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“仕組み”で事業性と社会性の両立を目指す。エクサウィザーズPdM 小俣剛貴

「事業の種となるビッグアイデアにつながる、的外れかもしれない一歩を、もっと多くのメンバーが踏み出す仕組みを作りたい。そして、社会性と事業性が両立した事業をたくさん作っていきたいと思っています」

「エクサウィザーズ」で活躍する“ウィザーズ”たちを紹介するストーリー。

今回は、エクサウィザーズでプロダクトマネージャー(PdM)を務める小俣剛貴さんが登場します。

インタビュー時、小俣さんの口から何度も飛び出していたのは「社会性」という言葉。プロダクトづくりにおいて、事業性だけでなく「社会性」を意識し続ける理由とは何か?話を伺いました。

■ プロフィール

小俣 剛貴(おまた・ごうき)

エクサウィザーズで新規プロダクトを創出するインキュベーショングループのリーダー。
立ち上げ期のフラー、ライフネット生命、インクルージョンジャパン、Pivotal Labsを経て現職。マーケティングとプロダクトマネジメントを中心にキャリアを歩む。
慶應義塾大学商学部卒、This is Lean(翔泳社)監訳。

大学時代に衝撃を受けた、事業性と社会性の両立を模索する上司の背中

「うちの父は、ちょっと変わっていまして…(笑)」

これまでテクノロジーを用いて社会をより良くする、という軸で働く場所を選んできた小俣さん。「テクノロジーに興味を持ったきっかけは?」という質問に対して、最初に飛び出したのは小俣さんの父親の話だった。

「父は大胆な人なんです。例えば、ある日、宿泊先がなくて困っていた外国人と出会い、『じゃあおいでよ!』と家に一晩泊めてしまうくらい。その外国の方がテクノロジーにくわしくて、僕にインターネットやPhotoshopの使い方を教えてくれました」

なんとなくしか知らなかったインターネットの世界が一気に広がり、小俣少年は夢中でプログラミングやデザインを勉強した。

「テクノロジーをメインの手段とした仕事がしたい」。そんな思いを持ちはじめた大学生の頃、小俣さんは人生においてもう一つの軸となる「社会性」にという概念に出会う。その端緒を作ったのが、大学生時代にマイクロソフトでの仕事で出会った上司である石坂誠さんだった。

「石坂さんは、マイクロソフトという大きな器を使って世の中をどう良くしていくかを考え続けている人でした。当時はAWSなどのクラウド製品が次々に誕生していた頃。彼は『この事業によって本当に世の中は良くなるのか?』を常に考えながらも突き進んでいました。石坂さんと出会ったおかげで、事業を経済的な観点だけで成功させるのではなく、社会性と両立させる姿勢で仕事ができるのだと知りました」

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こういうマインドセットで仕事がしていきたい。

そう考えた小俣さんは、悩んだ挙句、内定先だったソーシャルゲームのITベンチャーへの入社を辞退し、知人が立ち上げたスタートアップへ入社する。理由は「自分の考える社会性の高い事業を、ゼロから立ち上げてみたかったから」。

とはいえ、立ち上げたばかりのベンチャー。売り上げの立つ事業を作ること自体も困難だった。スクラップ&ビルドを繰り返す中でたどり着いたのが、Androidのアプリ管理を通じて、バッテリーを長持ちさせるツールだ。当時のAndroidは充電の消費が早く「バッテリーを長持ちさせるアプリ」のニーズが高かったのだ。

ツールから得たスマホ上での行動履歴を、マーケティングデータとして活用することも考えると事業化できるのではないか。

その目論見は見事に当たり、リリース後すぐに10万、最終的にはシリーズ100万ダウンロードを超えるプロダクトに成長した。スマホ上でのアプリ使用履歴も、短時間かつ1度に大量のデータを送れるようになった。営業先として主力だったソーシャルゲーム会社にも好評だった。「これならいける」と誰もが思い始めたころ、小俣さんはふと初心に帰る。

「あれれってなったんですよね。勢いもあり楽しかったのですが、頭の片隅で『これが本当に社会のためになるのか?』と思い始めたんです。事業性と社会性の両立を感じられる仕事がしたいと思い、転職することに決めたんです」

歴史ある産業の仕組みを変える難しさ

次に選んだのは、ライフネット生命。市場規模が兆単位に及ぶ「保険業界」において、ネットを主軸とした保険会社として一石を投じた企業だ。従来の保険の仕組みでは救いきれない人や非効率な制度をテクノロジーの力で変えていこうとする姿勢に強く惹かれた。決め手となったのは、会長である出口さんの大切にする「世界経営計画のサブシステム」という考えだった。

