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コンサルでは経験できなかった「自分は何がしたいのか」という問い。不確実さの中の意思決定の連続が作ったリーダー像

世の中には、リーダーシップに関する本が沢山ある。だが、こうした本を100冊読むよりも、自分を乗り越えようとする葛藤を実際に経験する方が、リーダーシップは圧倒的に鍛えられる。

「エクサウィザーズ」で活躍する“ウィザーズたち”を紹介するストーリー。

今回登場するのは、価値のあるヘルスケアの実現を通じて、自分らしく生きられる世界の実現をビジョンに掲げる、エクサウィザーズCare & Med Tech部の事業部長、羽間(はざま)。エクサウィザーズに入社後、過去の成功体験を積んだ自分と向き合ったことで、リーダーとして一皮向けた人物です。

小さい頃からリーダー気質があり、ラクスルを立ち上げた松本氏を輩出したA.T.カーニー(現: Kearney)でも実績を積んできた彼がぶつかった壁と彼の目指すリーダー像について聞きました。

■プロフィール

羽間 康至(はざま・こうじ)

京都大学工学部物理工学科卒、情報学研究科修了。教授・助教との研究室の立ち上げから参加。第一三共・新日鉄住金・SONY等の企業との共同研究を通じて、多変量解析・機械学習手法を用いた製造プロセスにおける品質予測・異常検知モデルの研究開発に従事。2015年にA.T.カーニー株式会社へ新卒入社し、製薬・医療機器・自動車・重工業・電子電機・消費財・総合商社などの業種にて、国内外の事業戦略立案と事業開発の協業、オペレーション改革、企業再生等に従事。その後、エクサウィザーズに入社し、医療ヘルスケア領域の事業責任者を担う。

無意識に築かれた"リーダー気質”

チームをまとめ率いるリーダーとしての資質は、幼い頃から築き上げられてきたものだった。

経営者の祖父、校長先生の両親という家庭で育った彼は、明確に意識することはなかったものの、小学校高学年の頃からなんとなくリーダー的ポジションが自分に向いているかもと思うようになっていった。

「両親は弁が立つし、物事を整理して分かりやすく教えるのも上手かったので、自然と自分もそういうのが得意になったのだと思います。

その一方で根っこの部分は人見知りなんですよ。だから、それぞれの人のタイプによって適したコミュニケーションの仕方を変えるということを意識的に学習してきた結果、ある種そういう側面も周りからもリーダーに向いていると認識されるようになったのかもしれません」

物理工学への興味から京都大学の工学部に進学。祖父の影響から日本の産業を強くしたいと思っていた彼は、メーカーにエンジニアとして入社し、プロダクトの力で企業をリードする道に進むことを漠然と想像していた。しかし、その道は早々と変わることになる。

「周りの級友のものづくり自体への強い興味関心に触れ、自分はそこまでの情熱を捧げられないと気づいたんです。じゃあ、エンジニア以外で産業に貢献できる職種は何か、と考えていたとき出会ったのが、経営コンサルタントでした」

分岐点となった、「あんただれや」の一言

Kearneyでは、自動車や重工業、電子電機、ヘルスケア、消費財、商社などの業種にて、戦略立案や事業開発、オペレーション改善、企業再生等の幅広いテーマに携わってきた。どのプロジェクトも全て印象に残るプロジェクトだったという。

入社して約3年が経つ頃、彼はコンサルタントとしてのキャリアを追求することを自分は本当に目指しているのかを考えるようになる。その原因の一つは、コンサルタントという業種の構造にあった。

コンサルタントは一般的にプロジェクトベースで仕事が進み、終われば解散だ。プロジェクトで関わった事業をずっと成長させるリーダーになることはない。少年時代からチームスポーツ一筋、大学のラクロス部では副キャプテンを務め全国準優勝に導いた彼にとって、事業戦略のマイルストーンを達成するため苦楽を共にし、チームを導くリーダーの方が自分に向いているし、好きだと思った。

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「コンサルタントの仕事も非常にやりがいがありましたが、続けたいかと問われたとき、ピュアにイエスと言えない自分がいました」

事業会社への転職を考えるようになった彼は三つの軸で会社を探していた。一つ目は自分がコンサルタントとして培ってきたスキルが活かせること。二つ目は社会にポジティブなインパクトを与えられること。そして、三つ目は大学院時代に研究していた分野であるAIやデータ分析の事業を行っていること。

いくつかのAIスタートアップを見ている中で、エクサウィザーズへの入社のきっかけとなる出来事が起こる。

「大阪の実家に久々に帰ったとき、祖母が僕を見て「あんただれや」って言ったんです。衝撃でした。祖母は認知症にかかっていました。二世帯住宅でずっと一緒に暮らしていたのに、こうも簡単に忘れてしまうのかと。

