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パイオニアに学ぶAIベンチャーのオモテ・ウラ——注目の“AI業界”で“今”はたらくということ #Career Talk Withイベントレポート

最先端業界の1つであるAI業界に今、身を置く理由とは何でしょうか。そして、そこで得られるキャリアや面白さとは。

今回は、Laboro.AI 代表取締役CEOの椎橋さんを迎え、エクサウィザーズ AIプラットフォーム事業部 執行役員の前川と共に、業界の先駆的企業同士だからこそ話せる、業界の面白さ・アツさ、業界や各社のオモテ・ウラについて語り合いました。本記事では、イベント当日の様子をレポートします。

●スピーカー
椎橋 徹夫 (しいはし てつお) / 株式会社Laboro.AI 代表取締役CEO

米国州立テキサス大学 理学部 物理学/数学二重専攻卒業。2008年、ボストンコンサルティンググループに入社。 東京オフィス、ワシントンDCオフィスにてデジタル・アナリティクス領域を専門に国内外の多数のプロジェクトに携わる。2014年、東京大学 工学系研究科 松尾豊研究室にて産学連携の取組み・データサイエンス領域の教育・企業連携の仕組みづくりに従事。 同時に東大発AIスタートアップの創業に参画。2016年、株式会社Laboro.AIを創業。代表取締役CEOに就任。
▶︎株式会社Laboro.AI

前川 智明(まえかわ ともあき) / 株式会社エクサウィザーズ 執行役員
東京工業大学電気電子工学科卒、同大学院物理電子システム創造専攻修了。大学院修了後はソニー株式会社を経て、ボストンコンサルティンググループに入社。プロジェクトリーダーとして、消費財・自動車・保険/金融業界を中心に、中期ビジョン策定/新規事業立案/デジタルトランスフォーメーション/全社営業改革など数多くのプロジェクトに従事。社会課題の解決により深く関わっていきたいとの想いから、2019年にエクサウィザーズに参画。
▶︎株式会社エクサウィザーズ

●モデレーター
湯川 鶴章 (ゆかわ つるあき) / 株式会社エクサウィザーズ AI新聞編集長
カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。

テクノロジーの社会実装を前に進めるために欠かせない、コンサル出身者

湯川:まずは僕から自己紹介を。エクサウィザーズが運営する、AI情報をお届けするウェブメディア「AI新聞」編集長の湯川です。今日はおふたりと一緒に、今のAI業界のリアルをお話ししたいと思っていますのでよろしくお願いします。

椎橋:Laboro.AIという40名強のAIベンチャーで代表を務めている椎橋です。弊社は「カスタムAI」のサービス名称でAI技術を使ったソフトウェアのオーダーメイド開発を行っており、それをビジネスに活用していくためのコンサルティングも併せて提供しています。

元々私自身がボストン・コンサルティング・グループ(以下、BCG)のコンサルタント出身で前川さんとは元同僚です。BCG退社後は教育・研究機関で産学連携業に携わり、あらゆる産業領域や社会全体を変えられる可能性を持ったAIとアカデミア、そしてビジネスをつないで世の中に変革をもたらしたいとの思いから2016年に起業しました。

イノベーションを起こすには、長期にわたってプロジェクトに取り組む必要があります。そのため、私たちの組織ではテクノロジーとビジネス両方のバックグラウンドを持つメンバーを中心に構成し、PoCだけで終わらず、クライアント企業と継続的なパートナー関係を構築することを大切にしています。また、AIは汎用的な技術ですので一つの業界や産業に特化せずに幅広く、比較的大手の企業さんと一緒に様々な取り組みを行っています。

前川:エクサウィザーズの前川です。マルチセクターの企業と協働しながらAIを使ったサービスやプロダクトの開発を推進するAIプラットフォーム事業部で事業部長を務めています。エクサウィザーズ入社前は椎橋さんと同じくBCGで経営コンサルタントをしていました。

エクサウィザーズもAIベンチャーなので当然エンジニアが多くいますが、私と同じような戦略コンサルファームや事業会社出身もほぼ同数在籍しています。Laboro.AIさん同様、テクノロジーの社会実装を前に進めるためには、テクノロジーとビジネスの現場をつなぐBizDevを担える人材が欠かせないということで採用も積極的に行っています。

Web3時代を勝ち抜くために、多くの企業がAIを活用するようになる

湯川: それではまずお二人のお話の前に、私からAI業界全体のお話をできたらと思います。今のAI業界で気になるポイントとして、少し前からバズワードになっている「Web3」を取り上げます。

