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デザイン思考 x ChatGPTによる新しい課題解決アプローチ

エクサウィザーズ デザイン部サービスデザイングループの袖山です。

この記事では「デザイン思考 x ChatGPTによる新しい課題解決アプローチ」について書いていきます。

なぜこの記事を書こうと思ったかというと、ChatGPTによりデザイン思考が大きく進化すると確信したからです。

ChatGPTの活用検討は、AIスタートアップのエクサウィザーズにとっても優先度の高いテーマであり、私が所属するデザイン部においてもクライアント向け支援プログラム「AX Sprint」へのChatGPTの活用検討を進めてきました。
AX Sprintは「デザイン思考 x AIカードの共創型ワークショッププログラム」で、AI活用を前提とする業務効率化や顧客体験改善といったさまざまな施策を具体化することができます。

AX Sprintをさらに価値あるものにするべく、ChatGPTがどんな局面で使えるのか?デザイン思考のプロセスをどう変えるのか?といった思考実験を繰り返してきましたので、この記事を通じて知見を一挙に公開していきます。

これによってビジネス現場でのデザイン思考・ChatGPT活用が少しでも前進して欲しいのと、記事を読んで少しでも興味を持っていただけた業界や企業の方には、ぜひディスカッションの機会をいただけると幸いです。


デザイン思考とChatGPTについて

釈迦に説法かもしれませんが、認識を揃えるためにデザイン思考とChatGPT・生成AIについて少し触れておきます。

#デザイン思考
デザイン思考は、ユーザー中心の問題解決に対するアプローチで、主に製品やサービスの設計に用いられてきました。しかし、最近ではそれだけにとどまらず、社会問題の解決や組織の経営改革など、より広範な領域でも活用されています。

ChatGPT

経済産業省のDX人材要件の中でもデザイン思考は中核に添えられており、すでにデザイン思考研修や現場での実践を行っている企業も多いと思います。DX銘柄の企業を中心として、新卒採用の試験にデザイン思考を課す企業も増えてきました*1。

私自身も15年前くらいにデザイン思考を知って以来、顧客戦略、ブランド戦略、マーケティング、UXデザインといったさまざまな局面で活用してきました。
数年前に受講したMIT Sloan Business SchoolのDesign Thinking講座では、事業開発におけるデザイン思考の実践を50カ国・200名を超えるさまざまなプロフェッショナルたちと一緒に学び、実際に事業開発の現場に持ち帰ってデザイン思考をフル活用しています。

ユーザー起点に考えるというデザイン思考は、今後もあらゆるビジネスのシーンで活用されていくことになると思います。

*1 https://design-thinking-test.com/cases/business/1 - VISITS Technologies Inc.

#ChatGPT・生成AI
ChatGPTは、大量のテキストデータからパターンを学び取り、その知識を基に新たなテキストを生成することができます。例えば、質問への回答を生成したり、文章を完成させたり、対話形式のテキストを生成したりします。 
生成AIは、何らかの入力から新しいコンテンツを「生成」するAIのことで、テキストだけでなく、画像、音楽、ビデオなど、あらゆる種類のデータを生成することが可能です。

ChatGPT

百聞は一見にしかずということで、ChatGPTを使って下記のように作文をさせてみました。

exaBase 生成AIによる作文

最近、野生の野良上りの保護猫を家に迎えたのですが、このChatGPTの文章によって彼の気持ちの理解が進んだ気がしました。


2023年6月時点でのChatGPTに関する事実をいくつか示します。

  • 日本企業におけるChatGPT利用率は7%、アメリカ企業の利用率は51% *1

  • 国民の認知率は68.8%で、利用率は15.4% *2

*1 ICT市場調査コンサルティングのMM総研 2023年6月
*2 株式会社学情 2023年6月

アメリカに比べると、日本はまだまだ企業内におけるChatGPT活用が遅れているというのが現状のようです。

ChatGPTを毎日1時間以上使い倒して思うのは、ChatGPTで圧倒的に仕事の効率とアウトプットの質量が上がることです。MITの研究*3によると、ChatGPTの活用により業務スピードが37% 、質が30%高まるとされています。

ChatGPTはWindows95が出現したインターネット黎明期のインターネットのようなものと捉えています。まだヒトはおっかなびっくりしながら使っていますが、今後はビジネスの現場や日常生活の中で当たり前に使うような世界線になっていくと思います。
さらにその世界線においては、ヒトとAIの協業を前提として課題解決を行う「プロンプト思考」という考え方が普及していくと思います。

*3 Experimental Evidence on the Productivity Effects of Generative Artificial Intelligence(2023.3.2, MIT)


デザイン思考によるビジネス課題解決のプロセス

デザイン思考におけるChatGPTの活用のしどころを語るために、まずはデザイン思考のプロセスについてお話しします。

デザイン思考のプロセスについてはいくつか流派がありますが、私たちが用いているのはダブルダイヤモンドです。「機会探索」と「ソリューション検討」と大きく2つのフェーズに分かれており、機会探索ではユーザーインタビューなどを通じて顧客理解とお困りごと・ニーズの探索を行い、ソリューション検討ではアイデアの発散やプロトタイピングによる検証を行います。

