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Keep diving. Keep changing. IBMやLINEで数々のAI事業に携わった後、エクサウィザーズに"ダイブ"した理由

「本気で『ブレインテックをやろう!』と言ってくれた会社はエクサウィザーズしかなかった」

「エクサウィザーズ」で活躍する”ウィザーズたち”を紹介するストーリー。

今回は、物理学を学んだ後に、IBMやLINEでAI事業の立ち上げや開発に携わってきた佐々木レイさんです。現在は、エクサウィザーズでAIプロダクトのマネジメントやブレインテック事業の立ち上げを推進しています。”Life is Diving.”が人生のモットーのレイさんが、エクサウィザーズに「ダイブ」するまでと、これからの挑戦についてうかがいました。

■プロフィール

佐々木 レイ(ささき・れい)

東北大学大学院で素粒子物理学を専攻。CERN研究所に留学。その後、IBMにエンジニアとして入社し、第2世代AIを開発、第3世代AI「Watson」を推進。次にボストン・コンサルティング・グループに移り、戦略コンサルタントとしてクライアントのAIやIoT事業の立ち上げを支援。2017年にLINE株式会社に移り、AI領域の担当として「LINE BRAIN」の事業立ち上げや「CLOVA」の事業開発などに携わる。2020年、エクサウィザーズへ。本田圭佑氏が代表を務めるNowDo株式会社にもパラレルワークとして関わる。

海に空に宇宙。今も変わらない未知への好奇心

——まず、レイさんがどんな学生時代を送っていたのか、から教えてください。

物理学を学びたくて、東北大学を選びました。大学では、物理だけは真面目に勉強していましたけど、ほかの授業にはあまり興味を持てず、サークル活動ばかりしている大学生活でした(笑)。

印象に残っているのは学部2年の時に入会したスキューバダイビングのサークルです。先輩から「普段は地上で生活しているけれど、スキューバダイビングをしている時は唯一、海の中の新しい世界にいられる」と勧誘されて、「その世界観は熱いな」と思ったんです。

誰も経験していない新しい世界をひらきたいとずっと思っていて、そこにマッチしたんですよね。その後スカイダインビングにも目覚めて、ダイビングは一生の趣味になりました。

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(オンライン会議での背景画像)

——その後、大学院に進んでいますよね。大学院時代はどんな研究をされていたのでしょうか。

神の粒子とも呼ばれるヒッグス粒子を見つける研究をしていました。ヒッグス粒子は、粒子が質量を持っている理由を説明できるもので、理論上は予測されていたけれど、当時その存在はまだ証明できていなかったんです。この研究のためにスイスのCERN(欧州原子核研究機構)に留学もしました。

——なぜ、ヒッグス粒子について研究しようと思ったのでしょうか。

この研究は、宇宙がなぜ生まれたかの解明に繋がるんです。ヒッグス粒子は、宇宙のビッグバン直後に出現して、万物に質量を与え、宇宙のはじまりを担ったと考えられています。研究を進めていくと、宇宙の神秘に近づけるというのが一番のモチベーションでした。

——ダイビングや素粒子物理学など、未知の世界を知りたい、そこに飛び込んでみたい気持ちはこの頃からあったんですね。そのまま研究を続ける選択肢もあったと思いますが、就職を選んだのはなぜでしょうか。

僕がやっていた研究は、実験のための加速器を開発するのに1兆円規模の膨大な予算が必要であり、10年以上かかるみたいな時間軸だったんです。これはもう、自分の力の範疇を超えているなと。今までは「宇宙を解明する」動機で研究をしていたけれど、今度は既にあるものを解明するのではなく、自分でゼロからものをつくるのも面白いかもと考えて、社会に出ようと思ったんです。

短期間で難易度の高いプロジェクトを成功させるには

——最初の就職先のIBMではどんな仕事をされていたんですか。

IBMでは、アプリケーション開発者から始まって、プロダクトエンジニアやソリューションアーキテクト、ITコンサルタントなどさまざまな職種を経験しました。そのなかでも、すごく大変で記憶に残っているプロジェクトは、IBMの日本本社に3ヶ月で、ビジネスパートナー向けに先進技術を紹介し、コラボレーションを促進するような施設をつくったことです。

