垣根を超え、想いを形に--。関西からAIの力で情報・教育格差を無くしたい。
「地方創生という社会課題の解決は、僕自身が育った故郷への恩返しでもあるんです」
「エクサウィザーズ」で活躍する”ウィザーズたち”を紹介するストーリー。
今回は、エクサウィザーズ・関西チームのリーダーを務める長谷川さんです。
エクサウィザーズに参画したのは、2年前、まだエクサウィザーズが誕生して間もない頃。経歴と大企業からベンチャーへ転職した理由、そして事業拡大の2年間と今の関西チームの魅力をお話いただきました。
大学院の研究を経て、作る仕事に興味をもった――電力会社で学んだ人の想い
ーー現在はエクサウィザーズ関西チームでリーダーを担当されていますが、経歴をさかのぼって、大学院で土木の研究室を選んだ理由、そして研究内容についてお話を聞かせてください。
研究室を選んだ理由は、ちょっと不純な動機ですが、ゆとりある研究室がいいな……と(笑)研究室では岩盤の研究をしていました。
「この知識をどこで使うんだ?!」と思うかもしれませんが(笑)核廃棄物の処理などを行う際に地中深くに処理するんです。地中の深い部分に岩盤があれば、核廃棄物から地中を守るバリアとして利用できます。
ーー電力会社に就職した理由は研究の知見を活かすためですか?
土木という観点では共通点がありますが、どちらかというと作る側に関わりたいと思ったことがきっかけです。土木は、建造物を作る最初の工程。例えば、発電所を作る時も先ずは測量したり、地盤を整備するところからスタートします。
また、大学院卒業までずっと日本で勉強を続けてきたので、海外に挑戦したい気持ちもあり、その二つを実現できる就職先を検討していたところ、「日本の優れた電力技術を海外に輸出する」というビジョンを掲げていた会社にたどりつきました。
――電力会社に就職して、その夢は叶えられましたか?
僕が内定をいただいたのは2011年。入社直前の3月11日に東日本大震災が起こった年です。作り手として海外に挑戦したいという動機だったものの、過去の新卒入社とは状況がまったく違いました。
各地が被災し、電力を届けなくてはいけないのに、発電所が止まって電力が足りない。緊急工事も多かったので、社内で行う判断も作業もとにかくスピードを求められました。土木作業の工程のスタート地点にいる自分たちの作業が遅れれば、後に控える作業も遅れる。 常にゴールを見据えて仕事を進める視点を持たなければなりません。
時間、人、費用面、すべてが混乱した大変な時期ですから、自分たちもオフィスで作業のマネジメントをするだけでなく現場で実際に色々作業してました。
――発注だけでなく、実際に手を動かしていたんですか?
はい。大学院で理論を作る勉強はしてきたけれど、現場で作業員さんの力を借りて一緒に作るというのは人生で初めてでした。現場では、予想できないトラブルも起こります。当たり前かもしれませんが、作業するのは人間です。それぞれの人の想いがものを作る体験ができたことは大きく、今でもそれは大切にしています。
――2社目では、関西に戻ってコンサルティングファームに転職していますよね。コンサルを選んだ理由はなんでしょうか?
学生の時から、自分の思い入れのある場所で、仕事をしたいと思っていました。僕は香川で育って、京都の大学へ進学したから、関西がホームタウン。
電力会社で作る側を経験したので、今度は客観的な視点から企業を支援することを経験したいと思いました。
コンサルで行う事業改革やM&Aはまったくの未経験です。上司にゼロから教えてもらいました。頼りがいのある人が多く、社員間のコミュニケーションも活発。関西特有のノリかもしれませんが世間話をしていると上司がボケることもあり、負けじとツッコみを入れていました(笑)
未経験のコンサルで学んだ、自分の視座を上げる仕事
――未経験でコンサルに入社となると、大変なことも多かったんじゃないでしょうか?
当時は20代後半で、お客さんは大企業での経験の長い50代~60代の要職の方々です。はじめは「この若造が!」と話を聞いてもらえないんじゃないか? と、年齢や経験の差に対する不安がありました。
でも、たくさんの経営層の方々とお話をさせていただく中で、課題解決に向けてロジカルに考え、自分の中で絶対にこれだ!と胸を張って伝えられる提案は、年齢関係なく受け入れてもらえるとわかり、徐々にそうした不安はなくなっていきました。経験の差はあれど、プロとして接するべきで、必要以上に萎縮する必要はないんだなと学びました。
今、エクサウィザーズでも大企業の重役の方とのお付き合いがありますが、コンサルで積み重ねた垣根を超える経験はとても大きな糧になっています。
――企業だけでなく官公庁ともビジネスを展開するエクサウィザーズにとって、相手と同じ視座に立った提案はまさに必要な力ですよね。他にも印象に残っている業務はありますか?