「事業とは、人類にとってよりよい社会にするためのサブシステムであるべきという考え方です。日本では、少子高齢化とともに給与が上がりにくくなる一方で社会保障の負担が増えていくことは目に見えています。そこでライフネット生命は、現役世代の負担を減らすため、低い保険料でのプランを作りました。こうした手段を通じて現役世代は安価で充実した保険に入りながらも、経済的な負担を軽くでき、中には、子どもを諦めなくてすむ人も出てきます。今でこそSDGsという言葉にまとめられていますが、そこに含まれる1つの目標に向けて、ライフネット生命はすでに始めていたんですよね」

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「世の中を良くする事業ができる」と意気込む小俣さん。入社後はライフネット生命のサイトやアプリのUI整備、より利用者を増やすためにWeb広告づくりも担当。その後、小俣さんは同僚が立ち上げたベンチャーキャピタルファンドであるICJへ転職し、VCをしながらコンサルティングや広報をしていた。

そして小俣さんが保険業界に大きな変化を起こすプロジェクトを手掛けたのは、ライフネット生命から声をかけられ再び同社に戻った時。担当することになったのは、同性愛者向けの生命保険事業だった。

小俣さんが担当することになったのは、同性のパートナーがいる性的少数者向けの生命保険事業だった。

性的少数者向けの生命保険プロジェクトで学んだ「大きな変化がもたらすもの」

「性的少数者は、法的に婚姻関係が認められていません。そのため、法律上は他人となるので、死亡保険に入れないんです。もしパートナーが亡くなったら経済的に不安定になってしまうリスクがあった。そこで、同居期間など一定の条件のもと死亡保険を受け取れる仕組みをつくりました」

発表後、多くの反響が寄せられた。一方、保険の契約数は思うように伸びなかった。というのも、当事者らにとって「死亡保険は自分たちは対象にならない」という認識があり、そもそも保険の存在を知ってもらうために時間を要したからだ。

また、小俣さんのもとには賛同の声だけでなく「今までのやり方でよかったのに」といった抗議の声も届いた。

「性的少数者向けの死亡保険は、多くのステークホルダーを巻き込み、当事者のリアリティや変化を感じられた体験でした。逆に今までの枠組みで満足していた人たちに反対されることもあると知り『変化を起こすとはこういうことなんだな』と深い学びにもなった事業でしたね」

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1年間、性的少数者向けの保険の仕組みを作り、浸透させるために走り続けてきたが、事業がさらに伸びるためには、性的少数者関連の市場が育つのを待つしかなかった。

次は何をしようか。

そこで小俣さんの頭に浮かんだのが、プロダクトマネージャー(PdM)だった。

PdMとして、プロダクトがクリエイティブに生まれる仕組みを作る

スタートアップ時代から自分の役割を規定しすぎず働いてきた中で、共通して小俣さんの中にあったのは「作り手でいたい」と「事業を推進したい」という二つの思い。そこに加えて、テクノロジーにも携われる役割を探す中で出会ったのが、PdMだった。

「ちょうど事業の相談をしていた友人からPdMという役割があると聞き『これだ!』となりましたね」

その友人に誘われ、PaaSプラットフォームとリーン・アジャイルチームのコンサルティングを提供するPivotalへジョイン。

ここで目の当たりにしたのは、コミュニケーションによる行き違いなく仕事にフォーカスできるエンジニア文化だった。例えば、社内用のメールドレスに依頼や質問を投げると担当者にディスパッチされて、すぐに対応してもらえる。仕事で必要なものがあればメールだけ打っておけば翌日には届いていて、稟議や精算もいらない。徹底的に本質的な価値を生む仕事にフォーカスできる体制に衝撃を受けた。

「徹底されたオペレーションはもちろん、一緒に働く全社員が同期的に動ける風土が整っていたこともよかったです。PdMとエンジニアがペアで動いているためフォードバックも早いし、すぐに話し合えるからブロッカーも起きにくい。コミュニケーションの仕組みを整えると、こんなにも人のクリエイティビティが発揮されるのか、と思いました」

Pivotalではクライアントの組織変容を促すPivotal Labのメンバーとしてエンタープライズ企業向けに外部からアプローチするポジションで、アジャイル開発などを導入していった。

外部から働きかけて、社会性の高いアイデアを事業へと落とし込んでいくPivotalでの仕事にはやりがいを感じていたが、予期せぬ形で転職をすることになる。経営判断から他社への売却が決まったのだ。今のようにスピード感を持って働きたい。そんな思いを抱え飛び込んだのが、エクサウィザーズだった。

