【イベントレポート】業界TOP企業が「AI×営業」を語る。〜AI活用で作業時間85%削減!売上4.4倍を実現させた事例も限定公開〜
2024年10月17日、株式会社エクサウィザーズと株式会社SHIFT AIの共催イベントを開催。国内最大級のAIのビジネス活用を学べるAI大学「SHIFT AI」を運営する木内代表取締役と、「年間数百件のAI導入実績」を持つエクサウィザーズの大植常務取締役が登壇しました。
本イベントでは、「AI×営業」をテーマに、営業現場での効果的な活用法や安全かつ効率的な利用のポイント、さらに営業職のキャリア形成における「生成AI」の戦略的活用について、具体的な事例をお話頂きました。
登壇者紹介 「AIビジネスに挑むリーダーたち」
小澤(以下、おざけん):本日は「AI×営業」をテーマに、営業の仕事のあり方が生成AIでどのように変わっているのかについて、エクサウィザーズの大植さんとSHIFT AIの木内さんと一緒にお話ししていきたいと思います。まずは、自己紹介をお願いいたします。
大植:エクサウィザーズで常務取締役を務めています、大植です。私は学生時代に「データサイエンス」と「AI」の研究に従事しました。2018年にエクサウィザーズに入社し、6年になります。当社は「社会課題をAIで解決する」というビジョンを掲げ、現在従業員は連結で600名ほどです。 「Exa Enterprise AI」という生成AIサービスを提供する会社を分社化し、その代表も務めています。
木内:SHIFT AIの代表を務めています、木内です。小学生の頃からプログラミングを始め、学生時代にはフリーランスエンジニアとして「ウェブプログラミング」や「AIプログラミング」に携わってきました。2023年7月にSHIFT AIを立ち上げ、わずか1年強で「会員数7,500名」「法人支援実績2,000社」という成長を遂げています。
おざけん:私は「おざけん」の愛称で知られ、SHIFT AIの立ち上げ期からイベントモデレーターを担当しています。AIメディアの運営と月15〜20回のイベント出演を行い、「生成AI導入の教科書」という書籍を出版しました。よろしくお願いいたします。
セッションテーマ①「使わないとまずい、生成AI」
生成AIの導入実践と業務変革
おざけん:それでは、営業のテーマに入る前に、「使わないとまずい、生成AI」というテーマについてお伺いしたいと思います。お二人は生成AIの現状と勢いをどのように捉えていますか?
大植:勢いは確実に増すばかりだと思います。エクサウィザーズで実施している「生成AIの利用実態」に関する大規模アンケートによると、「業務での生成AI活用率」は1年半前の「30%」から現在は「80%」まで急増しています。このような新技術の急速な業務浸透は、かつて例を見ないものであり、今後もさらに拡大が予想されます。
木内:日本では先進企業など大手企業ほど導入が進んでいる一方、「個人利用率は9%」と低水準に止まっています。アメリカではすでに「業務の15〜20%」をAIに委託している企業もありますし、今後の拡大が見込まれます。企業の存続に向けてAI導入により、「個人のAIスキル」の重要性も進んでいきます。
おざけん:最近は「キャンバス機能」の追加など、チャットUIからの脱出も起こっているイメージがありますね。
大植:はい。当初は「チャットUI」でのプロンプト入力が主流でしたが、最近は「RAG(Retrieval Augmented Generation)」と呼ばれる、自社のデータやドキュメントをベースにした生成などのサービス、インターフェースの使いやすさも合わせて進化しています。
木内:日本では「一流企業」をはじめ大手企業での導入が進んでいる一方、「個人の利用率は9%」と低い状況が続いています。私のセミナーでは「AIを使わないと仕事がなくなる時代が目の前で起こっている」とお伝えしています。
アメリカでは「数十万人規模のAI失業」が発生しており、私が顧問を務めているGMOでも「業務の15%をAI化」しています。さらに、サイバーエージェントの例では「2年後に半分以上の業務のAI化」を目指しています。個人がAIを使うか使わないかは自由ですが、今後、会社は株価を上げるためにも確実にAI活用を促進していくので、将来的な皆さんの仕事の影響に影響することは避けられないでしょう。
おざけん:現在、生成AIを使っているにもかかわらず、「概要」や「アイデア出し」だけの限定活用にとどまっている人も多いと思いますが、その点についてはいかがですか?