——3ヶ月! それはとても短期間ですね。

もともと1年前から決まっていたプロジェクトだったのですが、ずっと要件が決まらず進んでいなかったそうです。リスクが大きいと敬遠されていたのですが、僕は会社のためにやるべきだと思ったので、手を挙げました

ものすごいスピードで企画を立てて、当時、発売直後だった人型ロボットのPepperがお客さんを出迎え、床にビーコンを埋め込んで、iPadを持って歩くといろいろな体験ができるシステムをつくりました。社内でまだ実績がなかったクラウドも活用しました。

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——その後、BCGを経て、転職したLINEでも、 AIの領域で新規事業を立ち上げられたと聞いています。

最後に手掛けたBtoB事業である「LINE BRAIN」ですね。これは、自分が発起人となったプロジェクトで、事業計画を立て、顧客を見つけ、プロダクトを開発し……とまるで起業のような経験をしました。毎日ジェットコースターに乗っているような感覚で、なにが起こるかわからない。それはすごく大変で、楽しかったですね。

——なにが一番大変でしたか?

基本的にBtoCのプロダクトばかりの会社で、BtoB事業を立ち上げる部分ですね。研究者を交えてキックオフをした時も、8割以上が大反対だったんです。「BtoBはクライアントの言いなりにならなければならない」というネガティブなイメージがあったみたいで。その誤解を解いたり、この事業の意義を説明したり、一緒にご飯を食べて仲良くなったりと、地道に信頼関係を構築していきました。

——IBMのプロジェクトもそうですが、「リスクが高い」と思われるような難易度の高いプロジェクトを遂行できた要因はなんだったのでしょうか。

絶対会社のためになるし、お客様のためにも、社会のためにもなると信じていたことが大きいですね。また、メンバーもなるべく挑戦心にあふれた人を集めたので、新しい技術などを取り入れやすかった。メンバーから出てくるアイディアは基本採用するようにしていました。「できないかもしれないけど、とりあえずやってみよう」という精神で、チームの熱量が高かったのも成功した要因だと思います。

スタートアップの新しいプロダクトも、最初は「そんなのうまくいくはずない」って思う人が多いけれど、うまくいったら「成功事例だ」と認められますよね。それを、社内の事業で経験した感じでした。

エクサウィザーズだけが「本気でやっていいよ」と言ってくれた

——LINEの後は、どういった経緯でエクサウィザーズへ?

きっかけは、LINEに勤めている時に、LinkedInで「社長の石山さんと一度ランチをしてみませんか」とお誘いをうけたこと。そこで、石山さんと脳科学の話でめちゃくちゃ盛り上がって、「今は転職するつもりないかもしれないけれど、1年後でも興味あったらぜひ来てください」と言ってもらったんです。

——この頃から脳科学に興味をもたれていたんですね。それはAIのプロダクトの延長線上に脳科学があったのでしょうか。

それもありますし、人間の本質にはなにかの原理原則があるのではないかと思ったんですよね。それが今のところは脳科学なのではないかと。最初は専門書などを読んで独学で勉強していたんですけど、2020年から、理化学研究所・脳神経科学研究センターが主宰する「脳科学塾」の講義を受講しています。

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——LINEの事業が一旦落ち着いた頃に、エクサウィザーズに転職しようと考えられたのでしょうか。

そうですね。脳科学をベースにしたブレインテックをやると決めたんですけど、LINEの事業とはシナジーがまだ出ないと考えて、転職しようと思いました。いくつか他の企業からもお話はいただいていて、毎回「ブレインテックをやれるならいきます」と強気で言ってたら、「ぜひやりましょう!」と本気で言ってくれた会社はエクサウィザーズしかなかった(笑)。

——なるほど(笑)。転職時に「エクサウィザーズに移籍してブレインテックを立ち上げる」という内容のnoteを書かれていますね。

入社前に皆さん読んでくださっていたみたいで、エクサウィザーズに入ったらもう「この人はAIと脳科学の事業をやる人だ」と認知されていました。

それで、すぐにAIプロダクト全体に関わる仕事と、ブレインテックにまつわる仕事に呼ばれるようになった。やりたいことを表明して、それをみんなが見てくれた結果、いいサイクルを生んでいます。

