愛されるプロダクトを増やしたい。AI検索エンジン「AnyInc」の開発を支えるUXデザイナーの思い
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愛されるプロダクトを増やしたい。AI検索エンジン「AnyInc」の開発を支えるUXデザイナーの思い

「プロダクト開発に大事なのは、青臭い言葉で言えば、『愛』だと思うんです。愛が一番大切です」

10月26日にローンチした、企業検索特化型のAI検索エンジン「ExaWizards AnyInc(以下:AnyInc)(現名称:exaBase 企業検索)」。従来の企業データベースでの業種検索と違い、「IoT」、「太陽光発電」など、自由な検索ワードで探したい企業を的確に見つけ、リスト化できるのが特徴です。

このプロダクトの開発を率いるのが、スタンフォード大学のd.schoolでデザイン思考を学び、beBit、for Startupsを経て、エクサウィザーズに入社したUXデザイナーの西藤さんです。

「エクサウィザーズ」で活躍する“ウィザーズ”たちを紹介するストーリー。

幼い頃から「誰のために」を考え続けてきた彼が、AnyIncを作りあげた背景や、プロダクトの流通によって見据える「愛される」プロダクトで溢れる世界について伺いました。

◾️プロフィール

西藤健司(にしとう・けんじ)

2010年、東京工業大学を卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科に進学し、UXやユーザビリティを研究。大学院時代に、スタンフォード大学のd.schoolでデザイン思考のプログラムに参加。2013年、新卒でbeBitに入社。新規サービス企画、具体化を含むCX/UXコンサルティング業に従事。2018年、for Startups,Inc に転職。人という側面からスタートアップの経営課題の解決支援や、大企業とのオープンイノベーション促進などに携わる。2019年6月、エクサウィザーズに入社。

「誰のためにつくるのか」を幼い頃から考えていた

UXデザイナーの西藤さんは、幼い頃から工作を含むものづくりが好きだった。ただ手を動かすだけでなく、早いうちから「何のために」「誰のために」といった目的について考えていたという。

「目的は何か」を常に考える彼を象徴する幼少時代のエピソードがある。ある日母親が、彼の部屋が片付いていないことに苦言を呈し、「健司に『片付けをやる気になるスイッチ』がついてたら、それを押すのに」と嘆息した。その発想をおもしろがった彼は、少し考えて「いや、お母さんが『注意した気になるスイッチ』があれば解決するんじゃない?」と返したというのだ。

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「母はどうしたら満足か、を考えたんです。それって、実は僕が片付けることじゃなくて、注意することそのものなんじゃないかと。だから母親が『注意した気になるスイッチ』を押して満足すれば、僕もやりたくない片付けをしなくて良いし、みんな幸せだなって」

大学は東京工業大学に進学。人間工学などを専門とする梅室博行氏が率いる梅室研究室に入り、UXやユーザビリティの研究を始めた。学部では聴覚障害者に対する環境デザインの検証などをおこない、大学院の1年目に留学。スタンフォード大学のd.schoolでデザイン思考を学んだ。

アメリカやフランスで産学連携のプロジェクトを進めた西藤は「顧客志向のデザインは、今後ビジネス的にも重要性を増していく」と感じたそうだ。この留学が、UXを仕事にするという将来像につながっていく。

日本に戻ってからは、修士論文としてUXをデザイン・評価するためのフレームワークについて研究し、UXを体系化する意欲的なテーマにチャレンジした。当時から大切にしているのは、人間中心で考えるということ。

「プロダクトを開発していると、差別化や技術力といった要素が強くなって『誰のためか』を見失ってしまうことがある。そうならないように、人という軸を通し続けるのが僕の役目だと思っています」

UXデザイナーの役割が、今のエクサウィザーズにピッタリはまった

修士課程を終え、就職先に選んだのは、UXデザインのコンサルティングやグロースハックを支援するbeBit。そこでクライアントのプロダクトの立ち上げや改善を、UXの視点から支援する仕事に従事する。この経験から、コンサルタントとしてUX改善に取り組むだけでなく、事業を成長させるための多角的な視点を身につけ、事業開発を手掛けることで、この先より成長できるのではないかと考えた。

そこで、スタートアップ対して採用支援や起業支援をおこなうfor Startupsへ転職。人を中心とした経営課題の解決を主に担当した。ここでは、VCやCVCとの関わりからマーケットについて学び、起業家からは経営戦略や生々しい事業課題をインプットしながら支援を続けてきた。

エクサウィザーズに転職したきっかけは、beBit時代の上司の紹介だった。入社後は、UXデザイナーとして、AIを使った人事業務の効率化・高度化サービス「HR君」シリーズのプロジェクトに参加。その後、FinTech関連の口座見守りサービスや地方銀行のDX、その他UXにまつわるコンサルティングなど多岐にわたる案件を担当していった。

彼は「自分はエクサにとって丁度良いピースだったのではないか」と語る。

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「当時のエクサウィザーズは、コンサル出身のビジネスサイドの人とエンジニアの2タイプの人が主だったんです。ビジネスサイドの人は、社会課題や経営課題を捉えることが得意で、エンジニアはテクノロジーを用いてゼロから良いものを作っていくことが得意。その間に立って、サービスを具体化していくのがUXデザイナーの役割。それがピッタリはまったなと」

入社して印象的だったのは、「誰のためのプロダクトか」という原点に立ち返る話が、誰に話してもすんなりと受け入れられたことだ。エクサウィザーズは「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をビジョンとして掲げている。それが人間を中心に考える彼のポリシーとうまく噛み合ったのだろう。

