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大企業とスタートアップのプロダクトデザインプロセス [Designer x Designer]

AIを用いて社会課題を解決するエクサウィザーズのデザイナーに、ともに働くデザイナーがインタビューをする企画[Designer x Designer]。

今回は、大企業のデザイン組織からAIスタートアップのエクサウィザーズに加わった、UIデザイナーの吉田さんに、コミュニケーションデザインを担当する川上がインタビュー。吉田さんが体感した大企業とスタートアップのデザインプロセスの違いについてお話を伺いました。

ーー同期ですね(笑) 吉田さんのキャリアをお聞かせください。

前職はグループ会社を含めて10万人規模のIT企業で、約10年、主にIaaSやPasSなどのソフトウェアプロダクトの UI/UX デザインを担当していました。コンシューマー向けプロダクトではなくエンタープライズ向けの、情報システム部の人達が使うようなプロダクトが多かったですね。デザインリーダーとしてデザインディレクションするだけでなく、フロントエンドエンジニアとして実装することも多く、50以上のプロジェクトに参画しました。
現在はエクサウィザーズで各種 AI プロダクトデザインに携わりながら、全社デザインシステム開発も行っています。

ーーかなりの大企業ですね。何人ぐらいのデザイン組織だったんですか?

デザイン組織全体で150人くらいでした。大きく分けて、ハードウェア、ソフトウェア、空間、コーポレートデザインの4つの領域でのデザイナー職。そして、採用やどうすればうまくデザイン業務が進められるか、などをまとめる事業推進に分かれていました。細かく言えばもっとあるのですが、ざっくりだとそんな感じです。ほんとうに色んな人たちが集まっている組織でしたね。

ーー吉田さんはソフトウェアですよね?どういったプロダクトが多かったんですか?

はい、アプリケーションやシステム、広く言えばソフトウェアのUI/UXデザインをしていました。また、自社プロダクトのグループ、もうひとつはデリバリー、つまり、お客様のシステムのデザインするグループという切り口もありましたね。私は自社のソフトウェアプロダクトを担当していました。

一般的にIaaSやPaaSと言われるサービスがメインでした。サーバーやストレージなどインフラを提供するレイヤーのソフトウェアサービスです。AWSが提供するようなサービスをイメージしてもらうのがいいかもしれません。


大企業のデザインプロセスは型化された安心感がある。


ーー大企業のデザインプロセスの想像がつかないので、詳細を伺いたいのですが、まず、依頼はどのような形で入るのですか?

事業部からデザイン組織に、デザイン支援の相談が入ります。前職は多くの事業部があり、例えば電子カルテならヘルスケア事業部、通信技術関連のプロダクトならネットワーク事業部というように、ドメインごとに事業部があります。デザインのグループも事業部ごとに担当が決まっていて、例えばヘルスケア事業部はAグループが担当、ネットワーク事業部はBグループが担当といった形です。

「次のバージョンアップでこういう機能を作ろうと思う」、「新製品を作りたいから、デザイナーに入って欲しい」このような依頼に対して、デザインディレクターが担当デザイナーを決めて、見積もりをして、デザイン作業に入っていく。そういった流れでした。

ーーどういったフェイズでの依頼が多かったですか?やっぱりUIプロセスですか?

色々なパターンがありました。システムの開発プロセスは型化されていて、最初に企画プロセスで要件定義、それから設計開発プロセスに入っていくという流れですが、プロダクトの企画をしているからちょっと一緒に打ち合わせに入って、ワークショップなどでアドバイスがほしい。みたいな上流から入ることもありました。

私の場合は、ウォーターフォール型のシステム構築の標準開発プロセスがあって、それに沿ってUIデザインのパートから声がかかるパターンが多かったと思います。事業部が基本設計書を書いて、機能がある程度具体化された後の、UIプロセスからデザインが入るパターンです。

アジャイル開発が浸透してきてからはそのようなプロセスではなく、アジャイルチームに入ることもありました。ダブルダイヤモンドみたいなイメージです。私が担当することは多くありませんでしたが、お客様との商談支援から入ることもありましたね。

吉田さんが多く経験した、当時の開発プロセス


ーーUIプロセスからエンジニアと一緒に作っていく感じなんですか?