大植:おっしゃる通りです。現在「活用率80%」と申し上げましたが、その内訳で「効果的に活用できている人」は限定的です。当社では「生成AIチャンピオン」と呼ばれる熟練ユーザーが、使い方やプロンプトのテンプレートを他の従業員に展開する取り組みを行っています。このような浸透方法を検討している企業も多いと思います。
次なるステージへの展望
おざけん:生成AIの今後1年間の展開について、お二人のお考えをお聞かせください。
木内:日本は「約1年遅れ」で企業導入が進んでいる印象です。2年後には半分以上の企業がAI導入を始めるのではないでしょうか。特に個人のスキルでいうと、 「2〜3割の人が業務全体でAI活用」を始める程度だと予測しています。一方、アメリカでは「エージェント型AI」の導入が進んでいます。 現在「AIのIQは120」と言われ、「人類トップ10%の知能レベル」ですが、次の「GPT-5」と言われるモデルが出れば、「トップ1%」のレベルになります。
現在でも「ChatGPT o1」は高度な課題解決ができるようになりましたが、この後「エージェント」と呼ばれる新しい段階に入ります。タスクをお願いしたら自律的にPDCAを回してくれて、ステークホルダーとコミュニケーションを取りながら、自動的にタスクを完了してくれる機能です。これは「AGI(汎用人工知能)」にかなり注目して考えており、来年にはアメリカでその段階に到達するのではないかと予測していますしています。
おざけん:「o1 preview」が登場してから推論機能が向上し、代替可能なタスクの量も増えて、活用が進んでいくのではないかと思います。その辺りについては、いかがでしょうか?
大植:主なトレンドとして3つあります。1つ目は、「アシスタントからエージェントへの進化」です。現在の人の補助から業務の代替に変わっていくでしょう。2つ目は、単なる「物知りなAI」から「考えるAI」への進化です。従来のAIは、大量データからの抽出が中心でしたが、最近の「o1」は推論や複雑な論理的思考が可能になりました。
3つ目は、「マルチモーダル化」です。パソコンだけではなく、「スマートグラス」「スマートフォン」「ロボット」などとの接続により、パソコンの枠を超えた現実社会への展開が進むと考えられています。これらの分野でもアメリカが先行し、少し遅れて日本での導入が始まるというパターンが続くと予想しています。
おざけん:先日「テスラのオプティマス」や「Apple Intelligence」が発表されるなど、今後のハードウェアへの導入が進むと、「iPhoneユーザー」「Macユーザー」「GooglePixelユーザー」の生成AI活用が普及、個人の活用も広がってそうですね。AIを生成できそうな人は普段いない人との差は開いていきそうです。
木内:実際に、GMOインターネットグループ株式会社の社員アンケートでは、1日8時間の業務をAIで処理している社員が3%とあります。今後は、「AIを使える企業と使えない企業」「AIを使える人材と使えない人材」の差が、さらに進んでいく可能性があります。
セッションテーマ②「営業としての活用方法」
営業現場における生成AI活用の例
おざけん:次に「営業としての活用法」についてお話できればと思います。活用方法や重要性などについてお聞かせいただけますか。
木内:「営業資料」や「サンクスメール」の作成など、様々な業務で活用できます。The Inteligent Salesの株式会社セレブリックス様の例では、通常「約半日」かかる商談準備が、生成AIの活用により「1社あたり20分」で完了できるようになったそうです。生成AIを使いこなせる営業人材では、「7倍」もの時間短縮を実現しています。