FacebookなどのSNSが普及し、情報発信者と閲覧者の双方向のやりとりが可能になったことで、GAFAに代表されるデータを持つ一部の企業に富と権力が集中するようになりました。その特定の企業だけが成長する仕組みに反発するアンチテーゼが「Web3」なんです。

そして、Web3時代に需要が増し、大事になるのがAIです。
なぜなら、もし私たちがあまり出したくないと思っている財務や医療データをAIで解析し始めると、Web2.0時代のテック大手よりも大きなビジネス、価値が生まれる可能性があるからです。

ただし、積極的に個人データを共有するようになるには「セキュリティ」「インセンティブ」「社会貢献」この3つの要素が不可欠だと考えています。

「セキュリティ」は、新しく生まれた譲渡不可能トークン(Soul Bound Token)やゼロ知識証明などの技術を組み合わせれば、本人認証が様々な場面で共有できるようになると言われています。
「インセンティブ」はデータを収集して暗号通貨で報酬を支払うX2E(X to Earn)が活用できます。運動するだけで稼げてスポンサーもつくということが、アプリ「STEPN」で証明されました。
3つ目の「社会貢献」ですが、データ提供で社会課題が解決できる事例が増えれば、自ら提供したい人が増えてくると思います。たとえば、食事や運動などライフスタイルに関わるデータが収集できると、生活習慣が影響すると言われる癌の発癌パターンの解明につながります。

これら3つの要素が揃って「個人情報の提供」が可能になり、データをAIで解析することで経済が伸びるのは間違いありません。そのため、Web3の時代になればなるほどAIの重要性が増すと考えています。

今後、AIが単独で価値を出すことは難しい。「掛け合わせ」で価値創出を目指す

当日のオフライン会場のでの様子

湯川:このあたりは8月に発行した書籍『Web3時代のAI戦略』に詳しく書いていますが、おふたりは今のムーブメントをどう捉えていますか?

椎橋:今後、AIが単独で価値を出すことはあり得ないでしょうね。それこそWeb3のベースになっているブロックチェーンの技術や、新しいテクノロジーとAIの掛け合わせによって価値が創出されることになると思います。

前川:普段お付き合いをしているクライアント企業からもよく聞く、「自社で保有するデータの解析を始めたら、AI開発に十分なデータ量ではなかった」ということがWeb2.0の象徴的な悩みの一つだと思うのですが、そこからデータを溜めてAIを開発し、オペレーションを変えていこうとすると時間がかかります。たとえば、先ほどの話にあったX2Eのように自社だけでなく関わるステークホルダーが自発的にデータを提供し、それを溜められるような仕組みができると、企業変革のスピード感がガラッと変わる可能性がありますよね。

湯川:そうですね。2社ともマルチセクター(複数の産業)で様々な企業と協働しながら社会実装にこだわっている点が共通していますが、それぞれ今力を入れているところはどこですか?

椎橋:ディープテックと言われる、次世代の製品や研究開発の中にAIを組み込むプロジェクトに力を入れています。その一例として、半導体製造装置メーカーと長期的な協働体制を構築して、製造プロセスの効率化や最適化を進めています。半導体産業が継続的に発展するために企業も研究開発に投資し続けるなか、パートナーとしてサポートしていくことを目指しています。

前川:やはり1社だけで変革を進めるは難しいですよね。たとえば、私たちが注力している業界の一つである介護領域では、ジョイントベンチャーを組んだり、国や自治体を巻き込んだ大きな活動をすることが多いです。

多分Laboro.AIさんも同じだと思うのですが、DXでインパクトを残そうとすると当然1年2年で結果は出ません。5年10年のスパンでやっていく中で、うまく事業としてスケールするポイントを見つけながらやっていくところが大変なところでもあり、AIをマルチセクターで活用していく面白さだと感じています。

湯川:ちなみに、AI業界に入られたときと今はどう違いますか?

椎橋:Laboro.AIとエクサウィザーズがAI事業をスタートした2016年頃は、「とりあえず、AIでなにかしたい」という企業からの声が多かった。なので「AI」と言えば興味を持たれたし、採用イベントでも注目が高かったんです。それが、ガートナー社が発表した『ハイプ・サイクル』で言われている幻滅期に入り、AIの本質を理解した上で、ある意味本気で取り組みたいAI企業だけが残ったような気がします。

湯川:『ハイプ・サイクル』では、「幻滅期の方が、大物が生まれている」と述べられています。本物だけが残るフェーズに入ってきたということかもしれませんね。これからは、どういう領域が面白くなりそうですか?