自分だけが2年近く一貫して担当していたM&A案件です。長期間のPJでメンバーも様々入れ替わりがある中で、細かい部分までプロジェクトを把握していたのは初期からずっと入っている自分だけという状況にもなりました。
当時、まだマネジメントする立場ではなく、スタッフとして入ってましたが、プロジェクトの後半では、クライアントが雑談や質問を僕の方を見て話してくださるようになったんです。信頼が得られてとても嬉しかった経験でした。
――すごく嬉しいですね。この後、エクサウィザーズに参画していますが、転職は積極的に視野に入れていたんですか?
実は転職をするつもりはなかったんです。キャリアとしてはシニアコンサルから翌年、マネージャーになるタイミング。同社でマネージャーとしての経験を積もうと思っていたところです。
ですが、登録していた転職サービスから届いたスカウトメールをきっかけにエクサウィザーズを知り、関西チームが事業拡大のフェーズであることに強い魅力を感じました。そのとき、初めて転職を検討しましたね。
――いつから事業拡大に興味をもっていたんですか?
前職では個人的に業務を任せてもらうことも多く、直属の部下がいるということがなかったんです。いつか、自分のチームを作り成長させたいと思っていました。
また、エクサウィザーズでは「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をミッションに掲げています。ミッションにも強く共感し、この会社で働けたら楽しいだろうなと思いました。
――社会課題の解決に興味を持った背景を教えてください。
僕自身が香川県の田舎町の出身で、大学に入って「情報や経験の格差」を体感したからですね。インターネットも、僕が中学生になった頃にようやくADSL回線が開通したくらい。この頃から、地方創生や地方と都心の情報格差を解決したいという思いがありました。
京都の大学では、東京や大阪などの都心で育った友達も多い。彼らの話を聞くと、経営者が身近にいて将来の相談をしたり、起業した先輩に話を聞いていたりします。学生でも社会を見る視点があって、田舎町でのほほんと過ごしてた僕とは全然違うなと思いました(笑)。
「もっと早くに出会えていたら、人生が変わったかもしれない……」と思いました。同じような情報、教育格差のある市町村は全国に存在します。このままでは過疎化が進んでなくなってしまうところも少なくありません。技術やデジタルによって、この状況を少しでも変えたいと感じました。地域発信を活発にすることで少しでも地域を活性化したい。
地方創生という社会課題の解決は、僕自身が育った故郷への恩返しでもあるんです。
ーー挑戦したかったチームを持つ仕事、ミッションへの強い共感が長谷川さんの未来を変えたんですね。面接で印象に残っていることはありますか?
会長の春田さんや社長の石山さんが、「社会課題解決につながると思ったり、自分がやりたいと思ったことは手を挙げて積極的に挑戦してください。 ポジティブな変化を作ろうとする想いがあれば、止めることはしません」
と話をされてたことが強く印象に残っています。
エクサウィザーズには五つの行動指針が示されたクレドがあるんです。これに反しない限り、自分のやりたいことに積極的に挑戦できるカルチャーは、入社して2年経ち、規模も大きくなった今でも変わらないですね。
経験をすべてを活かして乗り越えた事業拡大の2年間。
――長谷川さんが関西エクサウィザーズに参画した頃はどのような状況だったんですか?
僕がエクサウィザーズに参画した頃は、関西には自社サービスをアピールする基盤も、ネームバリューもない状態です。まずは企業が抱える課題を知るため、規模を問わず、ご縁を最大限に活かして話を聞きに行っていました。社内のメンバーには「誰かこの企業と接点ないですか?!」と顧客との接点を探しまくってました。
今まで作る側、受注されたものに提案を行う側の業務を経験してきましたが、クライアントの開拓は未経験です。初めて営業リストも作って、東京メンバーと合流して提案の場に同席させてもらったりもしました。どうしたら、お客さんと信頼関係を築けるサービサーになれるのかをずっと考えていましたね。
AIの提案や自社サービスに対して好意的な反応がある企業さんでも、「購入する」までなかなかたどり着けず、売上がついてこない時期は少し辛かったですね。あとひと押し、何かが足りないと模索し続けていました。
――悔しいですね。そこから実際にお金が動いた「ひと押し」を教えてください。
企業に「一緒にやってみたい」と思ってもらえる腹落ち感のあるワクワクする提案を絞り出す。加えて、「エクサウィザーズって面白い会社だな」「面白いこと言うやつがいるな」と覚えてもらうためのエッジを効かせたアイデアも落とし込んでいきました。
今でもマイルールとして、提案をするときはオリジナリティやアイデアを落とし込んでいます。絶対に気に入ってもらえる自信を持てるまで、提案を磨くようにしています。
――電力会社、コンサルでのご経験がすべて活かされたんですね。エクサウィザーズに参画して長谷川さんの仕事の仕方に変化はありましたか?
