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【イベントレポート】プロダクトマネージャーカンファレンス 2024 - シゴトの未来を変えるAIネイティブなプロダクトへの挑戦(前編)
2024年12月5日から6日にかけて行われたプロダクトマネージャーカンファレンス2024に、エクサウィザーズのプロダクトマネージャー祖父江と今吉が登壇しました。エクサウィザーズでは、エンタープライズ向けにマルチプロダクトを開発しています。
今回は、世の中の様々なシゴトをディスカバリーし、事業化してきた実績や、生成AIの登場による新しいディスカバリーの領域や方法についてお話します。AI技術が急速に進化しているため、他の技術とは異なるAI特有のアプローチが求められています。私たちの失敗談も交えつつ、様々なテーマについてお話ししています。とても豊富な内容になっていますので、前半・後半の2回に分けてお届けいたします。まずは本記事(前半)をぜひご一読ください!
登壇者紹介
祖父江 雄介(そぶえ ゆうすけ)
グリー株式会社にて業界団体の設立・運営、コンテンツ企画運営に携わる。株式会社KINTOにて新規事業の立ち上げ。2021年株式会社エクサウィザーズにプロダクトマネージャーとして入社。exaBase FAQの事業責任者、exaBase IRアシスタントの立ち上げおよび事業責任者を経て現在は新規プロダクトの立ち上げを推進中。
今吉 友大(いまよし ともひろ)
AIプラットフォーム事業統括部 サービス企画開発部 企画開発グループ グループリーダー。ソフトバンク系のシステム会社でエンタープライズ営業や法人向けSaaSの立ち上げ・事業責任者を経験。その後、DeNAにてゲームプラットフォームやヘルスケアサービスなど、複数のサービス・プロダクトの立ち上げや推進をリードする。2022年にエクサウィザーズに入社。サービス企画開発部において、プロジェクトのデリバリーとプロダクト化の両輪をリーダーとして推進する。
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エクサウィザーズの事業内容について
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祖父江:エクサウィザーズで新規プロダクト企画開発部の部長を務める祖父江です。昨年はIR支援プロダクト「IRアシスタント」を立ち上げ、現在は新規プロダクトを開発中です。
今吉:エクサウィザーズの今吉です。サービスケア開発部のグループリーダーを務め、exaBase ロープレやexaBase 面談要約など複数のプロダクトを推進しながら、エンタープライズ向けプロジェクトのデリバリーも担当しています。よろしくお願いします。
祖父江:エクサウィザーズは、AIプラットフォーム事業(コンサルティングワーク)とAIプロダクト事業(SaaSアプリケーション)の両輪を回すモデルをとっています。現場でAIを使い、アプリケーション同士をつなげ、そこから生まれるデータをためて未来に生かす『使う・つなぐ・ためる』というモデルを重視し、複数のAIプロダクトを提供しています。
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提供アプリケーションは大きく3つに分類できます。1つ目はBtoBアプリケーション群「exaBase」、2つ目は介護領域を支援するソーシャルAIプロダクト「ケアウィズ」シリーズ、3つ目はBtoCプロダクトとして「AI占星術ポラリス」です。
まず「exaBase 生成AI」は国内シェアNo.1の法人向け生成AIサービス(*)で、国内リージョンのGPT-4が利用でき、ISO27017準拠のセキュリティ基準を満たしています。GPTだけでなくGeminiやClaudeなど複数のLLMを切り替えて使え、業務でよく使うタスクのプロンプトをテンプレート化したり、効率化を可視化する機能も備えています。
*出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「法人向け生成AI導入ソリューションサービス市場動向 2024年度版」
IR部門向けには「exaBase IRアシスタント」を提供しています。投資家面談の音声データから議事録を作成し、面談情報を構造化して投資家面談データベースを構築し、マネジメント向けのレポートを自動生成する機能も実装しています。少人数のIRチームで高い業務負荷がかかる課題を解決するソリューションとしてリリースしました。
今吉:「exaBase ロープレ」はAIアバターと会話練習を行い、会話力を鍛えるプロダクトです。アバター設定やシナリオ、評価項目などを自然言語で柔軟に設定でき、営業だけでなくコールセンターや接客など、多方面で利用されています。
「exaBase 面談要約」は2024年12月リリース予定で、面談の記録・書き起こし・要約・共有がシンプルに行えます。高精度な書き起こしや要約、複数の面談を横断的に分析する機能を備え、コンプライアンスチェックや重要な相談の抽出など幅広い業務支援を可能にします。
また、BtoCプロダクトとしてAI占星術「ポラリス」を開発しています。鏡リュウジさんが監修し、NASAのデータを活用してユーザーの星の情報を導き出し、占星術のデータと生成AIを活用して占います。また、利用を重ねるほど会話内容を学習し、感情や記憶を持つのが特徴です。
AIネイティブなアプリケーション
祖父江:1つ目のテーマは「AIネイティブなアプリケーション」についてです。「AIネイティブなアプリケーション」とは普通のSaaSアプリケーションとどう違うのでしょうか。私たちは、AIを中心にプロダクトデザインを行うものをAIネイティブアプリケーションと呼んでいます。
一般的には特定の業務の一部をAIに置き換えて効率化できますが、処理精度が期待ほど高くないことがあります。古いワークフローやデータフローだと最新AIの性能を十分に発揮できないためです。たとえば、優秀なデジタルネイティブの新卒を旧態依然とした組織に配属すると力を発揮しづらいのと同じで、AIも最適化した枠組みなら爆発力を引き出せます。LLMの進化スピードが速いので、柔軟な拡張性を持つアーキテクチャも重要です。今吉さんのアプリケーションではどうでしょうか?