デザインと開発はプロセスとして分かれていません。でも組織としては分かれています。事業部が企画や要件定義、設計をやって、UIのデザイン開発を私たちがやって、実装をグループ会社がやる。別会社として外部に切り出しているイメージです。デザインと開発はスクラムのように一緒に動いているわけではなく、少し距離がある感じでしたね。

ーーQAはどうしていましたか?

QA(品質保証)は基本的にはその事業部が行うと認識していますが、ガイドラインなどを決める品質保証部も設置されていました。その中でユーザビリティチェックのプロセスが記載されていたりします。でもユーザーテストやヒューリスティック評価は徐々に減っていきましたね。

時代ごとで変化はあるんですが、パワーポイントでデザイン仕様書をつくって事業部に提出してそこでデザイナーが離れるパターンもありました。

ーー事業部にデザインを提案する流れはどうでしたか?

プロジェクトキックオフの事業部との打ち合わせに、デザインマネージャーと担当デザイナーが参加して、見積もりを出します。それからSE(システムエンジニア)が書いた要件定義書や基本設計書、パワポで描かれた画面遷移図やラフな線画などを元に、デザイナーがUXを考えた上で詳細なワイヤーフレームを起こしていきます。

それからビジュアルデザイン、このマージンは何ピクセルなどを記載したデザイン仕様書、画像などの実装素材を切り出し、納品。この流れの中で、適宜、事業部と打ち合わせをしていく。提案前は絶対にマネージャーやエキスパートなどにレビューをしてもらって「じゃあこれで事業部に提案しましょう」とやっていました。提案書などの中間制作物は結構多かったかもしれません。

担当デザイナーではなく、その上の人達が責任を持たないといけない。保証をしないといけない。なので、デザイナーレビューはしっかりしていました。知見のあるエキスパートからのレビューがあることは提案をする上で安心できました。

事業部への納品物は、提案書やデザイン仕様書が多かったです。デザイン仕様書をパワポで描くのは長い期間続いたやり方でしたが、2015年くらいからは、実装サンプル (静的モックみたいな) をつくって納品することも増えていきましたね。HTMLとかCSSで納品する。ちなみに私の場合は、実際の製品ソースコードのフロントエンドを実装することもありました。

さらに、UIライブラリなどのデザインシステムを作ることで、仕様書がどんどん薄くなっていきますし、CSSをパーツ化したりすることで、実装サンプルも不要になります。デザイン組織内だけでなく、エンジニアサイドへの共有効率がよくなります。

最新主流のクラウドに保存するタイプのデザインツールがセキュリティ上使えなかったのは不便でしたね。XDを使っていたのですが、ローカルで保存してファイルサーバーで共有したり。でもXDはソフトのインストールが必要なので、デザイナー以外に使ってもらうのは結構ハードルがありました。私が辞める頃はリモートワークが推進されたこともあり社内のDX改革が一気に進み、やりやすくなっていましたね。


組織と組織から、人と人へ。


ーースタートアップのエクサウィザーズと比べて違いを感じるところは?

まず大きく違うのは、スタートアップなので当然ですが、組織がコンパクト。直接「その人」とやり取りできる。「直接連絡し合いコミュニケーションがとれる」というのはとてもやりやすいと思いました。

大きい組織の場合、どこに聞けばいいか分からない、誰に聞けばいいか分からないということがよくありますよね。でも組織としての回答になるので、正式な情報がもらえます。それが、エクサウィザーズだと「人と人とのコミュニケーション」になる。チャットで直接担当者に連絡してすぐ返事が来る。スピードが全く違いますね。

ーー疑問解消のスピードですね。情報の解像度も違ったりするんですか?

