「個性に良いも、悪いもない」IBMを経て挑む、個のクリエイティビティが活きる社会
「それぞれの個性に良いも悪いもないんです。自分の属性を隠さなくていいし、オープンであるがゆえにお互いを自然と知っていける。そんな会社にしていけたらなと思います」
「エクサウィザーズ」で活躍する”ウィザーズたち”を紹介するストーリー。
今回ご紹介する永瀬さんは、2020年1月、IBMからエクサウィザーズに移り、PM(プロジェクトマネージャー)、RobotTechのEM(エンジニアリングマネージャー)、BizDevなどさまざまな業務を経験してきました。多様性の高い組織づくりを推進するDiversity&Inclusionチーム(以下:D&Iチーム)にも所属しています。
「唯一絶対の正解はない」という永瀬さんの価値観はどのように築かれ、現在の業務に活かされているのでしょうか。
海外生活、言語学、ファッション……自然と身についた「当たり前を疑う」姿勢
ーー大学では言語学を専攻されたそうですね。
言語学から得た一番の学びは、「言語に正解も間違いもない」ということ。例えば、「全然ある」という言葉は、文法上は間違いとされてきました。でも、こうした新しい表現を、言語学の観点では進化と捉えます。一般的には「間違い」と言われることでも、見方を変えると、必ずしもそうとは言えないんです。
ーー言語学を通じて、常識を疑う姿勢を身につけたのですね。
そうですね。それは、長かった海外生活の影響もあるかもしれません。家族や学校、コミュニティなどで、それぞれの人たちが主張する「こうあるべき」は、全て異なっていました。多様な人たちに囲まれて生活してきた経験が積み重なり、現在の価値観が形成されたのだと思います。
ーー大学時代はダブルスクールで専門学校にも通い、服飾デザインの勉強をされていたと聞きました。
アメリカで個性的なファッションをしていた友人の影響を受けて、興味を持ちました。特に、「服づくりの正解は目的によって変わる」と知れたのが面白かったですね。
使い勝手なのか、造形美なのか、芸術表現なのか、何をデザインしたいかによって、生まれる服は当然異なる。そして、どれを選んでも本人の表現の自由なんだと。
結局ファッションの道には進みませんでしたが、「何をゴールにするのかは、自由に決めていい」という学びを得られたのは、大きかったですね。
相手と同じ目線に立ち、「難しそう」を「面白そう」に翻訳
ーー新卒でIBMに入社した背景を教えてください。
言語学を専攻していた関係で、以前から自然言語処理の技術に注目していました。この技術を活用するために、AIを扱う会社に入ろうと考えたんです。
私が就職活動をしていた頃は、今ほどAIが注目されている時代ではありませんでしたが、IBMは時代に先駆けてAIを利活用したWatsonを開発していました。「自分もWatsonに関わって、AIで実現できる世界を最前線で見れる場所で働きたい」と思ったのが、入社のきっかけです。
IBMでは運良く希望の部署に配属され、業務改革コンサルタントとして、Watsonを用いたソフトウェアの導入をサポートしてきました。IBMの業務はどれも非常に面白かったですね。
ーー特にどのような点に面白さを感じていましたか?
最先端技術の実装とお客様の課題解決の架け橋となり、一見難しい技術の話に興味を持っていただくためのコミュニケーションですね。
ドラえもんやナイトライダーなどSFの世界を事例に上げつつ、「そういった世界が実現できるとしたら、御社の事業はこうなってそうですね」、「そうした場合はうちの技術はこんな風に力になれそうです」と一緒にワクワクできるにはどうしたら良いかを考えていました。もちろん、期待値をあげすぎたり、風呂敷を広げすぎると良くないので、その塩梅は気をつけていましたが。
そうした過程を経て、自動運転や生体デバイス、ブロックチェーンなど、他の技術も掛け合わせた検証をしたり、新しい技術が広がっていく過程を見られるのは面白かったです。
ーー学生の時に培われた「相手の立場に立つ」姿勢が活かされたのかもしれないですね。充実したIBM時代だったように見受けられますが、なぜ転職を考えたのでしょうか?
