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アトムと過ごすような世界を、良いシステムで実現したい。MLエンジニアが目指す、心にゆとりのある社会。

「世界を変えるのは、良い製品ではなく良いシステムである」

「エクサウィザーズ」で活躍する”ウィザーズたち”を紹介するストーリー。

今回は、2017年にエクサウィザーズへ入社し、 AIをフル活用したクラウド型の人事支援サービス「HR君」などの開発をリードしてきた佐藤さんにインタビュー。

冒頭の言葉にあるように、彼がこれまでのキャリアで一貫し続けてきたのは「システムづくり」。話を聞く中で見えてきたのは、佐藤さんがエクサウィザーズを通じて実現したい「AIやロボットがもっと身近になる世界」でした——。

◾️ プロフィール

佐藤 彰洋(さとう・あきひろ)

東京工業大学知能システム専攻修了。2008年4月、システム開発企業に入社。金融系システムの構築・運用に従事した後、国内大手電機メーカー研究所にて自社技術のR&Dに従事。2015年、東工大発のAIベンチャーであるSOINN株式会社にて、主に機械学習を活用した需要予測や人の動きの模倣、 動作獲得等の案件を要件定義から納品まで多数手がける。2017年10月、MLエンジニアとして株式会社エクサウィザーズに入社。

今の自分を形作った、『鉄腕アトム』とPC-8800

僕がエクサウィザーズを通じて実現したいのは、「AIやロボットがもっと身近になる世界」。そのベースには、子どものころ読んでいた手塚治虫の「鉄腕アトム」や「火の鳥」があります。

僕がプログラミングと出会ったのは6歳の頃。きっかけは、父が買ってきたパソコンのPC-8800でした。当時はOSもなく、真っ黒な入力画面が立ち上がるだけ。遊べるディスクも麻雀やシューティングゲームくらいしかなく、ファミコンに比べると…あまりおもしろくなかったですね(笑)。

でも、僕には「鉄腕アトム」に登場するような「ロボットと人間が友達」の世界観への強い憧れがありました。そこにPC-8800が加わり、「プログラミングができれば、アトムがいる世界を実現できるんじゃないか」と思い始めたのです。

平仮名も覚えたばかりのような年頃ではありましたが、「まずはPC画面に“Hello,World”と出す」を目的にプログラミングをスタートし、どんどんのめり込んでいきました。

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プログラミングを始めたばかりのときは、頭の中で考えていたものをPC画面上に出せるだけで楽しいと思っていました。けれど、高校生になってからは、「頭の中で思いつかないものは表現できない」と気づいたんです。

人間なら言葉のニュアンスで伝えられるのに、なぜコンピューターには伝えられないのか?

そんな疑問を解決したくて、電気通信大学の情報工学科でニューラルネットワークの研究に取り組みました。この謎を人間の頭の構造から理解しようと思ったのです。その後、東京工業大学の大学院へ進み、画像や声を介し、人間の発話に応じるロボットの研究開発しました。

どんなロボットを作っていたのかを少し紹介させてください。

例えば、「色と形が異なる物体」を人間が指差しながら、「赤い、丸い、りんご」「赤い、四角い、イチゴ」などと発話すると、ロボットは画像データから得た「色」「形」の情報と音声を照らし合わせ、二つの物体に共通する「色」情報と、「赤い」という音声情報を認識し、「赤い=色」と紐付けます。

さらに色々な物体に対して発話を繰り返すと、「丸い」や「四角い」が形であり、「りんご」「イチゴ」が名前であると認識します。そして、「りんご、取る」と発話をしながら、物体を動かす操作を見せると、ロボットは未知単語「取る=操作」だろうと紐付けます。

こうしてデータが揃うと「イチゴ、取る」とロボットに発話で依頼すると、「イチゴ=名前」「取る=操作」だと知っているため、「赤い、四角い」物体を動かしてくれる、というわけです。

ロボットが指示通りに動くたび、ロボットの世界と現実世界の間でフィードバックを返し合うような感じがして、とてもおもしろかったですね。

「世の中のシステムを理解しないと、何も導入できない」

大学院卒業後は、大手システム開発企業へ入社しました。なぜなら、研究室で完成したロボットを実社会に実装しようとすると動かなくなってしまうケースに何度も遭遇したからです。

研究室はロボットが正常に動く環境が整えられていますが、一歩外の世界へ出るとそうはいきません。世の中で動いている複雑なシステムを理解しないと、どんなテクノロジーも導入できないと気づいたんです。

この企業で、良い経験になったのが、全国の空港などで動いている大規模システムの開発に関わったこと。「止めてはいけないシステム」が日々どうやって安定して動いているのかを知れたのは貴重でしたね。

