コンサルタントが次のキャリアを考えるときに持つべき視点とは # Open EXA vol.1イベントレポート(前編)
人生100年時代と言われる今、多くの方にとってキャリアチェンジは当たり前のことになりつつあります。コンサルティングファームで働く方のなかにも「このままファームに残るのか、社外に出て新たな事業に挑戦もしくは起業するのか」という問いに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は戦略コンサルタントからベンチャーへ転身し、経営陣として上場を経験した当社の取締役・大植と、最近キャリアチェンジしたばかりの林が、「コンサルタントのNext Step」について自身の転職活動を振り返りながら、コンサルタントとエクサウィザーズのBizDev/AIコンサルタントとの違いや真の意味での社会課題解決について切り込んで語り合いました。そのイベントの様子を前後編でお届けします。
キャリアチェンジを考え始めたタイミング、きっかけは?
大植:コンサルを5年ほど経験したタイミングで考え始めました。もともと、長くいるつもりはなく、3年程度かなと思っていたので少し居すぎたなという印象ですが、プロジェクト自体は刺激も多くコンサルティングの仕事が楽しかった結果、思ったより長くいることになりましたね。
私は、アドバイザリーキャリアを続けていくことをあまり考えておらず、最終的には自分が事業の主体者としてキャリアを作っていくことを考えていたので、コンサルは20代の自分を鍛える場として成長環境を選んでいた形です。
林:私はマネージャーになってからキャリアチェンジを考え始めました。前職で、事業会社に経営企画として出向する機会を頂いたのですが、そこでの経験が今後のキャリアを考える大きなきっかけになったと思います。私はコンサル2社を経験しているのですが、出向を経験するまではアドバイザーとしてのキャリアしか知らなかったので、出向を通じて、事業の主体者としてビジネスや組織を作る難しさ・面白さを感じられたことで本格的にキャリアチェンジを考え始めました。
また、個人的な話ですが、中長期的なキャリアとして20代は個人の力を伸ばせるように、30代は周りの人の力も伸ばせるようにということをぼんやりと考えていたこともあったので、そういった観点でもちょうどキャリアチェンジを考えるようになるタイミングだったのだと思います。
転職先はどんな会社・業界で探しましたか?
大植:起業も選択肢にあったのですが、転職するのであれば、成長性が高く、学生時代に研究していたデータ・AIなどの領域の最先端テクノロジーを使ったビジネスが良いなと考えていました。また、私はこれから事業をスケールさせるようなフェーズにあるアーリーステージの会社を探していました。なので、AIスタートアップでこれから爆発的に事業を成長させようとしている会社を見ていました。
起業という点についても少し触れておくと、当時の自分を客観的に見たときに自分自身のコンサル経験だけでは事業を作るというスキルがまだついていないように感じられたことと、ネットワークという観点でも不安があったので、起業ではなく転職を選びました。エクサウィザーズに入社して4年たった今と当時を比較すると、今なら起業しても当時よりはうまくいくと思えるので、スキル的にも自信をもって成長できたと言えると思います。
林:コンサル出身の方には共感していただけると思うのですが、私はこういうことがやりたい、という明確なやりたいことを持っていなかったので、どういう軸で業界・会社選びをするかは非常に悩みましたね。ベンチャーで働きたいという思いは持っていたのですが、どの会社の話を伺っても、それぞれの観点で面白いと感じられ困ってしまいました(笑)。結果的に業界・会社選びの軸というのは明確には定めずに、30社くらいのお話を伺って決めていきましたね。
当時出向していた自動車業界はクロスセクターで100年に一度の業界変革が進んでいますし、非常に面白いフェーズであると思っていましたが、一つの業界に絞ってキャリアを築いていくのはもう少し先でもよいかなと考えるに至ったので、業界も領域も幅広く検討しました。
会社選びをする際にどんな点を重視しましたか?