エクサウィザーズ作:ビジネス現場におけるデザイン思考プロセス

ところで私たちのデザイン思考は、通常のデザイン思考とは違う点があります。それはビジネスの現場で実践を意識している点です。

デザイン思考はアイデアを出して終わり、ビジネス現場のリアルな課題は解決しにくいという声が聞かれるのと、そういう捉え方になってしまう側面も理解しています。

なので私たちが使うデザイン思考には、下記のようなアレンジをしています。

  • デザイン思考の前にビジネスの問いを設定する

  • お困りごと・ニーズは妄想しない、ユーザーインタビューでちゃんと聞く

  • アイデアはAIプロトタイピングして具体的な施策として見える化する

  • ワークショップ後にROI試算といった施策評価を行う

  • 施策を実現するためのPoC計画を考える

デザイン思考のプロセスの中に、上記のような取り組みをすることで、筋の良い施策をPoC検証まで進ませることが可能です。


デザイン思考におけるChatGPTの使い所と4つの価値

私たちが重ねた思考実験をもとに、デザイン思考のダブルダイヤモンドにおけるChatGPTの使い所をまとめてみました。

ヒトとAI(ChatGPT)の協業を前提とするプロンプト思考にもとづき、デザイン思考のどのフェーズにおいてそれぞれが主担当になるのかを示しています。

エクサウィザーズのデザイン思考における、ヒトとAIの使い所

ChatGPTの具体的な使い方は次の記事で紹介しますが、ChatGPTがデザイン思考で発揮する4つの価値にまとめてみました。


1)拡張された洞察の獲得

ChatGPTを使うことで、ユーザーやお困りごと・ニーズに関する洞察を拡張することができます。

施策の質を上げたいなら、まず課題の質をあげなければいけません。
デザイン思考では、課題の質を上げるためにユーザーインタビューを通じてリアルなユーザー像やお困りごと・ニーズを把握しますが、最初の目付けができていないとユーザーインタビュー設計の精度が下がります。

ChatGPTを使うことで、特定業界や業務、対峙している典型的な顧客や抱えているお困りごと・ニーズを数秒で把握することができます。ヒトが気づかない視点を補完してくれるため、抜け漏れなく洞察を拡張するためのツールとして、私はすでに手放せなくなっています。


2)アイデアの発展

言わずもがな、アイデアを発展させるためのツールとしてもChatGPTは活用できます。

ChatGPTは多様な分野にわたる広大な知識データを利用して、アイデアを大量に出してくれます。ChatGPTが出すアイデアはA+B=ABの域を出ないのですが、他業界でのユースケースを引用してきたりするので、意外と新しそうなアイデアも出してきます。

A+B=Cを生み出すSynthesis思考は、ヒトが発揮する価値なので、アイデア発想においてはヒトがまず自分の頭と直感でアイデアを出しつつ、ChatGPTにサポートしながらアイデアを抜け漏れなくさまざまな観点から出していくための補助ツールとして使うと、ヒトとAIの価値が最大限引き出せそうです。


3)公平な評価と優先順位付け

ChatGPTを使えば、属人的で偏りのあるアイデア評価から抜け出すことが可能です。

デザイン思考WSでのアイデア評価は、例え評価軸を定めていても属人的になってしまうという問題があります。ChatGPTを使うことで公正な評価を行うことができるようになります。

もちろんChatGPTの思考はブラックボックスであり、評価がプロンプトの精度にも左右されてしまうという課題もあります。しかしながら、評価の論拠を出せと言えばChatGPTは算定ロジックを開示してくれますし、ヒトが集まって鉛筆を舐めながら打算も込めて行う評価よりも、公平な評価をしてくれると思います。


4)プロトタイピングの精度・効率性アップ

ChatGPTを使えば、デザイン思考でアイデア検証で行われるプロトタイピングの精度・効率性が向上します。

特に私たちが提供する「AX Sprint」では「ソリューション検討」の終盤で「AIプロトタイピング」を行うのですが、ChatGPTを使うことで、施策を具体的に実行するために必要なデータや、そのデータの取集方法などについても、効率的に知ることができるようになりました。

デザイン思考ではプロトタイプの検討粒度が甘かったり、PoCに移行するための必要な検討ができていないため結局ワークショップをやって終わりといった課題が散見されますが、ChatGPTの登場により出した施策の実現性を高めるための検討が可能になったといえます。

AIプロトタイピングの一例
Pythonコードのサンプル

デザイン思考 x ChatGPTで、ビジネス成果が出やすくなる

デザイン思考をビジネスの現場で実践し、成果を出すためにはさまざまな障壁がありました。

予算が限られるためユーザーインタビューができなかったり、妄想ベースで行うワークショップをせざるを得なかったり、出てきたアイデアでどれが筋良しなのかが公平に評価できていなかったり。

ChatGPTはそんなボトルネックをほぼ解消してしまうパワーを秘めています。

詳しくは次の記事で紹介しますが、ChatGPTがあれば上に挙げた課題は解決してしまいますし、私が行った思考実験では3ヶ月かけて行うデザイン思考によるビジネス課題解決〜PoC計画の策定までというプロジェクトが、1時間ほどで完了してしまいました。

4つの価値で触れたように、デザイン思考のプロセスが圧倒的に短縮され、結果としてビジネス成果が出やすくなるのは間違いないと思います。


まとめ

以上が、ChatGPTがデザイン思考で発揮する価値についての考察でした。
デザイン思考のプロセスが進化しますし、ビジネス成果も出やすくなると思います。

ところで、ChatGPTを使えば使うほど「ヒトの価値とは?」という問いを自問するようになりました。この問いに対する回答は「A+B = ABC」なのですが、これについては以降の記事で折を触れて解説していきたいと思います。

また私たちが提供する「AX Sprint」について、サービス資料などを見てみたいという方は下記のURLから資料ダウンロードを行っていただけると幸いです。

資料ダウンロードはこちら
https://design.exawizards.com/service-axsprint


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