特徴で企業を探す。まったく新しい考え方の検索エンジン

2019年の春、AnyIncの開発が始まった。6月からは実証実験がスタート。彼は10月からプロダクトマネージャーとして参加した。

このプロダクトの発端には、証券会社のとある悩みがあった。M&A案件を進める際に、対象企業の買い手候補先、もしくは買収対象の候補先のリストを作成するのに時間がかかる、というものだ。

「リスト作成は企業のデータベースなどを使えばすぐできるのでは?」と思うかもしれない。しかし、「○○という技術を持っている会社」「○○関連の事業を手がける会社」など、細かい粒度で企業を調べたい場合、企業のデータベースの業種分類や商品分類に当てはまらないことがある。

大手企業であればすぐに見つかるが、中小企業やスタートアップは見つかりにくい。そうなると、キーワードを検索エンジンに打ち込んで、検索結果に上がってきた企業を1社ずつ見ていくことになる。これは大変な手間がかかる。

事業カテゴリや売上規模だけでなく、さまざまな切り口で企業を調べたい。なおかつ、その企業のなかで代表的な企業やまだ見ぬ企業などをリスト化したい。こうしたニーズから生まれたのが、AnyIncだ。

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AnyIncでは現在、日本で法人登録されたウェブに情報を公開している約200万社の情報を扱っている。
 
これまでの企業検索システムとの違いは、AI技術を使い、企業の特徴を元に検索できることだ。検索ワードを入力すると、AIがそのワードと企業の特徴の「近さ」を推定し、結果を出力する。

「イメージとしては『りんご』と入れると、『赤くて丸い果物』の情報を出してくれるようなものです。そのため、位置的に近い会社、つまり似たような特徴を持つ類似企業を検索することができます。先程の例でいうと、赤くて丸い、りんご以外の果物も結果に出てくるということですね」

世界中の「埋もれた優良企業」に光を当てる

「AnyIncは『M&A対象企業の検索』という個別の悩みから生まれましたが、『企業が抱える検索領域の他の課題、例えば、営業リストの作成や競合リサーチなどにも展開できるようにしたい、と考えています。そのために、『切れ味の良いハサミ』のように様々な場面で使われる『ツール』としての価値をもっと磨き込んでいきたいです」

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様々なシーンでの顧客の状況を捉えた上で、ツールとしての精度を磨いていけば、その価値に付随して用途が広がっていく。新しい技術を使ったプロダクトだからこそ、未知の可能性が広がっているのだ。

AnyIncで企業を探すユーザーが増えると、AnyInc上で見つけられたいと考える企業も増えていくだろう。その結果FacebookなどのSNSくらいAnyInc上で気軽に情報発信を行えるようになれば、ホームページを持っていない企業もAnyIncで検索できるようになる。そうすると、ますます探せる企業が増えていき、ユーザーにとっても便利になっていく。

さらに、特徴をつかんで検索ワードとマッチさせるモデルは、英語での検索も可能だ。

「海外の人が日本の小さな会社を見つけたり、日本の人が海外の会社を探したりもできるようになる。そうすれば、世界的に埋もれている会社に光を当てることができるかもしれません」

企業情報の発信に力を入れなくても、本業でユニークな事業を展開していれば、自ずと見つけられやすくなるのがAnyIncの目指す世界観。優良企業が正しく評価される社会をつくっていける可能性がある

彼は、このAnyIncが、企業検索手段の常識を変える可能性があると考えている。

「今はなにか調べるときに、とりあえず検索エンジンで調べますよね。本当にそれしか方法がないのか、という課題提起になるプロダクトだと思っているんです」

愛にあふれたプロダクトが増えれば、社会が変わる

AnyIncの持つ可能性は、検索の拡張だけではない。企業の成長を促す一助になるかもしれない、と彼は話す。「まだ自分の中でもまとまっていない話ですが」と前置きした上で、「従来の業種分類によって、企業の成長や変化が阻害されてきたのではないか」という仮説を展開した。

「例えば、あるスタートアップが”介護”というカテゴリに分類されると、時価総額の算出なども他の介護領域スタートアップと同様に推定される可能性があります。また、企業の外にいる人も介護のカテゴリで認知するようになってしまう。でも、そのスタートアップが本来やりたいことは、介護の範囲におさまらないかもしれませんよね。このようにカテゴリ分けやラベリングによって、成長のキャップが作られるケースがあると思うんです

従来のカテゴリに準じた分類はたしかに便利だ。外部の人間にとっては、何の会社であるかが認識しやすい。しかし、今後は新しい技術やマーケットの進展に伴い、従来のカテゴリに当てはまらない企業が増えていくと考えられる。AnyIncでは、そうした企業の成長にも貢献する可能性があると彼はいう。

IT技術の進展は、世の中の透明性を高めています。情報の発信、開示が進み、嘘やごまかしが通用しなくなってきています。今後はさらに、本当に良いものだけが残っていくと思うんです。そうすると、顧客のことをよく考えているプロダクトしか発展しないし、開発チームもプロダクトのことを好きでないといけない

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(AnyInc開発チームのメンバー)

顧客志向の愛にあふれたプロダクトを世の中に出していくことで、社会が変わると彼は信じている。

顧客からも開発チームからも愛されるプロダクトのほうが成功するという認識が広まったら、社会はもっと良くなっていくと思うんです。AnyIncも、技術力はもちろんすごいけれど、ユーザー中心にデザインされていると言われ続けたいですね」

個人的なビジョンについて尋ねると、「青臭い言葉で言えば、『愛』だと思うんです。愛が一番大切です」とまっすぐ答えた。今後はどんな愛にあふれた良質なプロダクトを創り出していくのか。AIとUXをかけあわせた新しいフィールドでの挑戦は、始まったばかりだ。

文:崎谷 実穂 編集/写真:稲生 雅裕

(撮影の時のみマスクを外しています)

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