Web3時代を迎えた今、社会課題解決はどうあるべきか 渡辺創太氏×石山洸
採用広報担当の佐藤です。
アドベントカレンダーのテーマである、「#社会課題解決に向けた現在地点」ということで、エクサウィザーズはどのような立ち位置にきているのかを振り返りたいと思います。エクサウィザーズには「AIを用いた社会課題解決を通じて幸せな社会を実現する」というミッションがありますが、AIに加えてWeb3が活用できる可能性があることも分かってきました。
今年8月には、取締役の大植が「Web3時代のAI戦略 社会課題解決を成長ビジネスに変える正のスパイラル」という本を出版し、Web3の未来や活用事例について紹介しています。また、10月に開催した「ExaWizards Forum 2022」というイベントでは、今話題の若手起業家で、ASTRトークンを日本で初めて上場させたAstar Networkファウンダーの渡辺創太さんをお招きし、社長の石山と対談をしていただきました。
Web3というと、まだまだとっつきにくいテーマだと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この記事を通じてWeb3の可能性について考えていただけるきっかけにしていただけたらと思います。
Web3時代、求められるのは“分権型”と“日本ナラティブ”
渡辺さんはシンガポールからオンラインで参加していただきました。
まず、石山からの1つ目の質問、「Web3は社会をどのように変え得る存在なのか」に対して、渡辺さんは「これまでのWeb2などのように大量の個人データの所有を一部の企業が独占するのではなく、分散的に個人が管理できるようにすることが求められているのでは」と述べました。
渡辺さんは、「自由な経済と言われながらも、デジタル広告の70%以上は大手テクノロジー企業が独占していて、我々は実はその中で提示された物の中から選んでいる実態がある」と指摘、Web3の特徴である各個人がデータを分散的に保有していくことが解決策のひとつになると話しました。
その上で、「欧米の後追いをするのではなく、日本ナラティブ(由来)のWeb3を作っていく必要があると思う」とも言及。日本がより先進的にWeb3の時代で活躍できるよう、日本なりにデータを活用していける仕組みを作る必要性についても触れました。
日本の成長に欠かせないグローバル市場での強み
石山は次に「日本におけるWeb3の現状と課題」について尋ねました。渡辺さんは「日本は税制の問題があり、資本力が十分ではないスタートアップ企業は戦うことが難しい状況にあるのでは」と指摘し、自らも日本より大幅に税率の低いシンガポールで事業を展開していると話しました。
一方で、「日本はIPコンテンツに大きな強みがあり、Web3ではこれらがマーケット環境の変化によりさらにグローバルでの消費が望めるようになる」と、グローバル市場での日本の強みをさらに生かしていくことを求めました。
渡辺さんは「今や日本の国家戦略のひとつにWeb3も入っているので、国内だけではなく海外からも最先端の技術を持った人たちを集めていくのがこれからの日本の成長には欠かせない」と力を込めました。
これに対して石山は、「Web3が普及し、海外から人材を確保しやすくなった状況では、日本の強みだったIPコンテンツを作る技術力などに対して競合勢力が増えていく可能性もあるのでは」と質問を重ねます。
渡辺さんは、「Web3の時代は国際競争がより顕著になっている。日本が競争に勝てるくらいの強い技術力がなければ、他の国々から下請け的に使われていくという可能性も否定できない」と答え、日本国内での更なる技術力の向上の重要性を訴えていました。
Web3が“当たり前”に使われる世界を
3つ目の質問では、石山が「渡辺創太さんの10年後はどうなっているか」と問うと、渡辺さんは「10年後がどうなっているかを話すのはとても難しいが、間違いなく最先端技術に絡んでいると思う。 Web3は10年、20年先も大きな波になる」とし、「日本が経済的な便益を得られるかが国際競争上の観点からも非常に重要だ」と指摘しました。
さらに、「Web3が当たり前に使われるような世界を作りたいと考えている。この4、5年ではブロックチェーン、Web3を社会に浸透させる取り組みをしていきたい」と話し、Web3という新しい概念の認知度向上に関わっていく考えを示しました。
石山は次いで、「他の産業では1次化、2次化、3次化を足して6次化というものがあるが、WebでもWeb1+2+3=6のように足し合わされて6次化するという補完的なものなのか、競合するものなのか伺いたい」と質問します。
渡辺さんはWeb3はWeb2を代替するものではなく、補完的な存在だという認識を示しました。 その上で、「Web3の本質は人間にとって選択肢を増やすこと。無料で使えるサービスの代償として、個人のデータの所有権を無意識のうちに企業に委託しているが、分権(非中央集権)と中央集権は極めて重要で人間にとっていいバランスを見つけていくことが必要だ」と話し、Web3の技術をうまく活用し、データの所有権を明確にしながら人間を主体とした技術力の確立が必要ではないかと訴えていました。
対談を終えて石山が思ったこと
今回対談した渡辺さんは、「各国の文化的背景によって生み出されるWeb3の価値は異なる」と予測しました。そうした国や地域ごとに個性をかけ合わせていけることは大変参考になりました。
国や地域ごとの社会課題解決はそれぞれ特徴があります。それらが進展していって、例えば超高齢社会のような課題に関しては、顕在化している国や地域があったりします。近い将来、課題が発生するような国や地域に対しては、そうした課題を解決した事例を共有するなどしていく仕組みになっていくと、世界的にもよりよいヒントが見つかるのではないかと思いました。
なお、二次創作が可能な浮世絵からラーメンまで、超多様性市場を生み出してきた日本の文化に興味がある読者の皆様には『コンテンツ産業論―混淆と伝播の日本型モデル』がおすすめいたします。
私の大学院時代の指導教官である出口弘教授らによる本で、超多様性市場を生み出した江戸時代のコンテンツ産業のエコシステムについて詳しく書かれています。今回、渡辺さんにも献本させて頂きましたが、Web3を活用した社会課題解決に興味がある日本の読者の皆様にもぜひ読んでいただければと思います。
株式会社エクサウィザーズでは、取締役の大植を中心にWeb3×AIの事業開発がスタートしています。
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