「日本と海外の架け橋」を目指す元ゴールドマン・サックスのVPが、次なる挑戦の場にエクサウィザーズを選んだ理由
「まだ250名ほどの若い組織をどこまでレバレッジさせられるか。自分にとってはこれまでにない挑戦ですし、今しかできないと思ったんです」
エクサウィザーズで活躍する”ウィザーズたち”を紹介するストーリー。
今回は「日本と海外の架け橋に」という思いの元、約13年にわたりゴールドマン・サックスで働いてきた河井さんです。
同社では、国内外のテクノロジー業界の多数のM&A案件をはじめ、株式上場を含む資金調達の助言業務に取り組んできました。
「日本企業を強くする」という思いはどのように培われていったのか。「日本と海外の架け橋」であり続ける次の舞台として、なぜエクサウィザーズを選んだのか。
アイデンティティを問う中で見つけた「日本と世界の架け橋」という役割
「よろしくお願いします」
落ち着いた声で会社の会議室に入ってきた河井さん。長袖のTシャツにデニム、黒いリュックの姿は、金融業界の雄、ゴールドマン・サックスで働いていたとは良い意味で思えない親しみやすさがあった。だが、一度話し始めると、言葉を選びながらも、一つひとつの意思決定を深い思考とともに行ってきたんだ、と感じる。
河井さんは、これまでに10件以上の国内外の名だたる企業のM&A案件をはじめ、株式上場を含む資金調達の助言業務を、テクノロジー業界を主として幅広い業種に対して行ってきた。
「日本と海外の架け橋となって、日本企業のグローバル・プレゼンスをより高め、強くしたい。そんな思いからゴールドマン・サックスの門を叩きました」
日本企業に対する強い思いは、彼の生い立ちが関係している。日本人とタイ人のご両親のもとに生まれた河井さん。父の仕事の関係で海外転勤が多く、日本と海外で聞く日本のイメージのギャップを耳にしながら育った。
「祖母からは、よくグローバルにおける日本の経済大国としての存在感の強さを聞かされて育ちました。一方、中高時代の多くを過ごしたアメリカのケンタッキー州では、日本人は圧倒的マイノリティ。日本と中国が同じ国だと思っている人もいました。自分の発言が、ともすると『日本代表』のように受け取られる可能性もあります。日本に対しての二つの視点があったことで、『自分は日本人として何が出来るんだろう』という意識を強く持つようになりました」
高校2年生からは上海のアメリカンスクールに通い、日本に戻ることなく、アメリカの大学に進学した。日本と海外の架け橋になる、という視点から経営と会計の二つを専攻。さらに副専攻で金融と中国語にも取り組んだ。一般的には5年かけて卒業するところを、4年で卒業。常にチャレンジをし続ける価値観の背景には、父親の存在があった。
「昔から父に『自分を超えろ』と言われて育てられました。それが結果的にチャレンジングな環境を選択することにつながったのでしょう。ゴールドマン・サックスを選んだのもそうです。日本と海外の架け橋となれるグローバルNo.1の実績が備わった環境下で、若いうちから数千億円~兆円規模の意思決定を経営層と頭を付き合わせて行える場所は他にないと思いました」
プロフェッショナリズムを再認識した上司の言葉
高い志とストイックな意思を持って入社したゴールドマン・サックス。これまでの経験をなぞる限り、さぞ最初から活躍をしてきたのだろうと思い質問すると「全くそんなことはなかったですよ」と苦笑する。
「1年目にアサインされたとある案件で、重大なミスを犯してしまったことがあります。幸いクライアントへの報告の前に見つかったので、大事にはなりませんでした。
ただ、当時の上司に『なぜこのミスが起きてしまったのか』と聞かれた時に、情けないながら『本当にわからないんです』と答えるしかなかったんです。自分のプロとしての意識の甘さはもとより、知識も経験も足りなくて、何がわからないのかもわからない状態でした。
すると、その上司から『お前はこの仕事に向いていない、今すぐ辞めろ』と一喝されました。その一言が本当に泣きそうなくらい悔しかった。同時に約5万人規模の企業統合の命運を背負って、プロとして少数精鋭のチームで働く姿勢について改めて考えさせられました」
この一件以来、「倒れるとしても前のめりで」のマインドで仕事に取り組むようになっていく。自分よりも一回り、二回り以上歳の離れた相手とも対等にわたり合えるよう、入念かつ地道な準備を徹底し、プロフェッショナリズムを磨いていった。
日本企業への危機感と可能性
日本企業を強くしたい、という思いで様々なM&A案件に携わっていく中で、河井さんは自らの視点を揺さぶるプロジェクトにアサインされる。それは、とある外資系企業へ日本企業の事業の一部を売却するもの。河井さんは外資系企業側のフロントを任されていた。