椎橋:そうですね。アカデミアの領域では、人の経験則で導いていた法則みたいなものがAIを用いてデータドリブンでできるようになり、科学の方法論が変わると言われています。そうなると研究が一気に進み、さまざまな産業の生産性が上がってくると考えています。

湯川:科学技術が変わるインパクトはすごく大きいですね。
ところで、コンサルタント出身のおふたりはさまざまな領域のビジネスと会社を見てきたわけですが、「うちの会社の風土は他とちょっと違う」と感じることはありますか?

前川:私たちはよく「浪漫と算盤」と表現しているんですけど、事業成長とその結果としての売上/利益へのこだわりは強いかもしれません。私たちのミッションは社会課題解決なので、我々のサービスやプロダクトをより多くの人に使ってもらってハッピーになってもらいたい。多くの人に使ってもらうには、必然的に、会社って事業成長していかないといけないと思うんです。そのためには、社会課題×ビジネスを伸ばす接合点を強く意識する必要があるので、「この課題を解いていきたい」「この企業と一緒に何かやっていきたい」という思いが強いですね。

椎橋:私たちは「テクノロジーとビジネスをつなぐ」ことにこだわっているので、テクノロジーとビジネス両方の視点を持つ「ソリューションデザイナ」というポジションを設けています。たとえば、最先端の学術論文を読み、技術的なアプローチについてエンジニアと議論したりデータを自分で触ったり、場合によっては自分で少し解析するところまでやります。

湯川:それって、ビジネスサイドの経験しかなくて、テック系のキャリアがない人でも活躍できるものですか?

椎橋:理系的な接点があることは前提ですが、「機械学習には触れたことがないけど、すごく興味があるからチャレンジしていきたい」というパッションがある人はフィットすると思います。

前川:やはり、パッションが一番重要ですよね。

技術やビジネスが変わる潮目に立ち合いたい人は、ぜひ飛び込んで欲しい

湯川:ベンチャー企業は、「良し悪しは経営陣で決まる」みたいなイメージがあるのかなと思うのですが、それに関してはどうですか?

前川:エクサウィザーズの場合は会長の春田さんがDeNAをあれだけ大きくしてきた経験を還元してくれているのが大きい。ベンチャーって知名度がない中で戦わないといけないところがありますが、春田さんや社外取締役の方々の信頼性も高いので、まず「顧客と会えない」状況があまりないのは強いと思います。

そして、代表の石山さんが見ている世界もユニークなんです。既存の事象の掛け合わせで新しいアイデアを生み出し、クライアントを巻き込んでワクワクさせてくれます。ビジネスの手腕がある春田さんと石山さんのワクワク感の掛け合わせは、エクサウィザーズ の一番の強みですね。

エクサウィザーズの取締役

組み合わせで面白い世界観をつくる点は、椎橋さんも天才的ですよね。

椎橋:ありがとうございます。Laboro.AIはBCGで一緒だったCOO兼CTOの藤原というメンバーと共同代表制を敷いていますが、進化し続けるAIに単独で挑むのは難しい。仲間ともクライアントとも「チームで一緒に」取り組むことが、イノベーションを起こす上では大事だと考えています。

Loboro.AIの経営メンバー / 顧問

前川:クライアントと一緒に最先端のテクノロジーを掛け合わせて、技術やビジネスが変わる潮目に直面できるAI業界って、めちゃくちゃ面白いと思うんです。その変革を中で体験したい、直感的にここに来たら楽しそうだと感じた人は、まずは連絡してくれるとうれしいですね。

エクサウィザーズで活躍している人たちの多くは、「代表やメンバーと飲み会で腹を割って話して決めました」みたいに勢いで決めた人も多いです笑。でもその勢いって、実は「この人たちとなら大きいことができる」という直観が根底にはある気がしているので、その直感を信じて飛び込んできてくれる人は大歓迎です。

椎橋:そうですね。イノベーションのテーマに取り組むときって、ロジックだけじゃなくてメンバーのパッションが成否をわけることになると思うので、直感を持って動ける人は向いているかもしれませんね。

湯川:本日は興味深いお話、ありがとうございました!

エクサウィザーズでは一緒に働く人を募集しています。興味のある方は是非ご応募ください!


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