「聞く相手」のことを知っているので安心できるし、「これはあの時のアレと一緒ですね。」というように情報の解像度が高い。だから具体化しやすく理解のスピードも速くなります。

ーーコンテキストが分かるから理解のスピードも速い。他には?

すべてのプロダクトにデザイナーがついている。事業部がデザインを発注する感覚ではなく、プロダクトを成長させるためにデザイナーがいる。この違いはとても大きいです。それだけエクサウィザーズはデザイナーの数が多いんですよね。

デザイナーとエンジニアの比率に関する記事によると、テクノロジー企業6社のデザイナー1人に対するエンジニアの数は10人を切っています。10年前のIBMは1:72、atlassianでも1:25なので、デザイナーの採用を急速に拡大したことがわかります。2022年現在のエクサウィザーズは1:6*くらいですので、デザイナーの比率がかなり高い。

これはエクサウィザーズを含め、先進的なテクノロジー企業がデザインの重要性を理解していて、それだけ資金を投じているからです。日本の大企業がこの割合に変革するのはとても難しいのではないかと思います。
* 正社員のデザイナー1人に対するMLエンジニアとソフトウェアエンジニアの割合

ーーデザイナーが多いとプロダクトへの関わり方も違いますか?

今担当しているプロダクトでは、毎日朝会をします。そして、そこには必ずデザイナーがいます。チームでものづくりに取り組んでいます。

UIの設計を描いたあと、開発がどうなったかがわからない、みたいなことは絶対ありません。ずっとそこにいる。次のエンハンス(機能追加)はどうしようという検討も、デザイナーも一緒に考える。そうすることで、プロダクトのデザインの品質もあがる。つまり、ユーザーのためになる。常にユーザーのことを考える人がずっとそこにいる。

プロダクトへの関わりはすごく濃いですね。自ら発信すればいいんですから。事業の数字目標に対してももちろん関与できます。だから、エクサウィザーズにはデザイナー出身のPdMが多い。大企業の場合、PdMはエンジニア出身の人が多いと思いますのでここが大きく違います。ユーザーが何を欲しているのかを常に考えているデザイナーがPdMになっている。

ーープロダクトやユーザーに対してのコミット度合いが大きく違いますね。実は同じような内容をUIデザイナーの佐久間さんもおっしゃっていました。


スタートアップの楽しさは整えられていないこと。


ーー現状の課題は、どういったことがあるのでしょうか?

強いデザイン組織になるために、まだ決まっていないことが沢山あります。マインド面やドキュメントなどのプロセスの共有がまだ整備しきれていません。また、職制上はデザイン組織に所属していますが、実務としてはプロダクトのチームに入っている感覚。デザイン組織内の横のつながりはどうしても薄れてしまいます。学び合う場や、資料などが共有の仕組みとして整うと、もっと強い組織になるのではないかと思います。

実は転職の際に、あえてそのような課題がある会社を選びました。自分が動いてデザイン組織を強くする余地があるほうが、やりがいも楽しみもありますから。

生まれて3年のデザイン組織ですから。こういった課題を、自分ごととして解決していきたいですね。


「ものづくりとしてのデザイン」をチームで突き詰める。


見た目のデザインから、人とデジタルとの接点のデザイン、そして、デザイン思考や組織、経営など、デザインの領域がどんどん広がっていく中で、前職も当然そういった方針にシフトしていきました。その流れの中で私自身が「ものづくりとしてのデザイン」をやる機会が減ってきた感覚を持つようになりました。

チームと一緒に作ったものをユーザーに届け、喜んでもらいたい。そんなものづくりがしたかったので、エクサウィザーズに来ました。デザイナーとエンジニア、BizDevが共創する。自分がエンジニア的な動き方をすることが増えていたこともあり、テクノロジーに強みがあって、エンジニアスペシャリストがいるエクサウィザーズで切磋琢磨しながら働きたいと思っています。


エクサウィザーズではプロダクトづくりが大好きなUIデザイナーを探しています。


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