共働きの両親の話を聞いていると、これまでは身近では無かった介護の大変さが一気に自分ごとになりました。同時に、今後多くの国が超高齢社会を迎えたとき、自分と同じような思いをする人を減らしたいとも思ったんです

あだとなった、コンサルタントの経験

社長室付きで入社後、しばらくすると一事業部の立ち上げを任される。そのとき生まれたのが現部署の前身となるMed Tech部だ。事業部長兼プロダクトマネージャーとして、事業とプロダクトの立ちあげからグロースを任され、事業作りに奔走し始める。

しかし、ここでコンサルティングファームで積んできた経験が逆にあだとなった。それまでのコンサルタントの仕事は、クライアント個別の経営課題や問題意識がある程度見えている状態から始まる。

一方、事業やプロダクト作りは「自分が何をしたいか」を自らに問うところからスタートだ。どんな人のどんな課題を解決するのかを自ら意志を持って設定するということは、コンサルティングファームでの経験とは性質が違った。

最初のころは、いつも経営陣から『本当にやりたいことは何なのか』を問われ続けました

コンサルタントはクライアントが行うことの意思決定を支援するために仕事をする。プロダクトマネージャーは、事業作りはもちろんのこと、決まっていない未来に対し、情報が足りない中で、自分達が実際にやることを絞り「えいや」と腹をくくって意志決定して前に進まなければならない。

最初の頃はそれが全くできませんでした。情報が足りないからといって先延ばしにして、事業が進まない状態が続き、本当に辛かったですね

さらに、ビジネスでソフトウェアを作ったことのない彼にとって、プロダクトの設計周りは全くの門外漢。何がわからないかもわからなかったという。

彼を前に進めたのは、サービス立ち上げ経験者との協業だった。プロダクト開発のリアルな活動・姿を間近で見て、学び、自分がわからないことはその道のプロを信じて任せられるようになると、徐々にプロダクトマネージャーとしての役割も掴んでいった。

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コンサルタントの時は自分の関わるプロジェクト活動の詳細・具体まで理解して最悪自分で巻き取ることができないといけないという気持ちが強かったと思います。

でも今は、プロ達が実力を最大限発揮できるような意思決定やそんな環境を作るにはどうしたら良いかを考えて行動できるようになってきました。

最近では、当初自分が思い描いていた事業戦略が、自分の意志決定によって少しずつ実現していくのを感じ、自分が何をしたいのかも答えられるようになってきたと思います」


中庸を行き、矛盾を昇華させるリーダーへ

プロフェッショナルに背中を預ける経験を経て、リーダーとしてステップアップした彼は、この先、Care&Med Tech部で何を実現したいのか。

Care&Med Tech部の最終ゴールは、単に人々の心身を健康にすることに留まらないと考えています。僕は、誰しもが自分の価値観に沿って生きたいように生きられる社会にしたい。その必要条件として心身の健康がある。分子や細胞から身体動作、精神までと、健康に関わる全領域を取り扱っているのもそのためです」

こうした社会を実現するには、良いプロダクトを作ることはもちろんだが、そのために医療介護従事者の人との協力は欠かせない。医療・介護業界はステークホルダーが多く、ルールも複雑だ。業界の歴史や法規制等の当たり前を理解していないと新参者では到底太刀打ちできないこともある。

これまでCare&Med Tech部は山口大学や北原病院グループとの協業を進めてきた。彼のコンサルタントのスキルが十二分に生かされた事例だろう。

プロジェクトを組成するスキルに加え、プロダクトマネージャーとしてのスキルを身につけ始め、二刀流のリーダーが見えてきた。その先、どんなリーダーを目指すのか。

「中庸な価値観を持ったリーダーでありたいです。その例としてよく渋沢栄一をあげています。

彼は東京海上日動火災保険やキリンビールなどを含む500の企業の立ちあげに関わっています。その一方ビジネスだけをやっていたかというとそうではない。今の一橋大学の前身である商法講習所を立ち上げたり、女性教育の必要性を訴え、日本女子大学の設立に携わったり学問分野でも貢献しています。1926、27年にはノーベル平和賞の候補にも選ばれています。

著書「論語と算盤」の中でも倫理と利益の両立を掲げているように、一見両立が難しそうなことのバランスを取るプロフェッショナルでした。

現実は二元論で分割できるものばかりではないし、むしろ矛盾の多いものだと思っています。そうした矛盾に向き合って、両方の良いところを昇華させ物事を推し進めていく。そんなリーダーになりたいですね

文・写真/稲生雅裕

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