大植:2つの視点で考えていました。
まず1つ目としては、自分が成長したい!と強く思っていたので、成長環境に身をおけるか、また会社としてスケールしそうかという点を非常に重視していました。私がエクサウィザーズに入社した時は社員が30名程度で、特にアセットも豊富にあるわけではなかったので、判断するのが難しかったのですが、会社が掲げているビジョンの大きさや経営陣の器の大きさを見ていましたね。ビジョン(目標)が小さいとこじんまりして、成長スピードも緩やかになると思います。その点、エクサウィザーズはビジネスとして社会課題を解決するんだ!という大きなビジョンと強い思いを持っていて、急成長が求められる環境に身を置くことで、自分自身も成長できると感じました。
2つ目は経営者の人柄です。実は、入社前に社長の石山さんと2時間の面談を4回させてもらってから入社の意思決定をしていて、今では石山さんに「入社前にデューデリジェンスされた」と笑い話にされていますが、入社前にじっくり話ができたからこそ、石山さんとなら会社を大きく出来そうだと確信しました。
林:その部分だけ聞くと、経営者向きというか、かなり慎重な性格ですよね。
大植:そうですね。でも、AI業界の置かれた環境や目指す方向性を深く理解することができましたし、入社初日からフルスロットルで働くことができました。
林:成長環境に身をおけるか、また会社としてスケールしそうかという点は、大植さんと同じですが、異なる点ですと一緒に働く人を非常に重視しました。「人はいつも周りにいる5人の平均をとったような人になる」という言葉もありますが、面接でお会いする方が自分として一緒に働きたいと思える人かというところを見ていました。先ほど入社前に30社ほど見ていたという話をしましたが、入社前には多くの方と面談しながら価値観のすり合わせをしていました。
大植:入社前にしゃぶしゃぶを食べに行きましたよね。
林:そうですね。オファーを受ける前に、もう少しほかのエクサウィザーズの方ともカジュアルに話したいと相談したところ、食事会をセットいただいたのですが、当初は人事の方と面接していただいた清水さんだけと伺っていたので、最初来る予定はなかった大植さんが現れて驚きましたね。
大植:その日はお客様との会食があったんですが、林さんとのカジュアルな食事会があるという情報を聞きつけて、会食終わりに急遽駆けつけました。
最終的にエクサウィザーズに転職することにした決め手は?
林:意思決定する際に、もう1社迷っている会社があったのですが、最後の決め手はやはり人ですね。自分自身の価値観と近いかどうかという点と、また自分と異なる能力を持っている人から学び・気づきを得られそうかという2つの軸で考えました。
迷っていたもう1社は、少し年齢の離れた経験豊富な経営者の方と一緒に働けることに魅力を感じていたのですが、エクサウィザーズは年齢が近い方が多く、自分と異なるスキル・経験を持つ優秀なメンバーが多くいると感じられたので、先ほどお話しした「5人の平均」という観点で、周囲からの学び・気づきを得て、目指すキャリアも具体化しやすいかなと感じました。
価値観の部分では、エクサウィザーズはやりたいことが明確にある人が多い会社で、やりたいことが明確でない自分にとっては正直、引け目を感じる部分もありました。でも今はやりたいことが明確にはないけれど、熱い想い・ビジョンを語る人の近くにいるとワクワクするし、その人たちの夢を一緒に叶えたい!という想いを持った方とお話しして非常に共感できたことが大きかったですね。そうした価値観を持った人もエクサウィザーズで貢献できるフェーズにいると感じることができました。
大植:林さんの転職したタイミングと私が転職したタイミングはかなり違うので、どこまで参考になるかわかりませんが、先ほどお話ししたように私は「社会課題をAIの力で解決していく」というビジョンに単純に共感したことと、高いビジョンを持っていることで自分の成長が求められる環境にあると感じたことが決め手です。あとは、やはり人との相性も大事だと感じます。石山さん以外にも春田さんをはじめ、当時の経営陣や社員とも話して、フィット感が感じられたことも決め手になりました。良い人がいたら良い事業が生まれますからね。
自己成長、キャリアパスの観点でコンサルと事業会社の違いはありますか?