「今の自分なら貢献できる」。一度は辞退したエクサウィザーズの門を叩いた思い

「実はエクサウィザーズ代表の石山さんとはICJ時代に一度出会っていました。以前にも『一緒に働かないか?』と誘っていただいていたのですが、当時は「貢献できることが少なそう」と感じて辞退していたんです」

小俣さんが再びエクサウィザーズに入ることになったのは、AIに関する独自のニュースを配信する「AI新聞」編集長の湯川さん。彼とは大学時代からの知り合いで、アメリカの大学へRecruit Institute of Technologyのアドバイザー取材のために一緒に出張したこともあった。

「改めて考えてみると、石山さんや湯川さんのようなプロフェッショナルメンバーに囲まれてプロダクト作りができる環境は、なかなかありません。

それに、ライフネット生命での同性愛者向け保険やPivotalで新たに得た経験を、エクサウィザーズで活かせそうだと思ったんですよね。何より、エクサウィザーズ自体が社会へポジティブなインパクトをもたらす事業をしているところがいいなと感じました」

もちろん、大企業で「世の中を良くする事業」をする選択肢もあった。けれど、自分が事業の立ち上げに関わっているという手触り感があることに惹かれたという。

エクサウィザーズへ入社後は、プロダクトマネジメントチームに参加。各チームのプロダクト企画に携わりつつ、全社横断のプロジェクトも企画している。その一つが「1→100プロジェクト」だ。

「1→100プロジェクト」とは「既存プロダクトを今の100倍成長させるには?」という問いの元、部署混合でイノベーションの種を見つけるために行ったプロジェクト。リモート下でも、イノベーションが起きる機会を増やす狙いで行われた。

「イノベーティブなアイデアって、発散的な会話から生まれることが多いじゃないですか。コロナの影響で減ってしまった雑談から生まれたアイデアをいかに再び作り出すかというチャレンジでした。実際に経営陣にプレゼンできるようなアイデアも生まれました」

「事業性と社会性を両立させたプロダクト」への第一歩を踏み出すために

小俣さんは「大きな事業性と社会へのインパクトを両立する」というチャレンジに、既存の仕組みを捉え直すことで向き合ってきた。小俣さんから見てエクサウィザーズの中で、一番の面白い”仕組み”について問うと、「石山さんと春田さん」という回答が返ってきた。

「エクサウィザーズで事業を立ち上げる上で、石山さんと春田さんは乗り越えなければならない壁でもあり強力な味方でもある。視座が低い事業案は、跳ね返されてしまう。だからこそ石山さんと春田さんから見た社会課題の大枠を意識しつつ、僕らは普段の生活から得た気づきを事業に落とし込んでいく。彼らを納得させ、社会を良くする事業を生み出す工程は、大変だけど鍛えられます」

近年ではSDGsやESGのように、社会にポジティブな影響を及ぼす事業が評価され、投資対象になる傾向が強い。当然、エクサウィザーズも営利企業としての事業性や社会性がより問われることになる。つまり、エクサウィザーズでPdMとして事業を作ることは、外に出ても役に立つ経験として血肉となる。

それでは、事業を作る上で最も大切なことは何か。その問いに対し、小俣さんは「ビジョンです」と言い切りつつ、「ビジョンさえ明確であれば、一歩目は的外れでもいい」と続ける。

「社会を変えるプロダクトを作るには、多くのステークホルダーを巻き込むために『ビジョン』を語れなくちゃいけない。その点、エクサウィザーズにはさまざまなスキルを持つメンバーがいるので、ビジョンさえあれば一緒に進めてくれる。だからこそ今のエクサウィザーズに必要なのが、ビッグアイデアを生む仕組みです。

ビッグアイデアを生む過程では、思わぬジャンプがあります。だから『これをやればいい』と言ったものがない。Appleのような大企業でも、社会を大きく変えるプロダクトの第一歩は本来の目的とあまり関係ないところだったりします。

アイデアを事業にする仕組みは整いつつあります。だからこそ、種となるビッグアイデアにつながる的外れかもしれない一歩をもっと多くのメンバーが踏み出す仕組みを作りたい。そして、社会性と事業性が両立した事業をたくさん作っていきたいと思っています」


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エクサウィザーズ では一緒に働く人を募集しています。興味のある方は是非ご応募ください!

小俣さんと話してみたい方はこちらからご連絡下さい:

(撮影の時のみマスクを外しています)

文:福岡夏樹 編集 / 写真:稲生雅裕


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