「正直、日本企業に対して危機感を覚えました。私が担当した外資企業は各国拠点からトップを集め、あらゆる視点から『日本のこの事業を買ったらどうなるか』を真剣に議論していました。わずか数時間の滞在のために来日する幹部もいて、ロジカルで意思決定スピードも圧倒的に早い。それに対して、売却する立場の日本企業側は、面子や体裁ばかりに重きが置かれていたように感じられました。日本の伝統的な大企業が事業売却に不慣れであることは理解しつつも、企業価値に対する当事者意識が欠如した経営陣のもとで、グローバルな競合に対峙できるのか、不安を抱きました」
もしかしたら、外資主導で日本企業の再編や淘汰が行われた方がいいのではないか。長い目で見たらそれが合理的で、日本に活気を生み出すのではないか。そう思ったこともあったという。
そんな河井さんが再び日本企業の可能性を見出したのは、2015年から担当し始めた、あるメガベンチャーだった。
「一人ひとりが責任感の塊で、驚きました。何をしたら企業価値に反映されるのか。事業の価値が市場に正しく評価されるためにはどうしたらいいのか。そんな姿勢で働く人ばかりでした」
河井さんは当時を懐かしそうに振り返る。創業約60年、数万人規模ながらベンチャーマインド溢れる企業、リクルートホールディングスこそがその企業だった。当初は複合的な広告・インターネット企業というイメージしかなかったそうだが、経営陣や各部署の担当者と話す中で、そのイメージはどんどんと変わっていった。
「本当にエネルギッシュな人が多くて、一人ひとりが高いオーナーシップを持ち、テクノロジーを基盤に、有機的に組織が成長していることも魅力的でした。今後もずっとこういう人たちと仕事をしていきたい、と思いましたし、日本企業もまだまだ可能性があると再び前を向くことができました」
その他にも、半導体製造装置や物流業界の大手企業クライアントを始め、いわゆる「成長・革新マインドを高く持った大企業」との出会いは、河井さんの中で大きな財産になっていった。
情熱を持ち挑戦できる、次の「架け橋」を探して
今、自分自身が一番やりたいことは何だろう。
リクルートをはじめとした事業会社の中にいる熱量の高い人たちの存在は、河井さんのキャリア観に確実に変化を与えていた。
自分がやっていることは確かに楽しいし魅力的だ。職位もVPまで上がった。一方で、大体どんな課題が来ても、対応策は考えられるようになり、自分の成長のキャパシティが狭くなっている感覚もあった。社外で活躍するゴールドマン・サックスの卒業生を目にする機会も増えた。
「『石の上には10年』くらいの気持ちで仕事に望んで、気づけば12年超。多くの方の支えがあり、ここまで来れました。これまではクライアントのやりたいことに向き合ってきました。でも、改めて自分が情熱を捧げることは何かと問われると、すぐに答えは出ませんでした」
日本と世界の架け橋となるために、次の情熱を注げる環境探しが始まった。ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ、国内外の大手企業、スタートアップなど、複数の選択肢がよぎる。本当にたくさんの人たちに出会い、数珠つなぎ的に人を紹介してもらう中で出会ったのが、エクサウィザーズの会長、春田さんだった。
「一番最初にお話を伺った時、社会課題解決という領域は興味深いなと思いました。一方、つい数字目線で見てしまうこともあり、どのくらい財務的に立ち上がっているのか、投資家目線で気になる部分もありました。でも、何度か話を聞いていくうちに、徐々に興味を持ち始めました」
2020年1月、社長の石山さんに話を聞きに行ったことを皮切りに、入社に至るまで計10回。春田さんとは4回、加えて取締役の大植さんとも2回ほど話し、ひたすら自分とエクサウィザーズの目線があっているかをすり合わせていった。投資家目線で見た際のリスク・シナリオに対しても、納得できる答えが返ってくることが多く、河井さんの気持ちは次第にエクサウィザーズへと傾いていく。
「例えば、どのようにAIの技術力の高さを担保しているのか、今エクサウィザーズには外国籍の優秀なエンジニアが多くいるが、米国新政権のもとで高知識層の移民を積極的に受け入れるようになったらどう対応するのか。中国の膨大なデータ量と勢いにどう対抗するのかといったグローバルの競合を視野に入れた質問にも、納得感のある解答がありました。
同時に、これまで懇意にさせていただいた様々な業界幹部から、折に触れて『実は大型買収よりも、蓄積データを活用した革新的な事業を作りたい。但し高次元でそれをやれる人材がいないし、買える会社もない』と、相談を受けていたことも思い出しました。