IBMへの不満は全くなかったのですが、時代の流れや自分の今後のキャリアを考えて、転職を判断しました。
IBMでは数年PoCを中心に実施していましたが、近年はようやくAIが実用化されつつあり、AIを使った事業もどんどん立ち上がり始めています。
それを踏まえると、新規事業の立ち上げだけを支援するのではなく、企業と一緒に事業計画を一緒に書ける人材が求められるはずだと考え、そのために必要なキャリアを身につけようと思いました。
ーーAIを扱う会社は他にもたくさんありますが、エクサウィザーズを選んだ決め手を教えてください。
大きく分けると三つ理由があります。一つ目は事業領域の側面。AIを扱う会社は、ある特定の領域にフォーカスした事業を行なっているケースが多いのですが、エクサウィザーズは医療や介護、金融、ロボットなど、かなり幅広い領域で事業を展開しています。これまでIBMではさまざまな技術に触れてきたので、領域を特定しないエクサウィザーズのほうが私に合っているのではないかと考えました。
二つ目はミッションが魅力的だったこと。「社会課題の解決」というある種、青臭いテーマを、ビジネスの場で臆面もなく言えてしまう企業姿勢が、すごく好きだなと感じました。
三つ目は面接での会話。好きなことややりたいことを話している中で、「やれるよ」って言われたんです。「できるよ」じゃなくて。「できる・できない」ではなく、「やれる」前提で話が進んでいくのが、スタートアップらしくもあり、面白いなと思いました。
「正解がない」からこそ、どんな立場も許容する。多様性の高い組織だからこそ得られた学び
ーーエクサウィザーズに入って約一年半。プロダクトマネジャーやエンジニアリングマネジャーなど、主にコミュニケーションを通じて事業を前に進てきたと思いますが、どのような点で成長できたと感じますか?
これまでも、「絶対の正解はない」と思って人と接してきたのですが、多様性に富んだエクサウィザーズのメンバーと接する中で、より一層、相手の立場に立つ意識が強くなりました。
IBMにいたときは意識しなかったのですが、外に出てみると、その会社で期待されるコミュニケーションが暗黙の了解としてあったと気付いたんです。エクサウィザーズはまだ暗黙の了解があるわけではありません。
例えば、伝えるべきことは明文化するべきという考えの方もいれば、察するべきだと考える方もいる。そんな中で自分はどう振る舞うべきか、常に試行錯誤してきました。
ーー具体的にはどのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか?
前提として「あなたに敵意がない」という姿勢を持つこと。あなたを理解したいと思っているし、力になれるならなりたい。そういう気持ちがあるんだと伝えて、相手の話をじっくり聴きます。
私は、人間同士の好き嫌いと、理解し合えるかどうかは全く別の話だと捉えています。前者はどうしようもないかもしれませんが、後者に関しては、大抵の場合は話し合えば解消すると信じています。
ーー「正解がない」からこそ、一人ひとりと対話する姿勢を大切にしているのですね。他に成長したと感じる点はありますか?
組織全体を俯瞰する力が身についたと思います。IBMでは、あらゆる仕組みが整っていたので、例えば、契約書の作成プロセスがベストなのかそうじゃないのかを意識することもありませんでした。
一方、エクサウィザーズでは、様々な仕組みを整えている真っ只中。私もバックオフィスのメンバーと協力しながら、仕組みづくりに携わることもあります。
そうした仕組みを作る中で、チームのメンバーにとっても、バックオフィスにとっても、今後その仕組みを使う可能性がある組織のメンバーにとっても良いものになるのか、視座を高く考えるようになりました。
どんな属性を持つ人も「居心地がいい」と感じられる組織へ
ーー永瀬さんはD&Iチームにも参加しています。その観点から、エクサウィザーズをどんな組織にしたいとお考えですか?
一人ひとりが今以上に「エクサウィザーズって居心地がいいな」と感じられる組織を目指したいですね。
先ほども申し上げたように、エクサウィザーズは多様性の高い組織です。国籍の違いや子育て中の社員、年齢、職歴などわかりやすいものから、その人の大切にしている価値観や趣味趣向まで、全てが一つの個性です。
本来こうした多様性は、会社にとって大きな財産です。いろんなシナジーや発見が生まれますし、市場の変化にも対応しやすい。生物の世界も同じです。多様性がなければ気候の変動などですぐに絶滅してしまいます。
一方で、その多様性の高さを100%活かしきれているかというと、まだまだできることはあると思っています。それぞれの個性に良いも悪いもないんです。自分の属性を隠さなくていいし、オープンであるがゆえにお互いを自然と知っていける。そんな組織にしていけたらなと思います。
ーーエクサウィザーズのCredoにもある「Cultivate Collective Awareness」の文脈ですね。多様性を受け入れ、もっと集合知を耕していければ良いと。
そうですね。エクサウィザーズ のメンバーは、お互いをリスペクトし合っているマインドがあると思っています。だから、多様性の高さを活かせる組織も作れるはずです。
ーー最後に、今後エクサウィザーズでどんな挑戦をしていきたいですか?
前職では、お客様のお手伝いする中でも、内部変革に携わるプロジェクトが多かったのですが、新しい技術を世の中に実装するとことんまで携わり、「技術ってこんなに面白いんだ」と、いろんな人にワクワクしてほしいと思っています。
その先で、「人が人にしかできないことにフォーカスできる世の中」をつくる一助になれたら嬉しいですね。技術で人間の活動をサポートすることによって、生き方の選択肢は大きく広がります。それぞれが面白いと感じることに打ち込める社会を、後世に残せたらいいなと思いますね。
永瀬さんと話してみたい方はこちらからご連絡下さい:
文:一本麻衣 編集 / 写真:稲生雅裕
(この写真は2020年に撮影しました)