そこから、大学院時代にお世話になった先生が立ち上げたAIベンチャーSOINNへ転職。ちょうど、システム×AIの領域に挑戦したいと思っていたタイミングでした。

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SOINNで得たのは、「ソフトウェアエンジニア的な観点」と「AIエンジニア的な観点」の二つ。

まずは「ソフトウェアエンジニア的な観点」について説明します。当時のSOINNには、独自の学習/推定エンジンはあるものの、そのエンジンをどうソフトウェアに組み込み、障害を起こさず、性能要件を満たしながら運用するか、というシステム開発は手探りの状態でした。

そうした状況下で、ちゃんとしたソフトウェアをつくっていかなくちゃいけない。ソフトウェアだけにとどまらず、インフラの構築/運用や開発ルール、開発者向け基盤の構築までやる「なんでも屋」状態で開発に挑みました。そんな環境を経て、僕自身が幅広くいろいろやることが好きなタイプであると気づけたのは、良い経験でした。

「AIエンジニア的な観点」では、「AIが現実の問題を解決するには、その問題を構造化し、適切な箇所に使用しなければならない」とわかったこと。どんなに優秀なAIモデルでも、課題の全体像を理解し、適切な箇所に使用しないと、「精度をいくら上げても現実の問題解決には繋がらない」ということになりかねません。

そのためには、自分で考えるだけでなく、社内外でのコミュニケーションを通じ、何が解くべき課題なのか、なぜその課題が起きているのか、課題を取り巻くシステムを把握しなければならない。今もクライアントとコミュニケーションを取る機会がありますが、この時の経験が活きています。


エクサウィザーズは「課題ファースト」。最新技術は「解決策の1つ」

エクサウィザーズへ入社したのは2017年。社会問題をどう分解し、解決していくかを知るために、自分のスキルを事業の全体像を把握し、本質的な課題を特定するコンサル寄りに拡張したいと考えていた頃です。

当時のエクサウィザーズは、まだインフラやセキュリティ、DevOpsメンバーがいない時期。そんな中、入社して最初の仕事は、 AIを活用したクラウド型の人事支援サービス「HR君」を、ゼロから“1ヶ月後にデモを見せる”スピード感で開発すること。様々なプロジェクトも掛け持ちしつつ、開発ルールや開発者向け基盤の整備、インフラの設計/構築、セキュリティ対策をどうするかなどを議論しながら、開発していきました。このスピード感は今も保たれていると思います。

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入社前から「いいな」と思っていたのは、エクサウィザーズで働く人は、AIを万能視していないところです。それは、3年経っても変わっていません。

「AI」はビッグワードなところがあり、「これさえあれば何でも解決する」と思われがちです。しかし、エクサウィザーズは課題ファーストの考えを大事にしています。「あくまでもAIは課題解決策の一つ」であり、複雑な課題に対して、最新技術をどう活用すれば解決できるかというスタンスを貫いています。これは全社で共通している視点でもあります。

メンバーは、担当領域はバラバラでも、「社会課題を解決する」ことを前提に仕事に取り組んでいます。社会課題は複雑だからこそ、課題の構造を抽象度高く、常に把握しながら、具体的な課題に分割し、解いていくスキルが求めらる。難易度は高いですが、その分ずっとチャレンジングな環境です。


良いシステムでつくる、心にゆとりのある社会

「世界を変えるのは、良い製品ではなく良いシステムである」。これは、僕が大切にしている考え方です。

「システム」という単語は、多義的なので、僕の考える「システム」を定義するとすれば、人と人、人とコンピューターが関わる構造や仕組み。

社会には、複雑なシステムが絡み合うように存在しています。世の中には「社会を良くする」ためのソフトウェアがたくさん存在します。一方、システムの一部分を良くするものだけでは、社会全体を大きく変えることはできません。本当に世の中を良くしたいなら、一箇所だけではなく、システムごと変えないと、社会課題は解決できない。

僕は、AIやロボットがもっと身近になる世界にできれば、さまざまな社会課題を解決できるんじゃないかと考えています。そこで、大事なのは、AIやロボットを応用したサービスを作って終わりではなく、そのサービスが「どうやったら世の中に染み込むものになるか」とシステムをつくる気持ちで考える視点なのです。

AIやロボットが人間のパートナーになるくらいまで世の中を進化させれば、アトムのようなロボットがいて、人間は働きたいときに働ける社会があるはず。そうすれば、人は心のゆとりがもっと生まれるはず。

心のゆとりを作っていくことは、これからの社会に大事だと思っているんです。そのために必要なシステムを、エクサウィザーズで作っていきたいですね。

エクサウィザーズ では一緒に働く人事を募集しています。興味のある方は是非ご応募ください!

文:福岡夏樹 編集/写真:稲生雅裕

(撮影の時のみマスクを外しています)

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