仕事で不幸になる人を減らしたい。キーエンスを飛び出し「働くとは何か」を探究する理由
「仕事が原因で命を落とす人を一人でも多く救いたい」
エクサウィザーズで活躍する“ウィザーズたち”を紹介するストーリー。今回は、京都オフィスにてAIソリューションコンサルタントを務める今井さんです。
博士課程の社会人院生としてコミュニティの研究に取り組んだり、大阪発のHRカンファレンス「ハタラキカタソニック」の代表も務めています。
過去にハードワークで体調を崩した経験から「生き方」を考えるために「働き方」を見つめてきたという今井さん。働くことへの捉え方を変え、どんな社会を実現したいのかを伺いました。
体調を崩して考えた始めた「働く意味」
ー今日は、京都からありがとうございます。今井さんはエクサウィザーズではどんな業務を担当しているのでしょうか?
二つあって、一つはAIプラットフォーム事業部のアカウントマネージャーとして、AIの利活用と普及、そしてイノベーション創出に関わっています。
もう一つは、事業推進室でエクサウィザーズの全社を横断したマーケティングの仕組み作りやバックオフィス業務のサポートをしています。どんなお客様とお付き合いするか、その過程でどのようなコミュニケーションを取るか、製造販売でのto B営業の経験を活かし、事業推進室のメンバーたちと戦略を考えています。
―エクサウィザーズの仕事と並行して、社会人院生として企業内コミュニティの研究や、大阪発のHRカンファレンス「ハタラキカタソニック」の代表も務めていますよね。今井さんが働き方に興味をもったきっかけを教えて下さい。
前職で一時、大きく体調を崩してしまったんです。個人的にはとても前向きに働いていたので、自分が倒れるなんて微塵も想像していませんでした。
家族にもたくさん心配をかけました。僕が仕事を頑張る理由は家族を幸せにしたいからなのに、現実はそこから遠のいてしまう結果になっていた。
この経験をきっかけに、「働くとは何か」や「生きるとは何か」に興味を持ち、考え始めるようになったんです。
楽しく働くとは? 高いモチベーションを持つ社員に興味を持ち、大学院へ
ー働くとは何かを考えるようになってから、仕事への向き合い方に変化はありましたか?
「どうして人は仕事を楽しい、あるいは苦しいと思うのか?」や「人は何をどう感じると幸せなのか?」といった心理に興味を持つようになりました。
例えば、社内で自主的にワークショップを開催して、社員の育成に励んでいる人。会社に指示されたわけでもないのに、このモチベーションはどこから湧くのだろうと興味を持ったり。また、営業成績の良い人はなぜ楽しそうに仕事をしているのか考えるようになりました。
これらの理由をもっと明確に知りたいと思い、働きながら大学院での勉強を始めました。
ー大学院では具体的にどんな研究をされていたのでしょうか。
当時リーダーシップ研究などで著名な金井壽宏教授が在籍しておられた神戸大学大学院経営学研究科に進学しました。金井教授のお弟子さんでもある鈴木竜太教授のゼミに運良く入り、コミュニティの研究をしています。実際にコミュニティの理論を学んで、今、社内で自分たちがどんなメカニズムで動いているのかを強く意識するようになりました。
「働く=辛いもの」という認識を変えたい
―数年前に立ち上げたハタラキカタソニックも、コミュニティ研究の延長線にあるのでしょうか?
コミュニティの実践の場という意味合いもありますが、大阪でも働き方について考える機会を増やそう、という思いが発端です。発起人は、Facebookで「今日、飲みませんか?」って集まった人たち。所属も背景もバラバラなんです。
この話が持ち上がった2016年は、働き方改革が叫ばれ始めた頃。東京では毎月のように働き方改革に関連するイベントやセミナーが開催されていました。でも、大阪では講演もイベントもほとんどなかったんです。
「だったら自分たちでやるしかない! でも堅苦しく考えるのは嫌だ。なら働き方のフェスをしよう!」と盛り上がって。口約束で終わらせるのはもったいないと思って、その場でグループを作って始まったのがハタラキカタソニックです。
―働き方の「フェス」だから某音楽フェスと同じ「ソニック」なんですね!
そうなんです(笑)。働くことって、まだ「辛くて苦しい」と認識されることも少なくないと思うんです。「定時で帰れない会社はダメ」という意見もよく耳にします。前提として、仕事に対する価値観は個々で尊重されるべきです。
ただ、例えば「残業がある=悪」と決めつけるのは違うと思うんです。仕事量が適切でないから残業が発生しているケースなのか、その人がやりたくてやっていて残業しているケースなのかは大きく違いますよね。
仕事には「人生の夢を叶える手段」の側面があると思っています。自分がなんのために働いているのかを見直し、意味づけられるようになれば、「働く=辛いもの」という認識を変えられるはず。そう信じてハタラキカタソニックを続けてきました。
―ハタラキカタソニックは今年で3回目だそうですね。COVID-19の影響がある中での開催でしたが、新たな反響はありましたか?
