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UXリサーチを組織に根付かせるために AIベンチャーでResearchOpsを展開して学んだこと

エクサウィザーズの2022年アドベントカレンダーの15日目の記事です。

UXリサーチ/デザインリサーチ Advent Calendar 2022の15日目の記事にも掲載してあります

こんにちは、エクサウィザーズでデザイナーをしている鍵和田です。医療系のプロジェクトでUXリサーチ・UXデザイン・プロダクトマネジメントをしています。

エクサウィザーズは、様々な方面で事業を展開しているため、UXデザイナーやサービスデザイナーがプロジェクトの中でUXリサーチに取り組んでいます。

私たちが今、エクサウィザーズで取り組んでいるResearchOpsは、想いのあるメンバーが主体となって会社全体を巻き込んでいったもので、そのプロセスから学んだことをここで共有します。(なお、ここではUXリサーチに絞ったお話です。)

ResearchOpsの取り組み

ResearchOpsの捉え方は色々ですが、私は以下のように捉えています。

「適正で、高品質なUXリサーチを行うための、組織における人・モノ・カネ・情報の管理と運用」

1.適正とは
・UXリサーチにご協力いただく被験者のみなさまの個人情報を適切に取得・共有・保管・破棄する
・調査会社に依頼する場合は契約まわりを適切に管理する
2.高品質とは
・プロジェクト推進・プロダクト改善などの価値提供につながるUXリサーチの実施

この2つを達成するために、組織における人・モノ・カネ・情報の管理と運用を推進しています。すべてをやろうとすると、時間が溶けていくばかり…!そこで、まずは組織にとって一番ボトルネックとなっていそうな課題にフォーカスしました。

【フォーカスした課題】
UXリサーチをするにあたって、個人情報管理や調査会社への発注管理のルールが属人化

課題をもとに、社内ヒアリング(プロジェクトメンバーや法務やセキュリティ部署)をおこない、必要な時にアクセスできるガイドラインの初稿を作成しました。ここが起点となって、強力してくれるメンバーも増え、今の活動に至っています。

(UXリサーチフローの抜粋)


実際に取り組んでみて

現在、デザインチームの有志でチームを結成し、以下の3つに取り組んでいます。

1.個人情報管理や発注管理といったガバナンス領域をガイドライン化
2.UXリサーチの意義や事例の組織資産化
3.セキュリティやリーガルといった社内部署連携や勉強会の企画・実施

ここまで実際に取り組んでみて、私たちが学んだことをシェアしていきたいと思います。

  • 「なぜやるのか」が協力を募る上で重要

ResearchOpsの活動は、ルール化や運用の適正化といったメンバーの活動にある種の制約や影響を与えるため、その意義をしっかりと伝えることが大切です。そこで、以下の問いをいつも心に留めています。

なぜResearchOpsが会社全体やデザインチームにとって価値がある活動なのか?

(ガイドライン化を進める中で)「こんなルールができました。従ってください」では反発も生まれかねないので、協力を募るときは、個人情報や契約の管理の大切さや、ヒヤリハット事例を交えながら、「なぜこの活動をやっているのか」を丁寧に伝えることを心がけるようにしています。

  • 「普段の業務で実践できるナレッジ」をチームで深く考えるきっかけとなった

現状、ありがたいことに世の中にはUXリサーチの教科書が数多く出回っており、それを読むことでナレッジを貯めることができますが、UXリサーチの意義や事例の組織資産化には、もう1ステップが必要だと思います。そのため、以下の問いをたてました。

普段、自分たちがやっているプロジェクトで実践できるためには、どういったナレッジが必要なのか?

この問いのもと、社内のエキスパート(インタビューを4桁回数やっている人など)へのヒアリングなどをしながら、実践的なナレッジの蓄積を進めています。こうした意識を持って活動をすることで、UXリサーチをやっておしまいにならない・メンバーへの浸透へつなげるといった効果があると思っています。

  • 社内の各部署を巻き込むときは、ユースケースを元にした問いかけが重要

ResearchOpsは法務やセキュリティといった専門家と関わることが欠かせません。セキュリティやリーガルといった社内部署連携が大切になってきます。

そこでの議論の活性化のために、具体的なユースケースを思い描けるような問いかけを心がけています。例えば、以下のように質問をしています。

(Before)「個人情報保護で何を気をつけたらいいですか?」

(After)「クライアントとXXXな情報をXXXの目的で活用しようと思うのですが、個人情報保護の観点から何を気をつけたらいいですか?」

こうした工夫をすることで、より具体的で深い議論を進めることができました。

  • 新しい取り組みをする時は、始めること・続けることが重要

この活動はゼロからのスタートだったので、個人情報管理といった切り口を定めても、「誰に聞いたらいいの?」「参考資料はどこ?」と、試行錯誤の日々でした。

そんな中でも、とりあえず始めてみて、その後も地道に続けていくことで、徐々に活動の輪郭が定まっていき、全社的に有意義な活動だと認知されるに至りました。

新たな取り組みをするときは、うまくいかないことが多いですが、そのぶん学べることや気づけることが多く、そのこと自体がチームにとっての資産になると思っています。

出典:ResearchOps 101 https://www.nngroup.com/articles/research-ops-101/


ResearchOpsとは

ResearchOpsはここ数年で考え方やコミュニティが形成されてきた、比較的新しい分野です。Nielsen Norman GroupではResearchOpsを以下のように定義しています。

・ResearchOpsとは、高品質のUXリサーチを組織的に実施するための仕組みづくりである
・被験者・ガバナンス・ナレッジ・ツール・能力開発・組織浸透の6つの切り口がある
・その上で、できるところから着手することを推奨する

出典:ResearchOps 101 https://www.nngroup.com/articles/research-ops-101/

私たちもこの枠組みを参考にしながら、ResearchOpsの活動を推進しています。ResearchOpsは奥深く、時に迷いがちになりますが、こうした先達の思考や活動を参考にできることはありがたいと思います。

私がこの記事を書こうと思ったのも、ResearchOpsがもっと他の企業やチームに認知・活用されてほしいという想いがあったからです。

最後に

会社が大きくなるにつれて、「UXリサーチを始めてみたい!」「UXリサーチをもっと効率よく進めたい!」といった声に応えるためは、ResearchOpsという地道な取り組みが欠かせなくなってきます

みなさんがこのNoteを読んだ後に、「ResearchOpsってけっこう大事かも…」「うちの会社ではリクルーティングの効率化が必要かも…」などと思っていただけると嬉しいです!最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

16日目は事業統括部の北林洋太さんです。

みんなにも読んでほしいですか?

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