林:私が転職活動しているときにエクサウィザーズについて一番理解が難しいと感じたのは、コンサルとの違いですね。メンバーを見てみると、コンサル出身者が多いですし、AI導入を考えても、導入前の企業課題の整理が必要になるであろうことを踏まえると、コンサル的な仕事もあります。
そのような中、コンサルとの違いはどのように説明するとわかりやすいでしょうか。
大植:エクサウィザーズはAIプラットフォーム事業とAIプロダクト事業の2つのビジネスモデルを持っています。
AIプラットフォーム事業はクライアントの経営課題をAIで解決していく事業ですが、大体の場合、経営課題とAIはシンプルには紐づいていきません。ここで求められるクライアントの課題を正しく理解してAI・デジタルのソリューションに落とし込むという部分は、コンサルティングスキルが活きやすい領域ですし、親和性も高いです。
ただ、我々が目指しているのは、社会課題の解決になるので、個社ごとの課題解決をしていくだけではなく、産業等で共通する汎用的な課題については、横展開してプロダクト・サービス化することでより広い範囲の課題解決につなげていくことを目指しています。
実際に、AIプラットフォーム事業でAIモデルを構築した場合、他のプロジェクトでもAIモデルを横展開・汎用化する形を志向しますので、コンサルティングビジネスとは性質が異なります、そういう意味で、AIプラットフォーム事業は、新しいプロダクト・サービスを生み出すためのマーケティング・R&D機能とも言い換えられると考えています。
コンサルと似ているのは、クライアントの経営課題を解決するという点ですが、我々は最終的には汎化された課題を抽出して、それを解決することで社会課題解決を目指しているという点が異なります。イメージとしては、AIプラットフォーム事業で0→1をやり続けて、生み出した種を、AIプロダクト事業部1→10、10→100でスケールさせていくというビジネスモデルです。
ここまで聞いていただくとわかると思いますが、私たちの仕事はコンサルティング会社出身者のスキルが非常に活きやすい仕事だと考えています。特に、社会課題・経営課題と技術をつなげるという部分は課題を理解し、構造化して、解決していくことが必要になりますので、まさにそうした仕事を経験したコンサル出身者が多く活躍しています。
エクサウィザーズでは、社会課題解決ができる人材をフルスタックBizDevと呼んでいますが、社会課題を解決していくためには、優秀なBizDev人材に多く来ていただくことが必要条件だと思っていますので、BizDevの採用を強化しているという状況です。
林:さらに、もう1歩踏み込んで質問したいのですが、社会課題の解決とはどう捉えればいいのでしょうか?今のお話ですと、汎用的な課題に対するプロダクト・サービスを展開していくことは、より広範囲にアプローチできる一方で、関わり方は薄くなるようにも感じており、結果的に社会課題のような深い課題を解決するのには至らないのではないかとも思うのですが。
大植:結論としてはAIプロダクトとAIプラットフォーム両方で社会課題解決を目指していくという形になると思います。
AIプロダクトは色々なお客様に使っていただきやすいものになるので、ユーザー数・社数は増え、スケールする形で社会課題解決に寄与します。また、AIプラットフォーム事業は年間約300件実施しているプロジェクトで生み出したアセットを再利用・カスタマイズして別のクライアントに提供しています。この場合、一つのクライアントに対してより深い課題解決が進められるようになっていきますよね。
こうした取り組みをもう1歩進めようとしているのが、最近プレスリリースを出したexaBase studioです。今まで呼び出されるAIアセットの蓄積を進めてきたのですが、企業側がAIをより呼び出しやすいようになるプラットフォームを提供できるようにすることで、これまでエクサウィザーズが開発してきたAIをクライアントが自由に使えるようにしようとしています。これが実現できると、より深い課題にもリーチできるサービスになると確信しています。
林:ありがとうございます。そういう意味では、社会課題解決を見据えたときに今の進捗って何合目くらいなんでしょうか?
大植:まだ1合目にも満たないですかね。日本の資本市場で社会課題を解決していると認められる存在になろうと思うと、規模が必要だと思っています。先日決算を出しましたが今後、何千億・何兆円を超える形で事業をスケールさせることを考えていこうと思うと、AIプラットフォーム事業もAIプロダクト事業もまだまだ仲間が足りないなと思っています。
林:まさにおっしゃる通りですね。キャリアパスの観点でコンサルと事業会社、エクサウィザーズの違いを考えてみると、人材育成の考え方に関しては、コンサルティングファームと事業会社やエクサウィザーズは大きく違うと思っています。
コンサルはプロジェクトベースでの仕事が中心でチームよりも個を伸ばすイメージ。他方で、事業会社は組織・チームとしての成長を志向しているように思います。エクサウィザーズも一つ一つのチームで強くなっていこうという方向ですよね。もう一つは、AIプロダクト事業でPdMになるというキャリアパスがあったり、その逆もあったりすることで、事業や役割を行き来できる可能性があるのが面白いのかなと思っていますが、大植さんはいかがですか?
大植:同感ですね。アドバイザーとしてのキャリアを極める方向性も、もちろんあると思いますが、個人的には事業の主体者となっていってほしいなと思います。
(後編の質疑応答へ続く)