今吉:ありがとうございます。まさに大事な概念だと思います。exaBase ロープレでは、以前はシナリオどおりの対人ロールプレイを作っていましたが、それではAIの力を活かせませんでした。そこで「そもそもAIをどう使うか」を見直し、商談の目的や相手の性格・課題に合わせて顧客設定やシナリオ、評価基準を自然言語で設定し、柔軟に対応できるようにしました。目的達成のための会話力や交渉力を自律的にトレーニングできるようデザインしています。
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祖父江:私たちが考えるAIネイティブアプリケーションは、既存の一部を置き換えるのではなく、そもそもの目的に照らし合わせてプロダクト全体をAIに最適化することが重要だと思います。生成AI登場後に「プロンプト」というキーワードが出てきましたが、exaBase 生成AIでは、お客様に利用中のプロンプトを開示してもらい、そのユースケースを分析しています。すると、特定の業務やタスクに偏りがあることが分かり、テンプレート化して誰でも使いやすくするなどの改善を進めています。今吉さんはいかがでしょうか?
今吉:AI占星術「ポラリス」での例をご紹介します。ベータテストで300人に使ってもらい、生ログを抽出して分析したところ、「ポラリス」に感謝を伝えるメッセージが多い場面がありました。たとえば相性占いで「自然界の何かに例えて」と投げかけた際、「恋人が灯台、あなたが船」という返答にユーザーが「感動した」と喜ぶケースがあったのです。こうしたやり取りを参考に、おすすめの投げかけや自動ピックアップ機能を検討しています。
祖父江:やはりAIを活かすには、一部の置き換えではなく、最初からAIに最適化した設計が大事だと改めて感じました。
AIを使うことの意義、面白さとは
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祖父江:次のテーマは「AIを使うことの意義、面白さ」です。技術革新が非常に速いのがAIの魅力になります。特にマルチモーダル系はAPIをつなぐだけで音声・画像・動画などを扱えるので、プロダクトマネージャーとして超高速でUXテストできるのが楽しい点ですね。一方で、業務で使うにはAIエンジニアとの細かい調整が必要です。それでも「こうしたい」と思ったことが技術革新であっさり実現し、すぐ価値検証できるのはAIを扱う醍醐味ですね。今吉さんはいかがでしょうか。
今吉:私もそう思います。exaBase ロープレの例でいうと、以前はアバターに感情を乗せた音声を出すのが難しかったのですが、最近ChatGPTのアドバンスドボイスモードを利用したところ、本当に怒ったクレーム客のような感情表現が可能になり、UXの幅が広がりました。
祖父江:一言に「怒り」と言っても、怒りの感情にはいろいろな段階があると思いますが、どのくらい表現できるのでしょうか。
今吉:かなり幅広く再現できます。不動産営業ロールプレイで「けだるそうに受け答えする客」を設定すると、本当に雑な対応をするアバターができます。納期遅延で冷静に怒る顧客やコールセンターで大声を出す顧客、「いい加減にしろ!」と怒鳴る顧客など、設定次第で幅広く表現できます。
祖父江:感情表現が豊かになるとリアリティが増すと思いますが、それによってユーザー側の反応は変わりますか。
今吉:リアリティが上がることで「何とか攻略してやろう」と本気度が上がり、練習時間が増えます。上司に言われて渋々ではなく、楽しみながら練習できる。結果的にスキルアップに結びつくので、プロダクトとして良い形に進化していくと感じます。
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祖父江:ありがとうございます。次にAIとの向き合い方について、Human in the Loopという考え方をお話しします。AIシステムの一部に人間の判断や制御を加えることで、人間の尊厳や存在意義を保つ大事な考え方です。一方でAIがすでに人間を超える部分を持つケースもあります。作り込んだプロンプトをユーザーが改変して精度が下がる場合などは、プロンプトを触らせないようにするなどのデザインが必要です。
今吉:どこまでユーザーを介入させるかは状況によります。exaBase 面談要約を導入した金融機関では、事務局がプロンプトを完全に検証し、行員に改変させない仕組みがあります。一方、exaBase ロープレではユーザーの納得感を重視してフィードバックを反映し続けています。ただ、Human in the Loopを突き詰めるとキリがないので、どこにリソースをかけるかは難しいところです。祖父江さんはいかがでしょう。
祖父江:最終責任が人間にあるタスクには判断介入が必要ですが、LLMが進化すれば複雑なタスクもAIがこなし、Human in the Loopは徐々に減ると考えています。またAIアプリケーションは「アシスタント」から「エージェント」へ向かうと思います。今は人間が補助的に使う段階ですが、やがてAIが自動的に処理を進めてほしいという方向になるはずです。
さらにOpenAI社のサム・アルトマンは、エージェントが人間にできないこともやり、何百ものエージェントがコラボし成果を出す未来を構想しています。そうなると、人間の役割は何なのか。これがAIを使う面白さであり意義だと思います。
後半では、「プロダクト開発はどのように変わっていくか」「AIプロダクトディスカバリー」について話していきます。
おわりに
エクサウィザーズでは、さまざまな職種で採用を行っています。カジュアル面談フォームを常時オープンしており、応募職種のご相談なども歓迎です。ぜひお気軽にご登録ください。
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