また、最近は「ChatGPTのアドバンスボイスモード」など、会話機能が飛躍的に向上しています。「プレゼンテーション」や「コミュニケーション」の多くをAIが担えるようになってきているため、営業マンの優位性は「社内情報」や「顧客情報」の把握にシフトしていくでしょう。
エクサウィザーズの営業DX。具体的な活用事例
おざけん:「アドバンスボイスモードのリアルタイムAPI」は「時給5,000円程度」で利用可能です。来年頃には、「テレアポイントメント」などの業務を完全にAIが担当する会社が出てくる可能性もありますね。大植さんはいかがですか。
大植:弊社では、徹底的に「生成AIを活用した営業」への取り組みを社内で推進しています。また、「exaBase 生成AI」という法人向けの生成AIサービスを提供しており、現在650社、6万以上のユーザーに導入いただいています。さらに、「exaBase 生成AI for セールス」という営業活用に特化したプロダクトラインナップも展開しています。具体的な機能として、「メール返信」「営業力強化」「商談準備」「提案資料作成」「トークスクリプト作成」「ネクストアクション提案」などがあります。実際の活用例として、社内の営業担当者の柴森からご紹介させていただきます。
柴森(エクサウィザーズ営業担当):営業部門での生成AI活用方法をいくつかご紹介させていただきます。
「exaBase 生成AI」というSaaSプロダクトでは、お客様からの製品に関するお問い合わせ内容を入力すると、適切な返信文を自動生成します。事前に組み込まれたプロンプトにより、「セキュリティ」「料金」「機能面」の情報を含めた回答文を自動で作成できます。
また「商談準備」でも活用しており、「3C分析」「SWOT分析」「FAB分析」などを数秒で作成できます。さらに、議事録の要約機能では、「BANT-CH情報」と呼ばれる「予算」「決裁フロー」「顧客ニーズ」「導入時期」「競合情報」「人的資源」などを自動で抽出することができます。
おざけん:ありがとうございます。営業には「思考系のタスク」が多い一方で、「SWOT分析」などは十分に実施できていないことも多いと思います。それらを生成AIで担保できるのは大きな利点ですね。
大植:その通りですね。「調査・準備」を生成AIに任せることで、創出された時間を「お客様とのコミュニケーション」に充てるなど、営業の生産性は確実に向上しています。
具体例として、株式会社フジテックスという専門商社の事例があります。「5,000点以上の商品」を扱っており、従来は営業マンが一人前になるまでに「10年程度」必要でした。しかし、「RAG(Retrieval Augmented Generation)」という技術を用いて、「過去の営業カタログ」や「成功事例」をAIに学習させることで、効率的な商品提案が可能になっています。
おざけん:エクサウィザーズへの転職は、市場価値の大幅な向上につながりそうですね。貴重な情報をありがとうございます。
セッションテーマ③「スピーカー自身の利用方法」
AIツールの実践的な活用シーン
おざけん:次に、お二人ご自身のAI活用方法についてお聞かせください。
木内: iPhone16から、アクションボタン一つでChatGPTのボイスモードを起動できるように、運転中にアイデアの壁打ちなどに活用しています。 最近は、精度の高い回答が得られるため、気軽に会話するように使用しています。
大植: 私は、先ほど話した営業系の用途や講師として登壇する際のアジェンダを書く時に活用しています。また、社内で投資家とのコミュニケーションにおいても活用しています。exaBase IRアシスタントというプロダクトがあり、上場企業は投資家向けのQ&Aなどを作っていますが、RAG(Retrieval Augmented Generation)を活用してさまざまなドキュメントと連携し投資家向けのQ&Aを自動で作っています。
質疑応答
【質問1】AI人材に必要なスキルとは?
