのMLEチームは現在「ギルド制」と呼ぶ体制をとっています。得意領域ごとにチームを分け、運用は各チームメンバーに任せています。現在は「数理最適化ギルド」、「自然言語処理ギルド」、「画像処理ギルド」、「構造化データ処理ギルド」の4つに分かれています。

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各ギルドの行動指針はOKRによって決まっています。OKRは技術スタックの蓄積・整理・展開、他のギルドや部署との連携の強化、キャリアアップにつながる案件づくりなど、個人と企業両方にメリットのある内容で設定されています。



「数理最適化ギルド」のObjective:「個々の案件・プロジェクトを超えた技術力向上を計る」、「エンジニア間の連携をすることによる最適化の質の向上を目指す」

「画像解析ギルド」のObjective:「案件相談や取り組みの結果を社内で簡単に検索・閲覧できる仕組みを作り、技術や知見を蓄積する」、「恒常的に知見を獲得できる仕組みを作り、知見を日常的にアップデートする文化を定着させる」

また、OKRで設定されたこと以外にも、個々のキャリアの可能性を広げる取り組みをしています。一般的に「MLEは専門領域外にキャリアを移しづらい」という現状があると認識しており、活躍の機会を増やし、キャリア形成に役立てて欲しいと考えているためです。ここでは三つの事例を紹介します。

一つ目が、サブメンバーとしてのアサインの仕組みです。メインのギルドとは他に、サブメンバーとして別のギルドの案件に関わることができます。そのためのOJTの体制も整えました。キャッチアップ用の課題 / エクササイズを設けているギルドもあり、サブメンバーとしても参画しやすい仕組みを作っています。

二つ目が、勉強会の実施です。著名な先生を招いての講義や、構造化データ処理の経験を中心として非構造化データ処理の経験が多くない人が、画像データを扱う場合どうすればいいか、といったケーススタディにも取り組んでいます。

三つ目が、定期的な1on1です。メンバーのキャリア形成のため、リーダーとメンバーが1on1をする機会を作っています。リーダーの1on1スキルの向上も大切なので、私が同席して1on1の方法についてフィードバックをしたりもしています。

個々のモチベーションを高く保ちつつ、学習効率を上げ、フィードバックもきちんと得られる。そうした環境を「ギルド制」では目指しています。

ワンチームから「ギルド制」へとアップデートした理由

なぜ、「ギルド制」という体制をとっているのか。その背景をご説明します。

まず、チームづくりの前提の思想として、キャリアは個人の中にあり、採用はマッチングであることを大事にしています。これは、チームが数名だったころから変わりません。

社会の流れとして、メンバーシップ型からジョブ型に雇用形態が移りつつあり、個人と企業の関係がどんどん対等になっています。特に、MLEの需要は上がっており、エクサウィザーズへ所属しなくても良いわけです。

各々がエクサウィザーズで何を得られるのか、個人としてどんなキャリアを歩んでいきたいのか、組織のゴールと個人のゴールをつなげることを意識してチームをつくっています

加えて、個人と組織のマッチングだけでなく、結果的に社会にも良いインパクトを与える組織にしたいと思っています。これを「IとYouとWeが一致するところ」と定義していて、選考の過程でもそれを意識した質問をしています。

ギルド制を取り入れる前は、ワンチームでの組織づくりをしていました。その時から「スーパーフラット」であることを意識しています。当時の職位はメンバーとマネージャーのみでしたが、階級によって力関係が変わる、ということが起きないようにしたかったからです。

アサインは、私含めたマネージャーがメンバーと1on1をし、個人のキャリアを鑑みながら四半期ごとに何に取り組むかのすり合わせを行っていました。ビッグプロジェクトに入ったら1年間それしかできない、ということを避け、個人のキャリア形成につながるようにしたかったからです。

このように、ギルド制になる前から個々のキャリアの可能性を鑑みた取り組みをしてきましたが、運用する中で大きく二つの課題が出てきました。

一つ目が、チーム内での情報共有の難化です。1年間で前年比+50%以上のペースでMLEが増えるほど、エクサウィザーズが凄まじい勢いで成長していった結果、徐々にチーム内での情報や知見の共有がされにくくなりました。加えてコロナの影響でリモートワークで個人化が進み、コミュニケーションがより薄くなってしまいました。

もう一つが、アウトプットクオリティの属人化です。これまでの体制を続けると、プロジェクトのアウトプット品質が個人に依存してしまうだろうと思っていました。

こうした課題を解決し、規模が大きくなってもフラットかつスピーディに動けるよう「ギルド制」を取り入れました。

「I You We」の三方良しを実現する組織を目指す

「ギルド制」が始まってまだ日が浅いですが、「社内wikiに情報がよりわかりやすい形で蓄積される」、「使っている技術の統一化やライブラリの作成により効率化が進む」、「チームメンバーの主体的な運営がモチベーション向上にもつながっている」など、良い効果が出ています

今後、さらに人が増えたとしても、環境改善や新規企画等のプロジェクト軸と、1on1等を通じた各自のパフォーマンス最大化を目指したコミュニケーション・アサインメントの両軸から、安定的により高いパフォーマンスを出せるチームを創っていきたいと考えています。

その上で、最初に申し上げた「I You We」の視点を各ギルドにも適応させていきたいです。ギルドの目指すところと、個人のキャリアがマッチし、さらに社会課題の解決にもつながって、三方良しな仕組みの連鎖が生まれると良いなと思っています。

MLの技術は進化も早く、領域も広いため、マネージャーが管理する形式は向かないと思っています。だからこそ、MLEチーム全体、各ギルドで達成したいことのビジョンを示し、各々が自律的に動くことができ、チームやギルドの成果が最大化されていくような仕組みにしていくことが大事になると思っています。

繰り返しになりますが、ギルド制は立ち上げてから日が浅いので、まだまだ試行錯誤をしている部分もあります。MLEがエクサウィザーズを卒業したとしても活躍できるような環境づくりに取り組んでいます。

もし、より詳しいギルドの内容やエクサウィザーズのMLEに興味のある方がいれば、お気軽にご連絡ください。

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