脳科学の知見をJazzのように即興的に盛り込んでいく

——今は具体的にどういったことをされているんでしょうか。

エクサウィザーズのプロダクトに脳科学の知見を加えて新しい価値をつくっていこうとしています。

例えば、エクサウィザーズのAIカメラである「ミルキューブ(現名称:exa Base エッジカメラ)」。

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これは保育園に置かれて、子どもの行動や表情を検知して自動で撮影するサービスを提供しています。このミルキューブに、脳科学と発達心理学の研究結果を踏まえて、心の成長をサポートしたり、保育者との信頼関係をつくったりするのに役立つ機能を実装したらどうかと提案したり。

これは理想的な関わり方でしたね。「これおもしろそうじゃない?」とアイデア出したら「いいね!」となって、他の人も呼んで新しいプロジェクトとして立ち上げよう、となる。こういう、Jazzのような即興的なコラボレーションが生まれるとわくわくしますね。

——コラボレーションが自然に生まれているんですね。

エクサウィザーズは「社会課題の解決」という大目的を共有している、あらゆる専門家の動物園みたいな環境です。みんな日頃から「どうしたら社会がより良くなるか」を考えているので、アイデアが出ると「それいいね」となりやすい。ブレストとかではない普段のミーティングでこうした展開になるのは、すごいなと思います

——即興的にプロジェクトを盛り上げていくために、レイさんは何を意識していますか?

社会のニーズとメンバーのモチベーションがマッチするところを探すようにしています。

あるプロダクトで僕が入って最初にやったのが新年会の開催でした。オンラインで新年会を開いて、ゆるく話をしながらも、みんながなぜこの仕事をやっているのかを聞いていく。そこに、個人のモチベーションとマッチするようなトピックをポンポン投げかけると、「あ、こういうことがやってみたい」という話が出てくる。

一人ひとりが少し背伸びしてチャレンジをしたら、プロダクトとしてより良い結果が生まれるし、モチベーションも上がります。なので、メンバーのそういう気持ちを引き出せるように発言をしています。人が成功をおさめるには、IQよりも努力を行うための動機づけがうまくできるかどうかの要因が大きいという追跡調査の結果もありますし、そのあたりは意識していますね。

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脳科学×社会課題で、心が健康な状態で日々を過ごす人を増やす

——最後に、レイさんが今後取り組みたいことを教えてください。

短期的には、エクサウィザーズのプロダクト全部に、脳科学でわかっている知見を組み込んでいきたいですね。長期的には、脳波を活用したニューロフィードバックなど、よりディープなブレインテック事業を立ち上げたいです。

今は脳活動を記録して、その人がどういう状態かがわかるようになりつつあるので、その技術を活かしたプロダクトをつくりたい。脳に関連するプロダクトって、今は尖った存在ですが、10年先を考えたらどこかのタイミングで普及しているはず。市場の選択と、早すぎも遅すぎもしないタイミングはいつなのかを見極めたいと思っています。

心が健康な状態で日々を過ごすことが人間の幸せだと思うので、その状態を脳科学とテクノロジーでサポートするサービスがつくれたらいいですね。

——さまざまな領域に「ダイブ」し続けてきたレイさんですが、ブレインテックのその先に、なにか飛び込んでみたいテーマはありますか?

脳というテーマはしばらく続くと思っています。なぜなら、脳自体がまだまだ解明されていないので。社会課題の解決にも、わくわく感を持ち続けられるのではないかと思います。だから、脳科学×社会課題というテーマは、これからも追い続けるでしょうね。それでも飽きがきたら、僕のキャリアの流れだと自然界から社会に興味が移ったので、もう一回自然界に戻るかな......。

——というと?

悟りですね。エクサウィザーズを辞める時は、悟りを開く時だと思ってください(笑)。

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(奥多摩での滝行)

エクサウィザーズ では一緒に働く人を募集しています。興味のある方は是非ご応募ください!

文:崎谷 実穂 編集/写真:稲生 雅裕

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