様々な産業課題に対峙するエクサウィザーズのAIプラットフォーム事業の現状や将来性についても深く確認し、高い成長性と、言葉では言い表せないご縁を感じました」
エクサウィザーズ参画の決め手は、一番「ワクワク」したから
春田さんとの最初の出会いから3ヶ月半、ついに河井さんはエクサウィザーズへの参画を決める。その背景には、当然組織としての成長性もあった。特に河井さんの目に魅力的に映ったのは、あらゆる面で”両利き”であることだ。
「エクサウィザーズは、医療や介護の領域など、今後より向き合わなければならない社会課題を視野に入れつつ、足元でもDXをはじめとした企業の課題に取り組んでいる。取引する一流企業クライアント数や、産業の裾野もどんどん増えています。例えば、ゴールドマン・サックスで担当していた物流業界の大手クライアントに対して、グローバル・レベルで重要性の高い産業課題にもAIプラットフォームを提供し始めていました。
財務的な視点においても、近年の売上高の成長率、上位顧客の平均契約単価や、継続率、粗利益の水準にも目を見張るものがあります。
総じて、アカデミック領域に国内外の強いネットワークを有しながら、高いビジネスマインドも持ち合わせている。この人材の布陣と、バランス感覚を持って事業展開すれば、将来益々すごくなるな、と」
成長可能性の高さを感じたと言えども、河井さんの経歴であれば、引く手数多で、選択肢も多かったはずだ。一体どうしてエクサウィザーズに、とさらに踏み込んで聞くと、「一番ワクワクしたんですよね」という答えが返ってきた。
「今回の転職では、『ワクワク感』を一番大事にしていたんです。これまでは、鍛錬というか、常にハイプレッシャーがかかる環境に身を置いてきました。もちろん、エクサウィザーズでも良い意味でプレッシャーを感じていますが、一番ワクワクしたんですよね。
これからのスケールアップ × エンゲージメント向上を通じて、事業拡大という観点では何倍、何十倍にもなっていく可能性がある組織ではないかと。まだ黎明期にあるAIの利活用と、250名ほどの若い組織をどこまでレバレッジさせられるか、自分にとってはこれまでにない挑戦ですし、今しかできないと思ったんです」
目指すは、日本発、次世代の産業・社会課題に対峙するAIプラットフォームやAIプロダクトの拡大・浸透
2021年の4月に入社したばかりの河井さん。今後、ゴールドマン・サックスでの経験を活かし、企業価値を高めるために奮闘する予定だ。そんな“新入社員”にとってエクサウィザーズはどんな会社だと感じられるのか。
「とにかく一人ひとりが優秀。学習と実行のサイクルが速く、前向きな人が多い会社だなと思います。例えば、1週間前にアドバイスしたことが、すぐに組織のアジェンダに加えられている。この前行った半期全社会でも、自分の言ったことが組織戦略に反映されていて驚きました。
あと、オープンでフラットですよね。バックグラウンドの多様性を認め、年齢や役職関係なく交流している。オンライン歓迎会をしていただいた時にそう感じました。温かい組織だなと」
そう言いながら顔をほころばせる河井さん。彼のエクサウィザーズでの挑戦はまだ始まったばかりだ。今後どんなことを成し遂げていきたいと考えているのだろう。
「エクサウィザーズで手掛けている産業・企業向けのAIプラットフォームや、様々な社会課題に対峙するAIプロダクトを、新しい社会基盤インフラとしてどんどん実装したいですね。
エクサウィザーズがやりたいことは、そのスケール感にならないと実現できないと思っています。高い成長性と共に、有言実行できる組織だという信頼感を得て、資本市場からの評価を上げていくのもその手段の一つ。そうすればその先で、より大きなことが実現可能になる。
外から冷静に見れば『AIの利活用を通じた産業・社会課題の解決なんて、本当にできるの? そもそもAIとは?』と思われている節はあると思います。だからこそ、エクサウィザーズのCredoのひとつである”Above and Beyond Expectations”の継続と、そこに至るまでの入念で地味ながらも、徹底した準備や努力が肝要だと思います。
まずは、日本で価値を発揮して、しっかり信頼される企業となり、将来的には他の諸外国が迎える様々な産業・社会課題解決の知見を有する、強固なAI技術力と、盤石な組織作りに貢献したいですね」
数字とはあくまで手段であり、過程だ。金融業界の最前線に身を置き続けていたからこそ、その言葉には重みがある。ワクワクを原動力に、河井さんの新しい挑戦が始まった。
文・写真 / 稲生雅裕
(撮影の時のみマスクを外しています)
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