スピードを重視するようになりました。前職では作り込んだ資料を求められていたので、最初は資料の制作に時間をかけていたんです。しかし、エクサウィザーズでは美しい資料ではなく、少し粗いアイデアであってもミニマムで社内に共有して、前に進めることを求められます。完璧さよりも発信するという部分を重視するようになりました。口頭で伝わるのなら資料は必要ないですし、口頭だけでは難しいならその部分をフォローできる資料だけあればいい。今までの経験を活かしつつ、みんなでアイデアを出し合っています。
――必死に走ってきた2年間で、エクサウィザーズ関西チームのターニングポイントになった出来事はありますか?
入社して半年目に、大手電気機器メーカーのAI案件のコンペに通ったことですね。コンペに通ったときに、前職で経験した“自分が納得するまで考えた提案”が認めてもらえるという自分の信条は正しかったんだと、答え合わせができたように感じました。
また大手電気機器メーカーの案件が通ったタイミングで、前職で同じ企業にいたメンバーが参画してくれたことも心強かった。2人になると、業務の幅も大きく広がりました。ディスカッションできる、業務を一緒に進められるだけでこんなに違うのか! と感激しました。
――過去に会社の成長を実感できた案件はありますか?
2019年に大阪商工会議所さんが出された「大阪におけるスーパーシティのあり方に関する提言」に、エクサウィザーズが掲げる「『AI×介護』の取組内容」を採用いただいたことです。うまく進まなかった時期を思うと感慨深く、自分の実現したたかった地方創生の夢に、一歩近づけたと思いました。
――2年間働いてきて長谷川さんの思う、エクサウィザーズの魅力を教えてください。
在籍しているメンバーの経歴の幅広さですね。特にコンサル出身の身としては、エンジニアと肩を並べて仕事ができるのは嬉しいです。前職ではエンジニアとコミュニケーションを取って案件を進めることはほとんどありませんでした。
エクサウィザーズに入ってからは、自社でもの作りをするため、ゼロから作る工程を設計し、完成するまでの過程をすべてエンジニアと話し合って決めていく。
エンジニアとの距離も近いので、コミュニケーションがしっかり取れます。お客さんの望むもの、自分の想いが形づくられていくのは魅力だと思います。
プロにいつでも相談できる贅沢な環境が魅力
――エクサウィザーズ関西チームにはどのようなメンバーが集まっていますか?
関西に限らない話になるのですが、社会課題に敏感なメンバーが多いと思います。COVID-19以前は会議室に集まり、小規模ながら「自分の解決したい社会課題」という議題でアイデアを出し合う社内ワークショップも行っていました。いつも多様なアイデアが出てきますし、中には「これを実際にサービスとして具体的に考えたい」と思うものもあります。
個人から多彩なアイデアが出てくることは、とてもエクサウィザーズらしいなと感じます。
また、関西チームは年齢が30代前後のメンバーが多く、ライフステージが近いからか、社会課題に対するメンバー間の視座も近いように感じますね。みんなで活発にコミュニケーションを取り、助け合いながら仕事をしています。
――長谷川さんが「これは他社にはない!」と思う個性はありますか?
人間としてもビジネスパーソンとしても、秀でた才能をもつメンバーが多い!
例えばエンジニアにわからないことを質問すると「こんな技術も出てきてますよ!」とプラスアルファまで教えてくれます。みんなが、常に自分ごととして捉えて、能動的に行動する人ばかりで、とても尊敬しています。
また、社内外の経営層も含め、在籍しているメンバーがどの企業に所属しても活躍できる経歴、実力を兼ね揃えています。プロフェッショナルにいつでも相談できる、相談した相手が親身になって一緒に考えてくれる環境は、非常に贅沢だと思います。
――これからエクサウィザーズで叶えたい夢を教えてください
事業拡大のフェーズから在籍して、やっと多岐にわたる企業とのお付き合いができるようになりました。まだまだ事業は拡大できると思いますし、「この案件は絶対にエクサウィザーズ」と思ってもらえるようなサービスを生み出す必要があると感じています。
同時に、西日本でエクサウィザーズの代名詞となるようなサービスの展開も行いたいですね。
――最後に、長谷川さんの人生で叶えたい夢を教えてください。
僕は家族が最も大切なので、リスクを取って起業する!みたいな思い切った挑戦はできないかもしれません(笑)。でもエクサウィザーズの大きな成長を経験できたら、もう少し小さな規模の企業で、もう一度、事業拡大の仕事に挑戦してみたいですね。
文:南條 杏奈 編集/写真:稲生雅裕