COVID-19の影響もあり、働くことや人生の価値観が大きく変わり、徐々に「自分を解き放って働き方を見つめ直す」というハタラキカタソニックのビジョンも受け入れられつつあると感じています。
今まで行ってきた取り組みが正しいかどうかはわからないけれど、誰かにとって「ポジティブなこと」だと感じられるようになりました。
(初開催の様子)
「自分ごと」で支え合うコミュニティの強さ
―働き方に向き合い続けてきた今井さんが、エクサウィザーズに転職しようと思った理由について教えてください。
最初の接点はハタラキカタソニックです。当時のエクサウィザーズの取締役の方を、登壇ゲストにお呼びしていて、京都メンバーの長谷川さん、東原さんを紹介していただきました。
その後、京都オフィスで営業を募集している求人を拝見して、東原さんと食事に行きました。エクサウィザーズがどんな会社なのかを聞いて、とてもワクワクしたのを覚えています。
一方で、前職に不満は何一つなく、予定されていた仕事が絶対に楽しいものになる確信もありました。エクサウィザーズに転職するかどうかは本当に悩みました。
―何が決め手となったのでしょうか?
社長の石山さんの存在です。当時、石山さんが多忙で東京での面接日程が決まらなかったんですね。そこで「大阪に来るスケジュールはありますか?」と聞いて、石山さんが大阪でイベント登壇する日に僕が場所をセッティングして、採用候補者なのに最終面接官の方を出迎え、大阪で最終面接を行ってもらいました。しかも、その日の夜に朝まで一緒にお酒を飲んで、カラオケまで行きました(笑)
―採用の合否も出ていないのに?!
はい。イベント登壇終わりの夜なら時間はあるだろう思って、「イベント終了後にお時間ありますか? よかったら飲みに行きませんか?」と、お声がけをしました。
―石山さんのとの会話では、何が決め手につながったのでしょうか。
石山さんはこちらの考えをご自身の頭にある膨大な知識を関連付けて「こういうことだよね?」とさらにアップデートしてくれるんです。イノベーションに必要な「知と知の結合」が、会話中にずっと起き続ける。
その結果、「この人は僕をわかってくれてるんだな」って感じるんです。多くの方が石山さんを尊敬し、慕う理由である人間的な魅力は「理解してもらえた」安心感もあるのではないかと思います。
エクサウィザーズは「社会課題を解決したい」人が集まった実践共同体
―エクサウィザーズに入社して、今井さん自身にはどんな変化がありましたか?
働き方の多様さに触れて、改めて働くと生きるの関係について意識的に考えるようになりました。以前は朝8時に出社して、夜8時に帰宅するのが当たり前でしたが、エクサウィザーズのメンバーは働く時間や場所も個々に違う。ここに多様な働き方について考えを深めるヒントがあるような気がしているんです。
―働く中で、「ここがエクサウィザーズらしい」と思う瞬間を教えてください。
マニュアルや仕組みがなくても、みんなが得意な領域を活かし、支え合っているところですね。それぞれが自分の観点を持ち寄るから、いつでも、どこでもポジティブな化学反応が起こりうる。これは、大きな魅力だと思います。
精神面でも大人なメンバーが多いんじゃないでしょうか。僕自身も、エクサウィザーズのメンバーと会話をするときは背筋が伸びますね。
―エクサウィザーズは多様性を保ちつつも「自分ごと」として仕事を捉えるメンバーが揃っていますよね。
そうですね。会社が明確にビジョンを提示しているからだと思います。同じビジョンや熱意、課題を持った人の集まりを「実践共同体」と呼ぶのですが、エクサウィザーズは「社会課題を解決したい」人が集まった実践共同体。だから、入ってみないとわからない部分はあれど、紹介したくなるコミュニティなんでしょうね。
自分の生きた軌跡を振り返る機会を増やし、仕事のために命を絶つ人をひとりでも多く減らしたい
―最後に今井さんが人生をかけて解決したい課題を教えてください。
一人ひとりが、自分らしい、調和の取れた働き方ができる世界を実現したいと思っています。
仕事とプライベートのバランスを取る観点で、「ワークライフバランス」や「ワークアズライフ」といった言葉を耳にしますが、僕はこれらの言葉に違和感を覚えます。
仕事と生活は本来分けて考えるものではないはず。人生は、仕事の時間、趣味の時間、家族の時間、友達の時間など、様々なパーツの集積ですが、それらは境界線で分かれた別のものではなく、重なり合ったものだと思うんです。そして、それぞれのパーツがどう重なったら心地よいのか、つまり調和がとれた状態になるのかは人によって違います。
自分のパーツの重なりは、「会社にいるときの自分」、「友達といる自分」、「一人でぼーっとしているときの自分」など、様々な状況の自分を振り返ると徐々に見えてくるものです。しかし、その機会は非常に少ないのではないかと思います。見直す余裕がなかったり、ときには追い詰められ、命をなげうってしまう人もいます。
例えば、会社に行くことが辛くて追い詰められている人は、電車がくるときに「あと一歩だけ前に出たら、行かなくていい」と感じると伺いました。驚くほど視野が狭くなっているから「休む、退職する」の選択肢すらわからなくなってしまう。
社会から、この不幸を消したいんです。
「どう生きるのか?」は「どう人と関わるのか?」とイコールだと思います。仕事もその一つ。それをどう捉えて生きるのか。
僕の手が届く範囲には限界はある。でも、エクサウィザーズに入社して、手を伸ばせる範囲が広がってきた実感があるんです。少しでも誰かの人生が豊かになる手助けをしたいと思います。
文:南條杏奈 編集 / 写真:稲生雅裕
(この写真は2020年12月に撮影しました。撮影の時のみマスクを外しています)