「AI人材として求められる要素は何でしょうか。プロンプトのテンプレートがすでに溢れている中で、誰でもAIを扱えるようになるのではないでしょうか。」
木内: 「AIスキルは確かに重要ですが、それだけを追求しても限界があります。AIスキルの本質は、マネジメントスキルに近いものと考えています。プロフェッショナルなAIに対して適切な指示を出し 、自分の意図する方向に出せる能力が重要です。トップのAI人材に共通するのは、業務を具体的に要件定義し、それを適切にAIに伝えられる能力です。そのため、単なるAIスキルだけでなく、マネジメントスキルを伸ばすことも重要だと考えています。
【質問2】企業の独自性と競争優位性
「エクサウィザーズのソリューションを使用している企業同士で、独自性が失われてしまう懸念はないのでしょうか?」
大植: 逆の発想をしています。私は、多くの営業組織のマネジメント経験がありますが、ベース部分は標準化したほうが良いと考えています。例えば、現在オンラインミーティングが増えていますが、対面営業にはかなり高い付加価値があります。人間同士のコミュニケーションや顧客との対話時間を増やすことこそが差別化になります。標準化できる部分は標準化され、その分を顧客との関係構築に充てています。実際、このレベルまで効率化できる企業は少ないため、むしろ競争優位につながると考えています。
【質問3】AIによる効率化の具体的な成果
「業務効率化について、具体的にどの業務が、どの程度効率化されたのでしょうか?」
大植: 営業のバリューチェーンで考えると、顧客との商談時間自体は変わりませんが、商談前の準備時間と後工程のフォローアップの効率化が図れています。 特に、事前準備やアフターフォローのコミュニケーションの効率化が進んでいます。
さらに重要なのは、効率化だけではなく、成約率や受注率の向上です。例えば、新人営業マンの育成期間の短縮など、経営的なインパクトの大きい部分での効果が出ています。
【質問4】エクサウィザーズにおける効率化の実績
「エクサウィザーズ社内での、具体的な効果はどの程度でしょうか?」
大植: 例えばインサイドセールスに関して、業界平均22%の約2倍となる45%の商談獲得率を達成しています。ちなみに、当社は当社からAIの活用を推進してきたため、導入前との正確な比較データは持ち合わせていません。推計値での評価にはありますが、効果は確信できます。
【質問5】AI時代における雇用の変化
「AIによる業務効率化に伴い、人員削減が進むと考えられますが、代わりに新たに増える仕事にはどのようなものがありますか?」
大植: アメリカでは大規模な人員整理が行われていますが、日本は雇用の流動性が低いため、リスキリングによる配置転換が中心となっています。新たな雇用としては、AI人材だと考えています。具体的には、業務要件とAIをマッチングする人材や、AIの現場でのユースケースを作って展開していく人材です。AIは「作る人」と「使う人」に分かれていきます。 特に作る側により、高い付加価値が生まれると考えています。
木内: 記事作成の業務を例に挙げると、無料のプロンプトを使った場合は別途1,000円レベルの記事品質しか考慮できない場合が多いです。一方、ライティングのプロフェッショナルでありプロンプトにも精通している人材が作成したプロンプトであれば、わずか3,000円レベルの成果物を生み出すことができます。ただし、専門知識とAIスキルの掛け算が重要になってきます。 こうした仕組みを作る人材は今後も重要な存在であり続けますが、作られたプロンプトを単に使用するだけの作業者の需要は徐々に減少していく傾向にあります。
【質問6】エクサウィザーズが考える、次世代のAI人材像
「エクサウィザーズとして、どのようなAI人材が求められ続けているか考えていますか。」
大植: 「二刀流人材」という言葉を社内でよく使っていますが、業務課題の理解と技術の両方を備えた人材が必要です。技術面では、AIの進化や最新サービスの進歩を追い続ける一方で、それらを業務に活用できる可能性を見出せる人材が求められています。
おざけん: 私は、それらの要素を継続的にマッチングできる「コーディネーター」としての役割も重要になって来ると考えています。
【質問7】情報取得手法の現状と今後の展望
「エクサウィザーズのツールでは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を使用していますか?それともオンライン上の最新情報を取得しているのでしょうか?」
大植:両方の機能を備えています。現在、企業側からRAGへのニーズが集まっているため、精度向上や改善を継続的に進めています。一方でブラウジング(最新情報の取得)機能も社内向けには提供し始めていますが、著作権の問題など整理すべき課題があるため、お客様向けのリリースは議論を重ねながら準備を進めているところです。基本的に両方の機能があり、それぞれにニーズがあると考えています。
おざけん:お二人とも、改めて本日はありがとうございました。以上をもちまして、本日のイベントは終了とさせて頂きます。
エクサウィザーズの採用情報
エクサウィザーズでは営業、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど、顧客フロントに立つポジションを多く募集しています。
求める人材像
好奇心があり、業務でのAI活用に意欲的な方です。比較的入社しやすい職種としては、インサイドセールスがあります。特にカスタマーサクセスは、業務の最前線で生成AIの活用支援を行うため、二刀流人材になれる可能性が高い職種として注目しています。
また、社内での働き方を知っていただくため、生成AI部門のグループ会社では、メンバー30人が1人1記事を執筆し具体的な業務内容や社内文化を発信しています。